医療法人社団実幸会 いらはら診療所  院長  苛原実 氏
連載外来診療の延長線が在宅医療と考え、地域に尽くすかかりつけ医の姿をつらぬく

#04 医療経営の原点とは、丁寧な医療を行い、地域の患者さんを増やすことだと思います

外来診療と入院治療に在宅医療の3本の柱で地域の医療ニーズに多機能で対応し、地域医療に取り組む「いらはら診療所」。 院長の苛原実(いらはらみのる)氏は、地域の人と生活を共にして、地域に尽くすのがかかりつけ医の姿だと、あくまでも地域のかかりつけ医としての自らの役割を強調する。 早くから在宅医療に取りくんでいる苛原実院長は、在宅医療とは、あくまでも医療の提供手段の一つであり、外来診療の延長線にあるのが在宅医療だと考えている。 また、これまで多くの認知症の患者さんを診てきて、たくさんの臨床経験の中から認知症の診断力を培ってきた苛原実院長は、かかりつけ医こそ、認知症のスキルを身につけるべきだと語る。 (『ドクタージャーナル Vol.26』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

努力や工夫で患者さんを増やすことはできる

医療経営とは制度ビジネスだと思っています。ですから、医療制度の面に則って、医療保険制度を十分に理解し、活用していくことが重要だと思います。

在宅医療を行っている医療機関の多くがそうであったように、2年前の在宅医療の点数が下がった時には、私どもでも毎月多額な減収が生じることが予測されました。

大きな危機感を持って真剣に対策を検討した結果、経営を維持するためには在宅患者さんを増やそうという結論になり、それまで以上に在宅医療に力を入れました。

不思議なことにそういう意識で取り組んでいると、在宅医療の患者さんが増えてきて、危機を乗り越えることができました。

当然の話ですが、医療経営の原点は患者さんを増やすということだと思います。丁寧に対応していけば結果として患者さんは増えていくと思います。

開業医の中には漫然と医療経営に取り組んでいる人も多いように思います。ちょっとした努力とか工夫で、患者さんを増やすことができるのではないかと思います。

地域が求めるニーズを感じ形にしてきました

現在、医療法人社団実幸会いらはら診療所は、6つの事業所と、15の関連事業所があります。それらは全て、その時々に患者さんにとって必要なものは何かと考え、自分の手の届く範囲の中で一つ一つ取り組んできた結果です。

最初から経営ありきで事業を拡大してきたものではありませんでしたから、特にマーケットリサーチをしたり、事業計画に基づいたということではありませんでした。

在宅医療に取り組む中で、地域の患者さんから求められているニーズを自分の肌で感じ、それを形にしてきたという感じです。

先に述べたように、有床の診療所にしたのも同じ理由です。医療経営だけを考えていたら、おそらく病床は作らなかったでしょう。今でも病床に関していえば採算は取れていません。

しかし大きな目で捉えれば、病床があるから外来患者さんも増え、いざという時には入院の受け入れもできるので在宅の患者さんも増えているという面もあります。不採算であっても病床があることは決して経営上のマイナスにはなっていません。

 各事業所の運営はそれぞれの責任者に任せるようにして、関連事業のマネジメントに関しては、私は口を挟まないようにしています。信頼して任せることで、責任感ややる気も出てきます。おかげさまで優秀なスタッフたちに恵まれて、私自身はとても助かっています。

一番深刻な悩みとは、やはり人材採用です。特に介護スタッフの採用では苦労しています。これは当診療所に限らず、医療業界全体の課題でもあります。

 今、都市部では高齢化の進行が急激に進み、地域においては老々介護や独居老人も多く、生活を支える介護と医療の連携は必須となっています。

 今後、かかりつけ医の役割はますます重くなってくると思います。

地域の中で患者さんの意思を尊重する医療を提供しながら、地域づくりにも貢献するという当診療所の理念の元、あくまでも地域のかかりつけ医として、きめの細かい地域医療をこれからも推し進めていきたいと思っています。

この記事の著者/編集者

苛原実 医療法人社団実幸会 いらはら診療所  院長 

医療法人社団実幸会 いらはら診療所 理事長 院長 医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ財団認定医、日本医師会認知症サポート医 特定非営利活動法人 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長 一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会監事 1981年、徳島大学医学部卒業。千葉西総合病院整形外科部長などを経て、1994年いらはら整形外科開業。1995年、医療法人社団実幸会を設立、1997年に病棟を併設したいらはら診療所を開設、訪問看護・診療、訪問介護、通所介護、居宅介護支援など地域医療・在宅医療に取り組む。

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