連載院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継

#03 診療所における第三者承継(М&A)の流れとお金の話

<本連載について>
本連載を読まれている先生方も1度は「事業承継」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本連載では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

この記事について

『診療所の第三者承継(М&A)にはどの程度の費用がかかるのか知っておきたい』と思う先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。後継者を探すためにМ&A仲介会社へ依頼した場合の費用は会社毎に異なるため、明確な指標も無く比較検討すら容易くできません。

また、『着手金無料』や『手数料業界最低水準』を掲げる広告が多いなか、診療所を譲渡するという決断に費用面を最優先して委託先の候補を絞ることが本当に適切か注意も必要です。本稿では診療所のM&Aに一歩踏み出すための事前知識として、M&Aの流れや費用を解説します。

M&Aの成約率を左右する『案件化』、入念な準備を徹底的に行う仲介会社が◎

費用の話をする前に一般的なМ&Aの流れを確認しましょう。ここではわかりやすく以下の3つの段階に分けて解説していきます。

  1. 検討・準備フェース
  2. マッチング・交渉フェーズ
  3. 契約フェーズ

1.検討・準備フェーズ

案件化

事業承継やМ&Aを検討する際、相談先に困るという方を多く見かけますが、ご友人や出入り業者に安易に相談を持ち掛けるのは秘密保持の観点からもおすすめできません。銀行や士業事務所も候補に挙がりますが、本業ではないため担当者の経験や力量にブレ幅があり、当たりを引けるとは限りません。

そこでお勧めしたいのは、M&Aの検討段階から成立するまで一貫して支援を行ってくれるM&A仲介会社です。仲介会社の役割は結婚相談所と似ていて、相談者にマッチしたお相手探しから結婚に至るまで、カウンセリングやアドバイスを送ってくれる存在です。

M&Aの話を一歩前に進めるためには、仲介会社と「アドバイザリー契約」を締結します。アドバイザリー契約とは、後継者探しを進めるにあたりアドバイスや手続きの補助を得ることを目的とした契約で業務範囲や秘密保持、報酬などが記載されています。会社によっては、アドバイザリー契約の締結段階で着手金の支払いが生じる会社もあります。

後継者探し=買い手探しと言い換えることができますが、その前に必ず準備しておく物があります。譲渡する診療所の詳細な情報を記した『企業概要書』と呼ばれる資料と診療所の価値をお金に換算した際の根拠を記す資料である『企業評価書』の2つです。この準備作業を弊社では『案件化』と呼んでいます。企業概要書には、診療所の沿革や事業概要、協業優位性、保有する不動産や設備、従業員構成、患者数及び患者層などが記されています。

一方、企業評価書は診療所の価値を時価で評価することに目的が置かれ、決算書にある土地や建物の評価額も時価に修正されるほか、生命保険の解約返戻金なども加味され金額を弾きます。この案件化の作業がM&Aの良し悪しを決める作業と言っても過言ではなく、短時間で診療所の特徴、魅力が的確に伝わる概要書を用いて提案活動を行うことでより多くの買い手から興味を引くことができます。

また、企業評価を精密に行うことにより交渉段階で論点になりそうな問題を事前に洗い出しておくことで買い手も論点を承知した上で交渉のテーブルに着くため成約の確率は高まります。案件化を緻密にやる仲介会社の方が良い会社であることが間違いなく、アドバイリー契約を締結する前に案件化した際の資料を見せてもらうのも良いでしょう。

2.マッチング・交渉フェーズ

マッチング

案件化を終えると仲介会社から買い手候補先をリストアップしたもの、通称『ロングリスト』が提示されます。ロングリストには候補先の名称やシナジーが書かれており、この1つ1つに対して仲介会社を通して提案をしても良いか〇×を付けます。

〇が付いた候補先に提案をした結果、前向きに進めたいという意向があれば、双方が直接顔を合わせて直接話をするトップ面談を行います。М&A業界ではお見合いとも言われるトップ面談は、細かい数字や条件の話よりも双方の価値観や人柄、医療に対する想いなど資料だけでは把握しきれない定性的な部分が合うかを確認します。

3.契約フェーズ

契約

交渉の末、売買価格や承継時期、M&Aのスキームの目途が付いたら基本合意契約を締結します。これまでの交渉過程で合意した内容を整理しМ&Aの成立に向けて双方の認識を合わせるのが目的です。

基本合意契約を締結後、売り手から交渉中に提出した資料等が実態の状況と齟齬が無いか買い手による買収監査(デューデリジェンス)が実施され、将来の収益性や財務状況、法律上の債権債務が無いか調査されます。

買収監査の結果を踏まえて売買価格等の調整が行われ最終契約を締結するとМ&Aが成立し、職員へ情報開示や主要取引先への報告が行われます。М&Aが成立した際にはアドバイザリー契約に応じて成功報酬をМ&A仲介会社に支払います。

着手金の有無だけではなく、仲介会社の実績、買い手候補を見つける仕組み等を確認!

