連載院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継

#02 診療所の事業承継を上手に進める逆転の発想

<本連載について>
本連載を読まれている先生方も1度は「事業承継」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本連載では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

この記事について

先生方も「近所のA先生が診療所を若いドクターに引き継ぎ、体調と相談しながら週2日だけ診療を続けている」なんて話を聞かれたことがあるのではないでしょうか。

月曜日から土曜日まで週6日の診療を30年以上続けてきたスーパードクターの皆様も心の奥底では、『身体のことを考えると少し診療のペースを落としたい』、『経営者としての肩の荷を下ろしたい』と思った日もあるかと思います。

診療所を引き継ぐことができるのは、ご子息やご親族に医師がいる医師家系の方だけではありません。本稿では、事業承継を上手に進めるための手順、診療所を第三者に承継した場合のメリットをお伝えいたします。

『診療所が持つ事業価値』と『地域における市場的な価値』を知ることが事業承継の第一歩

市場価値と企業価値

事業承継とは、会社の経営権や理念、資産、負債など、事業に関するすべてのものを次の経営者に引き継ぐことを指しますが、その方法には大きく3つの選択肢があり診療所においても同様です。まずは3つの選択肢について良いところや懸念点を確認しましょう。

①親族承継

ご子息やご親族の医師に診療所を引き継ぐ方法が親族承継です。内外の関係者から心情的に受け入れやすい反面、診療科や専門違い、家族の反対、勤務医志望者が増えており10人に1人程度の割合でしか親族承継は成立していないという厳しさは認識しておく必要があります。

②院内承継

長年一緒に診療をしてきたNo.2や非常勤で来てくれている医師に承継を行うことを指します。顔をよく知る医師に診療所を引継ぐことは院内での理解を得られやすいというメリットがありますが、親族以外に引き継ぐということは、現理事長が保有する出資持分の譲受など金銭的な負担も発生するほか、借入金の連帯保証人にもなりうるため一筋縄ではいかないのが現状です。

③第三者承継(М&A)

子供・親族・院内で勤務する医師以外の方に診療所を引き継ぐ方法が第三者承継(М&A)です。MはMergers(合併)、AはAcquisition(買収)の略です。М&Aと聞くと派手な買収劇がTVドラマで流行っているため「身売り・乗っ取り」という悪いイメージがありますが実際はそうではありません。日本で行われているМ&Aの99%は、譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)が対等な立場で条件交渉を行い、双方が納得のいくまで突き詰めた条件にて承継が成立する友好的なものです。

※清算・廃院

清算・廃院を選択した際、患者・職員・建物・借入金などに関わる問題はついて回ります。長年診療し続けた患者を受け入れてくれる病院・診療所を数ヶ月前から探し始め、廃院により職員は仕事を失うため、再就職先まで面倒を見る例もありました。また、建物の原状回復に必要な数百万円に及ぶ費用、医療材料や医薬品の廃棄、医療機器や備品等をリースしていれば残債を清算しなければなりません。借入金も完済していれば良いですが、債務が残る場合は支払原資の確保も検討が必要になります。

大きく3つの選択肢を並べましたが一番気になるのは、診療所を事業承継するか清算・廃院するかの判断基準だと思います。細かな論点はありますが、私たちは『診療所が持つ事業価値』と『地域における市場的な価値』に着目することをお勧めしています。

具体的に『診療所が持つ事業価値』とは、診療所をお金に換算すると何円の価値があるのかを把握することです。貸借対照表や損益計算書を基に退職金の引当や生命保険の解約返戻金の含み益、土地の時価評価など、細かな数字の調整を行い最終的な金額を弾きます。

また、『地域における市場的な価値』とは、診療圏の人口動態や競合の有無などから割り出される当該診療所の必要性です。診療圏分析を施すことによって当該診療所が持つ強みや特徴、更には今後の発展性を調べます。

『診療所が持つ事業価値』と『地域における市場的な価値』の2つ情報をまず知ることが事業承継をうまくすすめる第一歩です。これらの調査方法や情報はGoogleで調べても正確なものがないため、専門の会社に調査を依頼するのが労力も少なく確実です。両方を調査できる会社は限定されますが、お薦めは第三者承継(М&A)の仲介をしている会社です。

なぜなら、第三者承継(М&A)の準備をする際には必ずこの2つの情報が調査されるため、調査方法から評価方法までノウハウが貯まっており、他の診療所における事例なども活用できるためです。この調査を最初に行うことで結果的に事業承継が上手く進み始めます。

親族承継・院内承継を実現したい院長こそを最初に第三者承継(М&A)を検討する!

