医療法人社団 杏順会 越川病院  理事長・院長  越川貴史
連載がん難民をなくすために、緩和ケアに専門特化した自院完結型の連携医療に取り組む

#04 私たちは、杉並区から「がん難民」をなくそうと努力しています。

一般病床12床、緩和ケア病床34床の46床で7:1の看護体制を敷き、緩和ケアと在宅支援に取り組む医療法人社団 杏順会越川病院。越川貴史院長は、行き場を失った終末期の「がん難民」をなくしたいという思いから、経営コンサルタントなど外部のサポートを一切借りず自らの手で、自院完結型の連携医療の経営モデルを作り上げた。 「緩和医療は急性期医療です。」という。緊急の患者には越川院長自らスピーディーに入院調整を行い、95%の病床稼働率を維持している。独自の緩和ケアの取組みを越川院長に聞いた。 (『ドクタージャーナル Vol.11』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

「患者さんを家に帰す」という考え方

― 越川病院の緩和ケア医療の取り組みをお聞かせください。―

私が緩和医療に取り組んでかれこれ15年ほどになります。診療科を産婦人科から変えた当初は、現行のホスピスのような対応からはじめました。

しかし、旧設備をほとんどそのまま利用しているので、広い病室もなく、ホスピスとして展開させていくのは物理的に無理でした。

では、我々の特徴をどう出していくかと考えた結果「患者さんを家に帰す」という考えに至りました。

ホスピスは今でも緊急入院の対応は困難なことが多いです。「緊急入院ができるようにする。その後に家に帰せる体制をつくれば良い」。そこで在宅支援体制を作り上げました。

当時から今に至ってもこの分野の専門医は少なくて、痛みの管理で他の診療所から緊急で当病院に搬送されてくる患者さんもいます。がんの痛みだけでは大学病院などでは入院が困難なため、こちらに搬送されてくるわけです。

ホスピスと当病院の違いは緩和ケアで一般病床があることで、当病院が一般病床を持っていることの利点は、緩和医療の救急対応ができるということです。

一般病床では患者さんへのフレキシブルな対応ができます。ベッドの回転率も速く緊急の対応もできますし、7:1の看護体制ですから手厚い看護が受けられます。緊急の患者さんのお引き受けできることがとても大切なのです。

がん難民をなくす

私たちは、杉並区から「がん難民」をなくそうと努力しています。

「がん難民」と言ってもあまりピンと来ないかもしれませんが、例えばがん診療拠点病院にかかっていても、緩和ケア目的になると拠点病院での入院は困難なことが多いです。

そこで他所の緩和ケア病棟の紹介状を書いてもらったとしても入院できるまでに数か月かかります。その間の患者さんのフォローはだれが行うのか。

地域の開業医を紹介されても、そこで必ずしも適切な緩和医療ができるわけではありません。

末期がんの患者さんが病院から自宅に帰されてもその先の行き場を失ってしまうのです。

そのような「がん難民」と呼ばれる方が実際には多いのです。それは一番緊急の医療を必要とされている患者さんが医療を受けられないということでもあるのです。

積極的な緩和医療の提供

私たちは病院の理念で『積極的な緩和医療の提供』を掲げています。

今までの緩和ケアは、ナチュラルに任せることが最善という考え方が強かったのですが、今の時代には多様なニーズがあります。

現在ではがん患者さんに対して、亡くなる寸前まで比較的副作用が少なく制がん効果が高い分子標的薬を投与するケースも多くなっています。

効果があれば患者さん本人も「服薬を続けたい」、ご家族も「亡くなる寸前まで飲ませてあげたい」と願います。しかし、がん治療をしていては、緩和ケア病棟には入れません。

緩和ケア病棟に入るためには治療をやめなければならない。

一方、当病院は一般病床ですから、終末期でもがん治療薬を服用しながら入院している人が何人かいらっしゃいます。

今後は一般病床と緩和ケア病床の両方を備えて、治療を望む患者さんは一般病床でフォローしようというのが私の考えです。

ケアマネージャーとの連携

介護保険事業の立ち上げに際し、私はケアマネージャーの資格を取りましたが、その研修に参加する中で特に医療職と介護職のギャップがあることを感じ、ケアマネージャーとのコミュニケーションと教育が非常に大切と思いました。

例えば、診療情報提供書を見ているケアマネージャーは少ないですし、医師の方から紹介状のコピーを渡すことなども少ないと思います。

多くのケアマネージャーが情報の少ない中で動かなくてはならない辛い立場であることもよくわかりました。

そこで、去年は杉並区の150人ほどのケアマネージャーに対し、緩和医療について具体的な内容に即した研修を行いました。ケアマネージャーとの連携も緩和ケアの医療連携では特に重要です。しかし、その連携が十分にとられているとは言えないのが現状です。

(続く)

この記事の著者/編集者

越川貴史 医療法人社団 杏順会 越川病院  理事長・院長 

医療法人社団杏順会越川病院理事長・院長。 一般内科・消化器科 1995年日本大学医学部卒業、日本大学第三内科入局。2001年医療法人社団 杏順会 越川病院開設し院長に就任。2003年から国立がんセンター中央病院緩和ケア科研修生(5年間)。 日本緩和医療学会指導医認定、日本緩和医療学会認定医、東京慈恵会医科大学緩和ケア診療部非常勤診療医長

この連載について

がん難民をなくすために、緩和ケアに専門特化した自院完結型の連携医療に取り組む

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