本人だけでなく
その家族も支えることが
小児在宅医療だと思っています

ひばりクリニック院長 高橋 昭彦

#06 医療的ケア児が、地域と世の中を変えていく。

在宅療養支援診療所として高齢者から小児、難病、認知症、緩和ケアまで幅広く地域医療に貢献する ひばりクリニックの院長 髙橋昭彦氏は、医療的ケア児の在宅医療に取り組む中で、重度障がい児の子どもを見守る母親たちのために、独自でレスパイト施設「うりずん」をスタートさせる。

それら地域の支援体制の確立に向けた高橋氏の活動に対しては、第10回 ヘルシー・ソサエティ賞や、第4回赤ひげ大賞(日本医師会)が贈られている。

(『ドクタージャーナル Vol.22』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
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医療側の課題とは。

医療的ケアを必要としている子どもたちに関わる医師がまだまだ少ないことだと思います。小児在宅医療においてはさらに少ないです。ですから私は機会がある度に、この分野に関心のある医師が増えることを願ってお話ししています。

今、小児科医で在宅医療を行っている医師はごく少数です。理由は、これまでの小児科とは、病気の子どもに病院に来てもらい診察して帰ってもらうというのが一般で、小児科の在宅医療という概念がなかったからです。

一方最近では、内科等の成人の診療科の医師たちの多くが、在宅医療に取り組み始めています。

その医師たちが、高齢者だけでなく小児まで診てくれるようになると、小児在宅医療も進みます。実際にそのような医師も増えてきています。

今は小児科の先生よりも、内科などの成人医療の先生達のほうがより多く、小児在宅医療に取り組んでいるのではないかと思います。

難しいと思われがちですが、小児在宅医療は経験が大切です。経験を積めば慣れてきます。一人の小児在宅の患者さんから取り組んでもらえれば良いのです。誰でも最初は初心者からのスタートです。私もそうでした。そうやって徐々にではあっても経験を積み、小児在宅医療に取り組んでもらえる医師が増えていけば良いと願っています。

学生が在宅医療の研修に来ます。

ここ最近では、毎年自治医大の5年生が研修に来ています。また毎年1回、自治医大で3年生に在宅緩和ケアの講義も行っています。独協医大の研修医の先生が在宅医療の研修に来ることもあります。最近はそんな若い研修医の先生たちが増えてきています。若いうちに一度でも

在宅医療の現場を見ておくことはとても有意義だと思います。

特に当クリニックでは、「うりずん」も併設していますから、そこで医療的ケアを必要としている子どもたちの実際の姿を知ることができます。もともと子どもが好きな学生には、子どもたちと一緒に遊んでもらうこともあります。

その体験を通じて、この子たちも一人の子どもなのだと実感してもらうことが大事なのです。継続して接していると、子どもたちがゆっくりではあっても成長していることが分かります。その気付きを得るのです。

世の中にある無関心を、子どもたちが変えてゆく。

医師も社会の一員として発信してゆく必要はあると思いますが、是非医療に関係のない人にも発信していって欲しいと思います。そういった声が大きくなれば今の状況は大きく変わってきます。

何でこんな子どもがいるのか、という無関心は未だに多くあります。

「うりずん」では、スタッフがマンツーマンでお預かりしている子どもたちと一緒に、よく散歩に行きます。すると通りかかった地域の人たちが気軽に優しく声を掛けてくれます。

そうやって多くの人と触れ合い、多くの人が目にして、多くの人の言の葉に上る機会を作ることで、地域が変わっていきます。
彼らが社会を変えていってくれるのです。

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(続く)

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高橋昭彦
高橋 昭彦 (たかはし あきひこ) 氏

小児科医。1961年滋賀県生まれ。1985年に自治医科大学卒業後、大津赤十字病院、郡立高島病院、朽木村国保診療所に勤務。1995年より沼尾病院(宇都宮市)在宅医療部長。2002年ひばりクリニックを開業。2006年に重症障害児の日中預かり施設「うりずん」を開所。2012年特定非営利活動法人うりずん設立。2014年第10回 ヘルシー・ソサエティ賞受賞。2016年に現在の地にひばりクリニックを新設移転し、病児保育かいつぶりを併設する。2016年の第4回赤ひげ大賞(日本医師会)を受賞。