連載院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継

#06 私の診療所はいくらで売れるの?診療所のМ&Aにおける譲渡価格の決め方

<本連載について>
本連載を読まれている先生方も1度は「事業承継」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本連載では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

この記事について

診療所のМ&Aで最も気になるテーマの1つがずばり『お金』に関する話ではないでしょうか。М&Aにより長年の歴史がある診療所が存続するとはいえ、誰かに譲るのであれば適正な価格で取引をしたいと思うのは自然なことです。

М&Aにおいてお金の話は切っても切れない論点です。例えば、診療所を託せる医師が見つかり最終契約前の価格交渉に入る際、譲渡価格の算出根拠を知っているのと知らないのでは相手から求められた条件に妥当性があるか、応じることができるか否かなど下せる判断も変わります。

本稿では診療所のМ&Aにおける譲渡価格の決め方と題して、これだけは理解しておきたい内容をお伝えいたします。

診療所のМ&Aで多く用いられる「時価純資産法」

М&Aにおいて譲渡対象となる企業あるいは事業の価値を知ることは大切なプロセスの1つです。その昔、病院であれば1床1,000万円という値段が付くと噂された時代もありましたが、今は病院や診療所においても適切な企業評価が行われるようになりました。

企業評価とは「会社に値段を付ける方法」と言い換えることができ、М&Aにおいては代表的な方法がいくつかあります。しかしながら全ての方法をここで説明すると非常に難解なため、本稿では診療所のМ&Aで多く用いられる「時価純資産法」について解説します。

「時価純資産法」とは

時価純資産法とは、財務諸表のうち貸借対照表に着目して評価を行う方法です。貸借対照表にある帳簿価格をそのまま用いるのではなく、帳簿価格と時価に差額(含み益・含み損)が生じていることを考慮するため「時価」純資産法と呼ばれます。

例えば、診療所を建てた際に購入した土地が当時の取得価格より価値が上がっている場合、時価純資産法ではこの含み益も加味した評価となります。つまり、土地は資産として計上されているため負債の額が変わらなければ、資産から負債を差し引いた純資産は増えることになります。このように資産あるいは負債の項目を時価で評価することで現在の価値を考慮した純資産を算出できます。

時価純資産法のイメージ

「時価純資産法」は含み益や含み損が考慮される!

ただ、貸借対照表にある全ての項目に時価評価を行うことは実質的に困難であることから、下記のように重要な含み損益が発生しうる項目を抜粋して確認を行います。資産の項目にある保険積立金などは多少の含み益が期待できる反面、職員退職金などは積立をしていなければ負債として計上することもあり就業規則も含めて細かい確認が必要です。

時価評価を行う項目の例

М&Aでよく聞く「のれん」・「営業権」とは

前節にある「時価純資産法」は貸借対照表にある資産や負債に着目しているため、現在の事業が黒字でも赤字でも同じ評価額となってしまいます。利益が出ているほど損をしているような気持ちになりますが、「のれん」や「営業権」を考慮することによりこの問題を解消することができます。

企業にはブランドや技術力、社員の能力など、目に見えない無形の資産も多く存在しますが、それらを「のれん」あるいは「営業権」と呼びます。М&Aにおいて営業権はМ&Aの譲渡価格と純資産の差額を指します。

のれん・営業権とは

例えば、「時価純資産法」で90円と評価された診療所が120円で譲渡された場合、差額の30円が営業権となります。М&Aにおける譲渡価格は当事者同士の交渉により定まるため、結局のところ営業権はいくらにでも設定できるというのが本音ではありますが、いくつか計算方法があります。

修正した営業利益の○年分を上乗せする年買法

その1つが年買法といわれる「修正営業利益」の〇年分というような計算を行う方法です。この修正とは、著しく高額な役員報酬を適正に戻し本来の利益とみなしたり、自治体からの補助金など経常的でない収益を除いたりすることです。例えば、修正営業利益が年間10円だとした場合、年買法を用いて3年分であれば計30円が営業権になります。

このように前節にある「時価純資産法」と「営業権」を組み合わせる方法が診療所の企業評価で多く用いられます。

まずは診療所の価値を知ることから始めましょう

経営者であれば事業承継は誰もが経験するわけですが、慣れている人はほとんどいません。特にМ&Aを検討する場合は初めて聞く用語や考え方にまるで追いつけないというのはごく当たり前なことです。

ここまでやや小難しい用語と計算式を用いて説明しましたが、百聞は一見に如かずということわざにもある通り、少しずつ慣れていくという意味でもまずは1回、簡易的な評価をやってみることをお勧めします。

1週間でわかる簡易評価のススメ!

準備が必要な資料は直近3期分の「決算書」と1週間程度の「待ち時間」だけ。今の診療所の価値がわかれば、いつМ&Aを決断するのがいいタイミングなのかあるいはご子息や親族への事業承継を促す材料にも活用できます。

たかが簡易評価と侮るなかれ、思わぬきっかけや気づきがそこにあるかもしれません。もしそのような依頼先を知らないということであれば、日本М&Aセンターにご相談ください。日本で最も病院・クリニックの事業承継・М&Aを支援してきたプロフェッショナルチームがご相談をお伺いします。

日本M&Aセンターの基本情報

日本М&Aセンターは、設立30年で累計6,000件以上の成約実績を誇り、日本で最も事業承継の支援をしてきた会社です。病院・診療所・介護事業の第三者承継(М&A)を毎年約100件成功に導いてきた医療・介護分野の専門集団『医療介護支援部』が診療所の事業承継を支援します。また、当社が運営する『医新伝診(イシンデンシン)』は、診療所を誰かに引き継ぎたい医師と開業を目指す医師をマッチングする医師専用WEBサービスで、数百名を超える医師にご利用頂いています。

医新伝診

この記事の著者/編集者

西山賢太 日本M&Aセンター 事業承継コンサルタント 

日本M&Aセンター医療介護支援部コンサルティング室所属。薬剤師・調理師・医療経営士。
薬剤師免許取得後、経営コンサルティング会社にて病院の事業計画策定・病床機能転換・新築移転業務に従事。その後、社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会川口総合病院にて薬剤師としての実務経験を得た後、日本M&Aセンタ-に入社し、病院・クリニックの経営改善や事業承継を支援している。

するとコメントすることができます。

新着コメント

この連載について

院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継

連載の詳細

事業承継と聞くと、引退を迫られているようで前向きになれなかったり、何から着手すればよいのかわからず悩みや不安を抱えている方も多いと思います。本連載では、『院長・家族・職員・患者、みんなが幸せになる事業承継』をテーマに院長が抱える事業承継への不安を1つでも解消し、笑顔で事業承継を終えられるような気付きを提供いたします。

最新記事・ニュース

more

「開業したいけど、何をすべきかよく分からない」、「開業してみたは良いものの、なかなか集患できない」というお悩みを抱えていませんか? クリニック激戦区の新宿にて1日に400人ほどが来院するクリニックに成長させた実体験をもとに、経営ノウハウを分かりやすくお伝えしていきます。

オンラインでの疾患啓発活動 疾患啓発とは、製薬企業が患者さんやそのご家族に直接働きかけるマーケティング活動のことを指します。疾患の早期発見や治療…