本人だけでなく
その家族も支えることが
小児在宅医療だと思っています

ひばりクリニック院長 高橋 昭彦

#05 小児在宅医療の現状と課題
〜10年間で7,675名も増えている医療的ケア児〜

在宅療養支援診療所として高齢者から小児、難病、認知症、緩和ケアまで幅広く地域医療に貢献する ひばりクリニックの院長 髙橋昭彦氏は、医療的ケア児の在宅医療に取り組む中で、重度障がい児の子どもを見守る母親たちのために、独自でレスパイト施設「うりずん」をスタートさせる。

それら地域の支援体制の確立に向けた高橋氏の活動に対しては、第10回 ヘルシー・ソサエティ賞や、第4回赤ひげ大賞(日本医師会)が贈られている。

(『ドクタージャーナル Vol.22』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
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小児在宅医療の現状

寝たきり患者等の家に医師が出向いて診療を行うのが在宅医療ですが、基本的には高齢者の在宅医療も小児の在宅医療もかわりません。

しかし今までは、小さい子どもは病気になっても、親が病院の外来に連れてくることができるので、小児の在宅医療は必要ありませんでした。

ところが近年、病院に来ることが困難な小児の患者さんも増えてきました。
重度の障がい児は人工呼吸器などの医療機器を付けていたり、胃ろうや痰の吸入のための装具やバッテリーなどで重装備になります。その状態で通院するのは非常に困難です。

そのような子どもでも、月1回とか定期的にかかりつけの専門病院で必要な診察は受けています。皆さん大変な思いをして病院に行くわけです。ですから多少の下痢とか微熱等の軽症で、気軽に専門病院に行くことは難しいですので、おっくうがったり、遠慮したり我慢してしまいます。

しかも、専門病院の数は非常に少なくて、例えば日光に住んでいる患者さんは一番近い自治医大に行くだけでも90分はかかります。中には我慢して風邪をこじらせ肺炎になってしまう子どももいます。

その時に私たちがかかりつけ医として駆けつけ、入院しないで済む程度の診療ができたら、子どもの健康状態を保つことも可能です。
もう一つは、訪問看護師さんやヘルパーさん、相談員さんなど地域の多職種の方が、病院の医師に電話で相談することは大変な困難を要します。そんな時には、地域で作っている在宅ケアチームの一員として、私たち在宅医が対応します。

さらに在宅医が関わらなければならないことに、自宅で最後まで生きたいという方の看取りがあります。子どもの場合は、病院で亡くなることが多いのですが、中にはがんの終末期などで、家で最後まで過ごしたいという患者さんもいます。その場合は、必ず在宅医が入っていなければならない。それは成人の在宅医療と同じです。
 

医療的ケア児の抱える課題とは。


― 医療的ケア児とは、生活する中で”医療的ケア”を必要とする子どものことをいう。近年の新生児医療の発達により、医療的ケアが必要な子どもが急増している。厚生労働科学研究班の全国調査によると、医療的ケア児数は平成17年の段階で9,403名だったが、平成27年では17,078名と、10年間で7,675名も増えている。
( ※厚生労働科学研究班「医療的ケア児に対する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携に関する研究」の中間報告より 平成28年12月13日) ―

医療的ケア児の抱える課題の一つは、社会参加が非常に阻害されてしまっていることです。

非常に外出しづらいのです。医療的ケア児の車いすは呼吸器やバッテリーを搭載していますから、特殊なリフトカーなどでないと乗れない。普通の車と違い高価ですから所有は難しい。しかも一緒に付き添ってもらえるヘルパーさんの確保の問題もあります。

外出できたとしても、周囲から理解されない。ある映画館では障がい者の人工呼吸器の音がうるさいと苦情が出たことがあります。彼らの姿が珍しいからでしょう。1人でなくて100人いたら、どうだったでしょうか。

このような世の中を変えていくためには、障がい者の人たちがもっと社会に出ていかなければならない。でもそれがなかなかできない。 
私は、障がい者の外出こそが、社会参加だと思っています。

もう一つは、最重度の障がいを持つ子どものケアをできる人は、お母さん以外にほとんどいない、ということです。

介護のためにお母さんは働くことができない。それまでの仕事を辞めると収入も激減する。24時間の介護で精神的にも追い詰められてイライラする。これはお母さんの責任でしょうか?

学校に入学しても常に付き添いを求められたりもします。18歳で卒業したとしても、今度はその先の行き場がない。就職できなかったらお母さんが家で面倒を見なければならない。多くの負担がお母さん一人に掛かってくるのです。

さらには、親亡き後の子どもの介護の問題が全く解決されていません。親御さんへのアンケートの結果でも、一番心配されているのがこのことです。社会全体で支援できるようにしなければなりません。

例えば、地域に18歳以上の人が暮らせるグループホームのような施設があって、そこで看取りまでできるようであれば、お母さんにとっては安心でしょう。

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(続く)

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高橋昭彦
高橋 昭彦 (たかはし あきひこ) 氏

小児科医。1961年滋賀県生まれ。1985年に自治医科大学卒業後、大津赤十字病院、郡立高島病院、朽木村国保診療所に勤務。1995年より沼尾病院(宇都宮市)在宅医療部長。2002年ひばりクリニックを開業。2006年に重症障害児の日中預かり施設「うりずん」を開所。2012年特定非営利活動法人うりずん設立。2014年第10回 ヘルシー・ソサエティ賞受賞。2016年に現在の地にひばりクリニックを新設移転し、病児保育かいつぶりを併設する。2016年の第4回赤ひげ大賞(日本医師会)を受賞。