医療法人社団実幸会 いらはら診療所  院長  苛原実 氏
連載外来診療の延長線が在宅医療と考え、地域に尽くすかかりつけ医の姿をつらぬく

#02 在宅医療は患者さんの生活までも見ないと成立しません

外来診療と入院治療に在宅医療の3本の柱で地域の医療ニーズに多機能で対応し、地域医療に取り組む「いらはら診療所」。 院長の苛原実(いらはらみのる)氏は、地域の人と生活を共にして、地域に尽くすのがかかりつけ医の姿だと、あくまでも地域のかかりつけ医としての自らの役割を強調する。 早くから在宅医療に取りくんでいる苛原実院長は、在宅医療とは、あくまでも医療の提供手段の一つであり、外来診療の延長線にあるのが在宅医療だと考えている。 また、これまで多くの認知症の患者さんを診てきて、たくさんの臨床経験の中から認知症の診断力を培ってきた苛原実院長は、かかりつけ医こそ、認知症のスキルを身につけるべきだと語る。 (『ドクタージャーナル Vol.26』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

在宅医は人助けが好きな医師が多い 

 在宅医療をされている先生たちは、人助けが好きな医師が多いように感じます。

家庭の中に入り込み、家族の中の人間関係なども見えてきますから、それが嫌だという人には務まらないでしょう。

 在宅医療は患者さんの生活までも見ないと成立しません。ですから医療以外の相談も受けます。それは生活の相談や家族間の相談事であったりと様々です。相談内容によってはMSWや行政の力など、周囲の力を借りて対応します。

 最近は、地域包括支援センターや市役所からの依頼もとても多くなっています。

特に多いのは、認知症の独居の方についての相談です。その相談内容も、いろいろな問題が複雑に絡み合っていたりして、深刻なものが多く、それらが日々たくさん舞い込んできます。

私自身は、そのような相談を受けることが決して嫌いではありません。むしろ楽しいくらいです。

来院される患者さんをただ待っているというのではなく、自ら出向いて行き、そこにあるいろいろな困難や社会的問題を多職種の方と協力して解決してゆく。それは私にとってはやりがいがあり、面白いことです。

また、そこに関心を持てなければ、在宅医療はできないのではないでしょうか。

地域で生活し地域に尽くすのがかかりつけ医

私は、地域の一住民として、この地域を少しでも良くしたいという思いを持っています。

かかりつけ医とは、その地域に住んで、地域と向き合い、地域のことを考えている医師のことであり、地域に溶け込んで、地域の人と生活を共にしていることが、地域のかかりつけ医の姿だと思っています。

私が目指している医療とは地域医療です。地域の発展のために尽くす、地域が良くなるために地域包括ケアをしたい。その思いで地域医療に取り組んでいます。

地域の方に大勢来院して頂けて、その方々のいろいろな困難を解決してあげられると、医師としての手応えや、やりがいを強く感じます。

この地域では、私も一人の住民です。毎日の散歩では患者さんから気軽に声をかけられたり、時には立ち話もします。また、20年以上も住んでいますと地域の方を数多く看取ってもきましたので、「その節はお世話になりました。」と挨拶をされることもあります。

子供が小さい頃は保育園や学童に迎えに行ったりしましたし、スーパーに買い物に行ったり、ファミレスに行ったりもします。

知り合いや患者さんにも会うことも多くて、悪いことはできません(笑)。

その地域に住み、地域の人たちとの繋がりがないと、地域のかかりつけ医としての地域医療は難しいと思っています。さらには、かかりつけ医としての在宅医療も難しいでしょう。

在宅医療とはかかりつけ医療の延長にある

 先にも述べましたように、在宅医療とはかかりつけ医療の延長にあるものだと考えています。

患者さんが病院から退院して家に戻ってきたり、或は外来に来られなくなったら、当然のこととして、その患者さんの往診をしてあげるということだと思います。結局はそれに尽きると思います。

 そのような医療がもっと広がっていくべきであると思いますし、こうしたシステムでないと日本の在宅医療は発展しないと思います。

 在宅専門の診療所も、勿論必要でしょう。しかしそれだけでは在宅医療のすそ野は広がらない。

地域のかかりつけ医が、日中だけでもいいから往診にも出る。それがとても重要だと思っています。

諸外国に比べて日本の在宅医療は、比較的しっかりと国が支援していると思われます。

その背景には、日本が世界で類を見ない超高齢化社会であるということがあります。

だからこそ日本独自の医療体制に向かっていく必然性もそこにあると思います。

実は私どもの診療所には、台湾や香港からも医療関係者が視察に来ます。視察では在宅の現場に一緒に同行したりもして非常に熱心です。

今週も台湾から視察に来ています。台湾も高齢化が進んでいて、彼らは非常に危機感を持っています。

(続く)

この記事の著者/編集者

苛原実 医療法人社団実幸会 いらはら診療所  院長 

医療法人社団実幸会 いらはら診療所 理事長 院長 医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ財団認定医、日本医師会認知症サポート医 特定非営利活動法人 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長 一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会監事 1981年、徳島大学医学部卒業。千葉西総合病院整形外科部長などを経て、1994年いらはら整形外科開業。1995年、医療法人社団実幸会を設立、1997年に病棟を併設したいらはら診療所を開設、訪問看護・診療、訪問介護、通所介護、居宅介護支援など地域医療・在宅医療に取り組む。

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