連載外来診療の延長線が在宅医療と考え、地域に尽くすかかりつけ医の姿をつらぬく

#01 在宅医療の魅力とは、その人の人生に非常に深く関わる医療といえることです

外来診療と入院治療に在宅医療の3本の柱で地域の医療ニーズに多機能で対応し、地域医療に取り組む「いらはら診療所」。 院長の苛原実(いらはらみのる)氏は、地域の人と生活を共にして、地域に尽くすのがかかりつけ医の姿だと、あくまでも地域のかかりつけ医としての自らの役割を強調する。 早くから在宅医療に取りくんでいる苛原実院長は、在宅医療とは、あくまでも医療の提供手段の一つであり、外来診療の延長線にあるのが在宅医療だと考えている。 また、これまで多くの認知症の患者さんを診てきて、たくさんの臨床経験の中から認知症の診断力を培ってきた苛原実院長は、かかりつけ医こそ、認知症のスキルを身につけるべきだと語る。 (『ドクタージャーナル Vol.26』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

在宅医療に取組み、その魅力にのめり込む

私は、整形外科医として開業しました。最初の頃は、外来患者さんの診療が主で、訪問診療を行うという考えは特にありませんでした。

そんな中、ある患者さんから「外来に行くことが難しいので自宅に来てほしい。」との依頼が入りました。その方は骨折の患者さんで、この往診依頼が在宅医療に取り組むきっかけとなりました。

在宅医療に取り組み始めて見ると意外に面白くて、次第にその魅力にのめり込んでいったという次第です。

在宅医療は外来診療と比べても、一人一人の患者さんに向き合う時間が長く取れるのと、多くの場合、その方の看取りまで行うこともありますから、その方の人生に非常に深く関わる医療といえます。私にとってはそれが在宅医療の魅力です。

私が在宅医療を始めたのは、今から20年以上も前で、現在ほど在宅医療が盛んではなかった時代でしたし、訪問看護ステーションや介護サービスもありませんから、随分と苦労もありました。

ましてやその当時では、整形外科で訪問診療は珍しかったと思います。

その後すぐに、訪問看護ステーションを立ち上げ、比較的早い時期から訪問リハビリも始めました。

整形外科における在宅医療のニーズは高いと思います。整形外科で診るのは、多くが骨関節疾患の患者さんですから、在宅医療が必要となる患者さんは実は多くおられます。

 また当診療所は19床の有床診療所です。私が在宅医療を初めた頃は、在宅の患者さんを病院に入院させるのがとても難しい時代でした。

そこで、病床を持つことで在宅医療の機能を充実させようと考えました。つまり先に在宅医療ありきで有床診療所にしたわけです。

外来、入院と在宅で地域医療に取り組む

当診療所は、外来診療と入院治療、それに在宅医療の3つの診療体系で地域医療に取り組んでいます。

入院機能に加えて、隣接する有料老人ホームや、系列施設も多数あるので多機能に対応でき、ワンストップの地域医療サービスが提供できるようになっています。

地元の皆さんからは地域の病院のように思われています。

診療所の体制としては、常勤のドクターが4人に非常勤のドクターが10人おりまして、常勤のドクターは全員在宅医療を行っています。

私は、専門の整形外科外来と併せて、往診にも毎日行っています。

整形外科の外来患者さんはとても多く、午前中で多い時で70人くらい、少ない時でも50人くらいの方が来院されますので、とても忙しく大変です。それに加えて在宅医療ですから、ここでは私が一番働いています(笑)。

地域の診療所ということで、小学生や中学生、高校生など若い方も来院しますが、やはり高齢の患者さんが圧倒的に多い状況です。ですから、認知症の患者さんを診ることも頻繁にあります。

在宅医療とは、医療の提供手段の一つ

私は、在宅医療とはあくまでも医療の提供手段の一つだと思っています。つまり外来診療や入院診療の一環であり、どちらかといえば、外来診療の延長線上にあるのが在宅医療だと捉えています。

また、在宅医療を行っていることで、外来の患者さんとの関わり合い方も違ってきます。

在宅医療という手段があるので、外来で診ている患者さんにも、診療所に来るのが大変になったらいつでもご自宅に往診に行けますよという話ができます。

それは診療所にとって大きなパワーになっていると感じます。

 在宅医療に携わるようになってからこの20年間で、世の中がすごく変わってきたと感じます。ますます重度の方が増えてきており、困難事例が増えてきている。地域が疲弊してきているということを、特に最近は強く感じます。

 独居の高齢者の方、老老介護の方もいますし、認認介護の方もいます。地域が本当に高齢化してきていると実感します。

 在宅医療とは生活の場で受ける医療ですが、生活の場は自宅とは限りません。

ですから、自宅で受けるだけが在宅医療ではありません。居宅系の施設なども、本人にとっては生活の場といえますから、そこで提供される医療も在宅医療といえます。

 そのような意味では、これからは施設での在宅医療が増えていくと思われますし、看取りにおいても全国で圧倒的に増えているのは施設での看取りです。

この記事の著者/編集者

苛原実 医療法人社団実幸会 いらはら診療所  院長 

医療法人社団実幸会 いらはら診療所 理事長 院長 医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ財団認定医、日本医師会認知症サポート医 特定非営利活動法人 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長 一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会監事 1981年、徳島大学医学部卒業。千葉西総合病院整形外科部長などを経て、1994年いらはら整形外科開業。1995年、医療法人社団実幸会を設立、1997年に病棟を併設したいらはら診療所を開設、訪問看護・診療、訪問介護、通所介護、居宅介護支援など地域医療・在宅医療に取り組む。

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