レビー小体型認知症の最大の問題は、
医師による誤診が多いということです。

横浜市立大学名誉教授 小阪 憲司

#06 一人でも多くの人にレビー小体型認知症を知ってほしいと願います。

レビー小体型認知症(ⅮⅬB)は、認知症全体のおよそ2割を占めるとみられている。

「認知症専門医であっても、ⅮⅬBを他の疾患と誤診していることが非常に多い。最も問題なのは、誤診により、多くのⅮⅬBの患者さんの適切な治療が手遅れとなっていることです。ⅮⅬBは早期発見・早期治療で、認知症の発症や進行を遅らせることができる病気なのです。」と、正しい早期診断の意義を、世界で最初にレビー小体型認知症を発見した小阪憲司氏は語る。

(『ドクタージャーナル Vol.15』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
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「レビー小体型認知症研究会」を立ち上げる。

2006年11月に横浜で国際ワークショップが開催されたのを機会に、翌2007年、国内においてレビー小体型認知症を正しく紹介することを目的として、レビー小体型認知症研究会を立ち上げました。現在この研究会には、300人ほどのドクターが全国から参加しています。 

毎年11月に横浜で全国大会を開催しています。2015年12月には、アメリカ・フロリダでDLB国際会議が開催され、私もそこで講演を行いました。 

近年制作された「妻の病│レビー小体型認知症│」というドキュメンタリー映画があります。 統合失調症と誤診され3年間にわたり抗精神病薬を処方され続けた結果、正しい診断がついた時には、すでにレビー小体型認知症が相当悪化してしまっていた奥様と医師である夫との夫婦愛の生活が描かれています。 

レビー小体型認知症は抗精神病薬に過敏性がありますから、これは誤診が生んだ悲劇です。しかし稀なことではないのです。日本中のいたるところで起きていることなのです。

 先ほど述べましたが、現場では家族やケアする人たちが最初に、どうもアルツハイマー型認知症とは違うのではないかと気づくことが多い。

しかし、その情報が診察や治療に生かされていない現実がある。結果として、ご本人や家族の方たちが大変な苦労をされている。

 今やアルツハイマー型認知症に次いで2番目に多いとされるのがレビー小体型認知症です。 

専門医も含めて多くの医師がレビー小体型認知症の診察、治療について十分な知識と情報を持つことが絶対に必要なのです。ですから、今後さらに多くの心あるドクターにレビー小体型認知症研究会に参加して頂きたいと願っております。

家族会「レビー小体型認知症サポートネットワーク」を立ち上げる。

併せて、レビー小体型認知症ご本人とご家族の交流や病気の正しい知識の普及を目的に家族会として、「レビー小体型認知症家族を支える会」を立ち上げました。

2015年からは名称を変更して「レビー小体型認知症サポートネットワーク」となっています。 既にある家族会の多くは主にアルツハイマー型認知症が対象です。 

しかし、レビー小体型認知症ではご本人や家族の方の悩みやご苦労には特有のものがあります。 

ですから正しい知識を持つとともに同じ病気をかかえる仲間と専門家のサポートが必要です。そこで、2008年にレビー小体型認知症の家族会を発足しました。 

この家族会の特徴は、それまで多くある家族の方を中心とした家族会と違い、レビー小体型認知症の家族やケアスタッフだけでなく、医師がサポーターとして参加し、一緒になって運営しているという点です。ですから家族会を開催する時には必ず顧問医となっている医師が参加します。 

現在は全国で、札幌、青森、宮城、福島、東京、神奈川、愛知、岡山など18カ所のエリアで、各エリアの責任者と顧問医を中心に交流会やフォーラムを開催していますが、今後も随時活動エリアを増やしてゆく予定です。 

それと、全エリアの共同イベントである総会を、毎年行われるレビー小体型認知症研究会の第一部で開催しています。 

また家族会のホームページでは、「レビー小体型認知症の診断・治療ができる専門医師一覧」を掲示して、どなたでも専門医に気軽に相談ができるようにしています。

一人でも多くの人にレビー小体型認知症を知っていただきたい。

今までも臨床医一筋ですが、これからも目の前の患者さん一人一人にしっかりと向き合い続けていきたいと思っています。 

75歳を超えた今も、週の内4日間は患者さんを診ています。高齢者の患者さんが多いですが、私自身も後期高齢者です(笑)。 

土日は主に講演などの啓発活動で全国を飛び回っていますが、多い時には講演が週3回以上入ることもあります。月曜日の1日だけ休みを取っていますが、これも講演の準備とかで忙殺されることも多いです。 

とにかく、一人でも多くの人々に知って欲しい。 

レビー小体型認知症は特に誤診が多い。正しい知識の下に、しっかりと診察し、早期発見、早期治療ができれば、有効な治療ができる病気なのです。 

レビー小体型認知症は日本で発見された病気です。だから日本が診断、治療の最先端になるべきなのです。今、多くの後継の若い医師たちが増えてきています。頼もしい限りです。

表8/レビー小体型認知症の国際診断基準
表8/レビー小体型認知症の国際診断基準
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小坂憲司
小阪 憲司 (こさか けんじ) 氏

1939年三重県伊勢市生まれ。1965年金沢大学医学部卒業。1976年大脳皮質にも多数のレビー小体が出現する認知症を報告。1980年「レビー小体病」を提唱。1984年びまん性レビー小体病を提唱。1991年横浜市立大学医学部精神医学教室教授就任。1995年第一回国際ワークショップ(イギリス)で、これまでの研究成果がレビー小体型認知症(DLB)として命名される。2003年横浜市立大学医学部精神医学教室名誉教授。『レビー小体型認知症の診断と治療』、『レビー小体型認知症がよくわかる本』など著書多数。