ドクタージャーナル編集部
連載地域のかかりつけ医が担うこれからの認知症診療

#05 認知症の人は何で困っているのか。それを一緒に掘り下げて考える必要があります。

座談会出席者 木之下徹氏  医療法人社団 こだま会 こだまクリニック院長 本多智子氏  医療法人社団 こだま会 こだまクリニック 看護師 勝又浜子氏  厚生労働省老健局高齢者支援課 認知症・虐待防止対策推進室長 加畑裕美子氏 「レビ-小体型認知症介護家族おしゃべり会」代表 中野あゆみ氏 有限会社DOOD LIFE(高齢者住宅・訪問介護)代表 社会福祉士  ファシリテーター 元永拓郎氏  帝京大学大学院文学研究科臨床心理学専攻・准教授 司会 絹川康夫 一般社団法人 全国医業経営支援協会 代表理事 ※平成24年7月31日に開催。 出席者の所属、役職は当時のものです。 (『ドクタージャーナル Vol.6』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

認知症という言葉に打ちのめされてしまう

加畑: ところで、今の認知症の人々の現場では、早期診断、早期絶望の状況があります。

何故かと言うと、自分が認知症という言葉でガクッときてしまうのです。

認知症になっても、ある程度の生活を続けることは出来るのに、それが否定されるかのように、診断時の認知症という言葉に打ちのめされてしまうことが多いのです。

それでも家族は、その人の気持ちを引き上げないといけなし、大変な力が要ります。

年が若いと特に経済的な問題や子供の就学の問題など、明日からどうやって生きていくのかという問題が生じてきます。離職も覚悟しなければならない。

例えば、夫がレビー小体型認知症になれば、奥様はうつになってしまうこともあります。その支援が地域でも行政でも全く出来ていない。そういう現実の問題があります。ですから、そういった問題を同時にどうやって解決するのかが切迫した問題です。

木之下: 中村成信さんの手記「ぼくが前を向いて歩く理由(わけ)」の中でも打ちのめされた経験を書かれていますが、なぜ打ちのめされるのか、と言う話に関していえば、今はそういう文化だからと思わざるを得ない。

現代の社会心理的な環境が良いとは到底思えません。だれもがなるかもしれないのに、誰もが希望を見せるような一縷の望みが今は無い。自らみつけないといけない、というのがいまの現実だと思います。

認知症の本人が追いつめられた風景、そういった不全感や絶望感、さらにそれを乗り越え希望を見いだす過程を、同じような苦しみの中にいる他の認知症の人々に向けて、もっと本人が発信する場があって良いのではないかと思います。

更にいえば、本人からの発信を閉ざしてしまうようなことを、周囲がしてしまう現実も一方にはあります。逆に周囲の人々はその発信を支援しないといけない。

ちなみに「若年性認知症」と言う言葉がはやっています。一方、専門医の間で「老年性認知症」なる用語は否定されています。そのときになぜ「若年性認知症」は許容できるのかには、その理解に窮します。

だから、せめて若年認知症とするとか、若年期発症の認知症にするなどのことは必要かなあ、と思ったりします。当然、就労支援など、年齢特異的な部分はあるとは思います。また施策上の年齢切りの必要性はあろうかと。

ただ、ときどき、あまりに若年ということを強調するあまり、その際に流れる、背後にある意識に疑問を感じます。なぜ「若年」切りをするのか、という問題です。

認知症の人は「人」であるという前に、若年性も、老年性もない。年齢によって、その内面にある、その恐怖や絶望が違う、とは思えない。希望についても違うとは思えない。年を取ったから絶望は少ないのか。そんな風には思えません。老年のことも同じように想定してほしいと思うことがあります。

本多: 確かに最近は、いろいろなシーンで認知症についての発信が増えていると思います。

その結果、例えば認知症の人でも普通に話せるし、生活もできるのだ。という認知症の人への認識は変わってきていると思います。

そもそも「普通に話せる」と言っている段階で、すでにそれはスティグマですが。

しかし、多くが話題提供で終わっている事に違和感を感じることがあります。認知症の人は何で困っているのか。それをどう一緒に考えたら良いのか、という所まで掘り下げる必要があります。

(続く)

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