連載外来診療の延長線が在宅医療と考え、地域に尽くすかかりつけ医の姿をつらぬく

#03 地域のかかりつけ医こそ、認知症のスキルを身につけるべきだと思います

外来診療と入院治療に在宅医療の3本の柱で地域の医療ニーズに多機能で対応し、地域医療に取り組む「いらはら診療所」。 院長の苛原実(いらはらみのる)氏は、地域の人と生活を共にして、地域に尽くすのがかかりつけ医の姿だと、あくまでも地域のかかりつけ医としての自らの役割を強調する。 早くから在宅医療に取りくんでいる苛原実院長は、在宅医療とは、あくまでも医療の提供手段の一つであり、外来診療の延長線にあるのが在宅医療だと考えている。 また、これまで多くの認知症の患者さんを診てきて、たくさんの臨床経験の中から認知症の診断力を培ってきた苛原実院長は、かかりつけ医こそ、認知症のスキルを身につけるべきだと語る。 (『ドクタージャーナル Vol.26』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

外来で認知症を見つけることは非常に難しい

在宅だけでなく外来の高齢者の方の中にも一定の割合で認知症の方はいまして、その数は増えてきているというのが実感です。

特に外来診療では、こちらが認知症と気づかずに診療を続けてしまうという事例がたくさんあります。

医師の方で気付かなければ、糖尿病がなかなか良くならないと思っていた高齢の患者さんが、実は薬を全く飲んでいなかった、などということもあります。しかも本人は、毎回外来では薬を飲んでいるというのです。

ですから、外来診療で認知症を見つけることは非常に難しい。私は常々、高齢者を診る医師は認知症について知っていなければならないと言っています。

実際に、診療現場ではなかなか認知症は見抜けません。認知症に関わることで認知症を見抜く力が付いてきます。

認知症では、病気を診るよりは生活を看る

私は在宅医療に関わるようになって、これまで多くの認知症の患者さんを診てきました。

たくさんの臨床経験の中で、認知症の診断力を培ってきましたので、認知症の診断に関しても自信があります。私は認知症も診れる整形外科医といっています(笑)

特にアルツハイマー型認知症では、発症した時から亡くなられるまでを何人も診てきましたから、その経過も良くわかります。

おそらく大学病院などの専門医でも、病院では亡くなられるまでは診ていないでしょうから、そのような意味でも認知症の診療には自信を持っています。

但し認知症は、診断はできても治せないので、医療というよりは生活のしづらさをどう支えるかということが重要となります。そこに医師がどう関わり、コーディネートしていくかということになります。

つまり認知症では、病気を診るというよりは生活を看るということになります。それは外来診療では見えません。在宅医療でないと生活は見えてきません。

また認知症の方はいろいろな病気を併発しやすいので、急な対応が必要になることもあります。そういう時こそ、普段のかかりつけ医の出番なのです。

ですから私は、認知症はかかりつけ医が診る病気だと言っています。もちろん専門医との協力もあっての話ですが、逆に、かかりつけ医が認知症を診れなかったらだめだと思います。

地域のかかりつけ医は認知症のスキルを身につけるべきだと思っています。

在宅ケア診療所・市民全国ネットワーク

「特定非営利活動法人 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク」とは、医師や医療従事者だけでなく、市民も含めたネットワークです。現在は、私が会長を務めさせて頂いています。

診療所を中心として在宅ケアに関わる全ての職種や当事者の方々が「ネットワーク」することによって、お互いを賦活しあい、それぞれの夢を膨らませ、困難を乗り切っていこうという考えで設立されました。すべての人に開放されたネットワークで、我々は元祖多職種協働とも言っています。

このネットワークの理念とは、地域包括ケアの理念そのものといえます。

毎年全国大会を行っており、第1回全国の集いin東京 1995からスタートして、今年の9月には第24回全国の集いin大阪2018が開催されます。

今回のメインテーマは、「ともに生きる・ともに暮らす・めっちゃええ明日」となっています。

全国大会では毎回多くの多職種の方が参加して実践交流会を行い、多角的な視野から在宅ケアに関する議論を行っています。

また実践交流会の内容はテーマごとに記録として蓄積し、閲覧できるようにしています。

この記事の著者/編集者

苛原実 医療法人社団実幸会 いらはら診療所  院長 

医療法人社団実幸会 いらはら診療所 理事長 院長 医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ財団認定医、日本医師会認知症サポート医 特定非営利活動法人 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長 一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会監事 1981年、徳島大学医学部卒業。千葉西総合病院整形外科部長などを経て、1994年いらはら整形外科開業。1995年、医療法人社団実幸会を設立、1997年に病棟を併設したいらはら診療所を開設、訪問看護・診療、訪問介護、通所介護、居宅介護支援など地域医療・在宅医療に取り組む。

この連載について

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