M&A、事業承継、廃院などの検討

一昔前、親の病院・診療所は子供が継ぐというのが当たり前、いない場合は娘婿などの親族が変わりを担うのが当然とされてきました。しかしながら、子供や娘婿が医師としての経験を十分に積み、更には経営者としての手腕があるかどうかまで判断を待っていると事業承継のタイミングを逸してしまうことが増えてきているのが現状です。

いざ承継の話を持ち掛けた時には、子供や娘婿から「臨床医として病院で腕を磨きたい」「結婚相手と都心部で暮らしたい」「全国・海外を回り様々な医療を経験したい」など、想定しえない回答が返ってくる事例も実際にありました。ここから第三者承継(М&A)を考えたのでは時すでに遅しという状況でお相手探しも難航を辿るのは目に見えています。

そこでお薦めしているのは、親族承継や院内承継の話を後継者候補に持ち掛ける前に第三者承継(М&A)を最初に検討するという逆転の発想です。この発想の最大のメリットは、先ほどご紹介した『診療所が持つ事業価値』と『地域における市場的な価値』を調査した報告書を親族あるいは院内承継の候補者に事業を引き継ぐか否かの判断材料として使用することができる点です。

「診療所を継ぐか?継がないか?」の二者択一の質問をいきなり投げかけるのではなく診療所の財布事情から経営環境を整理した資料を用いて説明することで親族承継・院内承継の成功率も向上するでしょう。様々な事情から親族承継・院内承継が成立しなくても第三者承継(М&A)の準備は終えているのですから、日本のどこかにいる未来のお相手探しを新しい旅路を歩む気持ちで進めればいいのです。

実はこんなにたくさんある、第三者承継(М&A)のメリット

第三者承継(М&A)のメリットを簡潔に知っておきたい方のためにポイントをまとめました。清算・廃院を選択した場合よりも院長・家族・職員・患者がメリットを享受できる可能性はぐっと高くなります。

  1. 患者の診療を継続できる
  2. 従業員の雇用が維持され生活を守ることができる
  3. 診療所が存続することで地域住民が安心感を得られる
  4. 借入金や連帯保証から解放され経営責任のリスクを排除できる
  5. 創業者利益を獲得することができる(出資持分の現金化/役員退職金の支給等)

この記事では、診療所の事業承継を上手に進める逆転の発想と題して第三者承継(M&A)から検討を始めることが結果的には親族承継・院内承継の成功率をUPさせることにも繋がることをお伝えしました。

『診療所が持つ事業価値』と『地域における市場的な価値』の2つ情報をまず知ることが事業承継をうまくすすめる第一歩です。もしそのような調査を依頼できる会社を知らないということであれば、日本М&Aセンターにご相談ください。きっとお力になれることがあると思います。

日本M&Aセンターの基本情報

日本М&Aセンターは、設立30年で累計6,000件以上の成約実績を誇り、日本で最も事業承継の支援をしてきた会社です。病院・診療所・介護事業の第三者承継(М&A)を毎年約100件成功に導いてきた医療・介護分野の専門集団『医療介護支援部』が診療所の事業承継を支援します。また、当社が運営する『医新伝診(イシンデンシン)』は、診療所を誰かに引き継ぎたい医師と開業を目指す医師をマッチングする医師専用WEBサービスで、数百名を超える医師にご利用頂いています。

医新伝診

この記事の著者/編集者

西山賢太 日本M&Aセンター 事業承継コンサルタント 

日本M&Aセンター医療介護支援部コンサルティング室所属。薬剤師・調理師・医療経営士。
薬剤師免許取得後、経営コンサルティング会社にて病院の事業計画策定・病床機能転換・新築移転業務に従事。その後、社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会川口総合病院にて薬剤師としての実務経験を得た後、日本M&Aセンタ-に入社し、病院・クリニックの経営改善や事業承継を支援している。

するとコメントすることができます。

新着コメント

この連載について

院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継

連載の詳細

事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本連載では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

最新記事・ニュース

more

「開業したいけど、何をすべきかよく分からない」、「開業してみたは良いものの、なかなか集患できない」というお悩みを抱えていませんか? クリニック激戦区の新宿にて1日に400人ほどが来院するクリニックに成長させた実体験をもとに、経営ノウハウを分かりやすくお伝えしていきます。

オンラインでの疾患啓発活動 疾患啓発とは、製薬企業が患者さんやそのご家族に直接働きかけるマーケティング活動のことを指します。疾患の早期発見や治療…