医療法人社団 杏順会 越川病院  理事長・院長  越川貴史 氏
連載がん難民をなくすために、緩和ケアに専門特化した自院完結型の連携医療に取り組む

#06 病院経営でいちばん重要なのは、職員の雇用をしっかりと守ること。

一般病床12床、緩和ケア病床34床の46床で7:1の看護体制を敷き、緩和ケアと在宅支援に取り組む医療法人社団 杏順会越川病院。越川貴史院長は、行き場を失った終末期の「がん難民」をなくしたいという思いから、経営コンサルタントなど外部のサポートを一切借りず自らの手で、自院完結型の連携医療の経営モデルを作り上げた。 「緩和医療は急性期医療です。」という。緊急の患者には越川院長自らスピーディーに入院調整を行い、95%の病床稼働率を維持している。独自の緩和ケアの取組みを越川院長に聞いた。 (『ドクタージャーナル Vol.11』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

スタッフを守る

病院経営でいちばん重要なのは、職員の雇用をしっかりと守ることですね。職員を守れなければ患者さんも守れません。

それと赤字を出さないこと。それが私の信念です。そのためには、常に数字を把握して経営状態をチェックするのは当然ですが、スタッフを大事にしてベースアップや職場環境の整備を行い、少しでも帰属意識が高まるような病院経営を心がけています。

「この病院のためなら、この患者さんのためなら一生懸命に頑張れる」というスタッフが一人でも多くいてくれれば、それが強い病院経営につながると思うのです。単に数字を追いかけるのはなく、スタッフを継続的に教育し、患者さんやご家族への対応力を上げて行くことがいちばん大事だと思っています。

またスタッフ支援の一つに育児短時間勤務制度があります。

小学校就学前までの子を養育する職員が利用できるように、対象範囲を拡大したところ、結婚や出産を期に一度退職したけれど、その後子育てを終えて再び戻ってきてきれた看護師が何人かいます。

そうした取組みに対して「杉並区子育て優良事業者表彰 優良賞」を受賞しました。

時代が追いついてきた

時代のニーズは在宅医療にあると実感しています。

10数年前から緩和ケアの在宅支援に取り組んできたのも、当時、当り前と思われていたことに疑問に感じ、その疑問に対して当たり前の対応をしてきただけで、特別なことをしてきたつもりはありません。

先見の明とは思いませんが、近年における保険診療の在宅医療への強化は、私たちが取り組んできたことが間違っていなかったのだと実感しています。

新病院の建設構想も、高度に専門特化した医療の提供と病院経営を軌道に乗せるためには何が必要かということをきちんと分析して、関連する部署を立ち上げ、越川病院の緩和ケアの流れを作ったことが、実を結んだ結果と思っています。

新病院で小さくても強い病院経営を目指す

今の病院では病室の広さや設備的な問題もあり、より快適な療養環境や職場環境の整備のために、現在、杉並区内で別の場所に移転計画を進めています。

新しい病院の病床数は45床位の予定で、3/4が緩和ケア病床、1/4を一般病床とする予定です。これは通常とは逆の病床数です。

なぜなら一般病床で緊急の対応と急性期の症状マネジメントをし、症状マネジメントができた患者さんを緩和ケア病床に転床して、その後なるべく迅速に在宅支援をする。

緊急の受け皿を一般病床で行おうとしているので病床数を逆にしてあるのです。

経営的な側面からいうと、緩和ケア病棟のほうが在院日数を長くとれると利点もあります。

今回の移転計画の立案に際し、病床の稼働率や在院日数、人件費、予想診療報酬等、全ての条件を基に銀行も納得するほどの詳細な病院経営シミュレーションを作りました。

新病院では100%正看護師で、全体で70~80人が正規雇用になります。職員の生活を守るという意味でも、小さくても強い病院経営を目指すつもりです。

※編集部注 越川病院は、平成27年 9月に現在地に新築移転しました。

この記事の著者/編集者

越川貴史 医療法人社団 杏順会 越川病院  理事長・院長 

医療法人社団杏順会越川病院理事長・院長。 一般内科・消化器科 1995年日本大学医学部卒業、日本大学第三内科入局。2001年医療法人社団 杏順会 越川病院開設し院長に就任。2003年から国立がんセンター中央病院緩和ケア科研修生(5年間)。 日本緩和医療学会指導医認定、日本緩和医療学会認定医、東京慈恵会医科大学緩和ケア診療部非常勤診療医長

この連載について

がん難民をなくすために、緩和ケアに専門特化した自院完結型の連携医療に取り組む

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