レビー小体型認知症の最大の問題は、
医師による誤診が多いということです。

横浜市立大学名誉教授 小阪 憲司

#03 実はレビー小体型認知症の患者さんは多いにもかかわらず、誤診が多い。

レビー小体型認知症(ⅮⅬB)は、認知症全体のおよそ2割を占めるとみられている。

「認知症専門医であっても、ⅮⅬBを他の疾患と誤診していることが非常に多い。最も問題なのは、誤診により、多くのⅮⅬBの患者さんの適切な治療が手遅れとなっていることです。ⅮⅬBは早期発見・早期治療で、認知症の発症や進行を遅らせることができる病気なのです。」と、正しい早期診断の意義を、世界で最初にレビー小体型認知症を発見した小阪憲司氏は語る。

(『ドクタージャーナル Vol.15』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
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認知症という病名に引きずられてしまう。

レビー小体型認知症(DLB)という病名を付けたこと自体が問題といえます。私が提唱した、びまん性レビー小体病が最も適していると考えます。 

認知症という病名が付いてしまったために、かえって病態が分かりづらく、認知症が出ていないと診断できないということになってしまっている。そのことで多くの医師が誤診してしまうのです。 

専門医の間でもいまだに多く誤診されているのが現状です。認知症が出ないと診断できないと。 

でもレビー小体型認知症は違う。認知症の症状が出る前から疑わなければならない病気なのです。 
私が講演会や著書でも特に強調しているのはそこのところなのですが、それがなかなか浸透していません。

周辺症状ではなくBPSD

また、従来のアルツハイマー型認知症における、脳の変性疾患の中核症状に対して、二次的に現れる症状が周辺症状という考え方は、レビー小体型認知症では全く通用しません。

レビー小体型認知症の場合は、一般的に周辺症状と言われる症状の方が「中核」であるとも言えることから、「周辺」という表現は適当ではないと言えるでしょう。

ですから、レビー小体型認知症では、周辺症状とは言わずにBPSD(認知症の行動・心理状態:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia )というべきなのです。

―以前は、BPSDは「問題行動」とも呼ばれていましたが、この「問題」とは介護する側の立場から見た場合の「問題」であって、患者本人は問題を起こそうとして行動しているわけではないので、最近では「問題行動」という表現もふさわしくないと認識されるようになっていますね。―

表5/BPSDの比較

レビー小体型認知症は誤診が多い。

レビー小体型認知症は誤診が多く、そのために家族が介護に困っていることが少なくありません。アルツハイマー型認知症との鑑別の他にも精神疾患との誤診にも注意を要します。 

レビー小体型認知症は早期では精神症状や行動障害が多い。認知症が出る前にうつ病の症状が出ているためにうつ病と診断されたり、幻覚、妄想の症状が目立つために統合失調症とか、老人性妄想症と診断されたり、あるいはパーキンソン症状が目立つのでパーキンソン病と診断されたりするという誤診が多いのです。 

精神疾患と誤診されて抗精神病薬を処方され、レビー小体型認知症の症状が悪化している例も少なくありません。特に抗精神病薬には強い薬剤過敏性を示すためです。 

レビー小体型認知症の初期ではうつ症状を示すことも多く、そのために「うつ病」と誤診されて抗うつ薬を処方されている患者さんも少なくありません。

また、レビー小体型認知症の患者さんの多くにみられる幻視や妄想から、統合失調症や老人性精神病と誤診されているケースもあります。 

レビー小体型認知症と診断できたときには、すでにレビー小体型認知症の症状がかなり進行してしまっている例を何例も経験しています。 

うつ病などの精神疾患と診断されている患者さんで幻視やパーキンソン症状などが確認された場合は、まずレビー小体型認知症を疑ことが必要です。

レビー小体型認知症の患者さんは実は多い。

 2012年度の厚生労働科学研究班の報告によると、認知症疾患医療センターの専門医のもとで診断された認知症は、アルツハイマー型認知症が約70%、脳血管性が約20%、ところがレビー小体型認知症の割合は認知症全体のわずか4.3%となっています。 

しかし実際には、認知症のおよそ20%をレビー小体型認知症が占めるとみられています。 イギリスやフィンランドでもレビー小体型認知症は20%前後に見られており、ヨーロッパと日本での差はほとんどみられません。 

このことは、専門医であっても他の疾患と誤診している可能性が高いことを示しています。 
何故かというと、先にも述べましたが、レビー小体型認知症の理解不足と、前提として認知症を意識しすぎてしまっているからです。

早期発見、早期治療が大切なのです。

 これはすべての認知症に対して言えることですが、特にレビー小体型認知症には早期発見、早期治療が大切なのです。 

レビー小体型認知症では、認知症の症状が出る前にいろいろなサインを出すわけですから、それを捉えて早く診断し治療を行えば、認知症の進展を予防できる可能性もあるわけです。 

BPSDなどの症状を抑えることもできる可能性もある。だからレビー小体型認知症では特に早期発見、早期治療が大切なのです。

表6/レビー小体型認知症は早期診断が大切
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(続く)

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小坂憲司
小阪 憲司 (こさか けんじ) 氏

レビー小体型認知症(ⅮⅬB)は、認知症全体のおよそ2割を占めるとみられている。
「認知症専門医であっても、ⅮⅬBを他の疾患と誤診していることが非常に多い。最も問題なのは、誤診により、多くのⅮⅬBの患者さんの適切な治療が手遅れとなっていることです。ⅮⅬBは早期発見・早期治療で、認知症の発症や進行を遅らせることができる病気なのです。」と、正しい早期診断の意義を、世界で最初にレビー小体型認知症を発見した小阪憲司氏は語る。