診療所を譲渡する際に仲介会社に支払う手数料には、(検討・準備フェーズ)でアドバイザリー契約を締結した時の『着手金』、(契約フェーズ)でM&Aの成立した際に支払う『成功報酬』があります。最近は『着手金無料』を広告する仲介会社が増えていますが、本記事をお読みの先生方には着手金の裏に隠れるメリット・デメリットを理解した上で依頼する仲介会社を選択して欲しいと考えています。

【着手金無料】のメリット・デメリット

M&Aは結婚同様にご縁で成立する部分も少なからずあり、必ず相手が見つかるとは限りません。買い手が見つかり正式にM&Aが成立するまで一切の費用が掛からないのは金銭的な負担が無いという面で大きなメリットです。また、心理的な障壁も少なく気軽に後継者探しを始めることができます。

一方、『着手金無料』のデメリットは仲介会社の営業マンの立場になるとわかりやすく理解できます。着手金が無いということはM&Aの成立まで仲介会社には一切入金がありません。面談の際の交通費、宿泊費、人件費まで全て会社の持ち出しです。

何が起こるかというと『M&Aが成立しやすい案件から優先されいつまでも候補先が出てこない・具体的な話が進まない』といった事象が発生しやすい傾向にあります。

また、無料であるが故に企業概要書や企業評価書の作成に時間をかけていられないため、いざ候補先が見つかり買収監査が実施される段階で多くの論点が噴出!なんてことが無いよう担当者とは十分にコミュニケーションを取り案件化をしておくことが重要です。

更に、買い手も着手金無料の場合はトップ面談から買収監査で散々診療所の情報を晒した挙句、やっぱりやめたが簡単にできてしまうというカラクリもあるためリスクがあることは留意しましょう。

【着手金有り】のメリット・デメリット

着手金はM&Aの準備費用として賄われることが多く、途中でM&Aを止めたり、相手が見つからなかった場合でも原則返金はされません。故に気軽に仲介会社へ依頼できるとは言い難く、M&Aが成立しなかった場合は百万円単位のお金が無駄になる可能性があるのはデメリットと言えます。

『着手金有り』のメリットも仲介会社の営業マンの立場になると理解しやすくなります。まず、M&Aを始める段階で顧客から入金がある分、必ず相手を見つけなければならないという心理的な責任が生じます。故に成立しにくい案件だから放置される・具体的な話がいつまでも進まないといった事象は発生しにくい環境を作ることができます。

また、(検討・準備フェーズ)で重要だと示した案件化の作業も弁護士や公認会計士など専門家の意見も挟み、精度が高い資料が出来上がるため買い手の興味は引きやすくなるでしょう。また、準備に時間と人員を割くことができるため、交渉段階で突かれそうな論点も事前に洗い出しておくことができます。

最も大きなメリットは、売り手・買い手共に着手金を支払うことからM&Aに対する本気度が見えやすく、成約に至る確率は着手金無料と比較して高い傾向にあります。

『着手金無料』と『着手金有り』のどちらが良いという議論は『持ち家』か『賃貸』かのように正解を決めつけることはできません。着手金が無料でも丁寧なサポートをしてくれる会社もたくさんあると思います。

比較検討する際は着手金の有無だけでなく、診療所のМ&Aを成約した実績、担当者の熱意や医療案件に対する経験値、買い手の候補数や人海戦術だけでないアイデアがあるなど総合的に判断しましょう。

着手金の相場は0円~数百万円、成功報酬の手数料金額は面談の時に概算を尋ねておく

М&Aの成立までに必要な費用は、依頼するM&A仲介会社や譲渡する会社の規模で増減しますが、ここでは診療所に焦点を当てて着手金と成功報酬金額の目安を解説します。

例えば、当社はM&Aを正式に進めるアドバイザリー契約を結んだ際に着手金を頂く、『着手金有り』の仲介会社です。着手金の金額は資産規模により変動しますが、一般的な診療所であれば着手金の額は100万円~200万円の間に収まる場合が大半です。

無事に後継者が見つかり最終契約を結ぶとМ&Aが成立したとされ成功報酬を手数料として支払います。成功報酬の算出には取引金額に応じて手数料率を掛けるレーマン方式を用いるのが一般的ですが、診療所の経営状態や資産の保有状況により数百万円単位で異なるため●万円というのは申し上げにくいのが実情です。成功報酬の手数料金額が気になる方は仲介会社との初回面談時に目安を尋ねておくようにしましょう。

本稿では、診療所の第三者承継(M&A)の流れと費用に着目し、着手金の裏に隠れるカラクリも説明しました。診療所を譲渡するという選択は、医師人生のなかでも開業に継ぐ大きな選択かもしれません。だからこそ、お金を支払ってでもその人に頼みたいと思うプロフェッショナルに出会えた時にアドバイザリー契約を結びましょう。もしそのようなプロフェッショナルを知らないということであれば、日本М&Aセンターにご相談ください。日本で最も病院・クリニックの事業承継・М&Aを支援してきたプロフェッショナルチームがご相談をお伺いします。

日本M&Aセンターの基本情報

日本М&Aセンターは、設立30年で累計6,000件以上の成約実績を誇り、日本で最も事業承継の支援をしてきた会社です。病院・診療所・介護事業の第三者承継(М&A)を毎年約100件成功に導いてきた医療・介護分野の専門集団『医療介護支援部』が診療所の事業承継を支援します。また、当社が運営する『医新伝診(イシンデンシン)』は、診療所を誰かに引き継ぎたい医師と開業を目指す医師をマッチングする医師専用WEBサービスで、数百名を超える医師にご利用頂いています。

医新伝診

この記事の著者/編集者

西山賢太 日本M&Aセンター 事業承継コンサルタント 

日本M&Aセンター医療介護支援部コンサルティング室所属。薬剤師・調理師・医療経営士。
薬剤師免許取得後、経営コンサルティング会社にて病院の事業計画策定・病床機能転換・新築移転業務に従事。その後、社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会川口総合病院にて薬剤師としての実務経験を得た後、日本M&Aセンタ-に入社し、病院・クリニックの経営改善や事業承継を支援している。

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新着コメント

  • 森口敦

    株式会社A&PROPresident & CEO 2021年03月28日

    ドクタージャーナルのドクター達も、私が知っているだけでも複数人、日本M&Aセンターを通じて事業承継を完了しています。

    私も信頼している西山さんの連載。
    次回は実例をわかりやすく紹介してくれます!!

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事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本連載では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

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