本人だけでなく
その家族も支えることが
小児在宅医療だと思っています

ひばりクリニック院長 高橋 昭彦

#07 障がいを持った人と一般の人たちが、理解して認め合い共生する世の中にしたい。

在宅療養支援診療所として高齢者から小児、難病、認知症、緩和ケアまで幅広く地域医療に貢献する ひばりクリニックの院長 髙橋昭彦氏は、医療的ケア児の在宅医療に取り組む中で、重度障がい児の子どもを見守る母親たちのために、独自でレスパイト施設「うりずん」をスタートさせる。

それら地域の支援体制の確立に向けた高橋氏の活動に対しては、第10回 ヘルシー・ソサエティ賞や、第4回赤ひげ大賞(日本医師会)が贈られている。

(『ドクタージャーナル Vol.22』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
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まだまだやりたいことが沢山あります。

一つ目には、障がいを持った子どもと健常児の子どもが一緒に遊び、お互いに刺激を受け合える統合型の保育園を作りたいと思っています。

医療的ケア児のお母さんは、ほとんど仕事に就くことができません。だから、安心して重い障がいを持った子どもを預けることができる保育園を作りたい。でもこの保育園は、障がいを持った子どもだけではなくて、健常児の子どもも一緒に預かります。

それは健常児にとっても良い効果が期待できるからです。一緒に過ごすことで、世の中には障がいのある子どもがいることや、障がいがあっても一緒に遊べることが分かります。その子どもたちが小学校に入った時に、友達が障がいを持っていても何の違和感も持たないでしょう。

大人になった時には、障がい者の人たちを理解できる社会人になるでしょう。これは一つのチャレンジです。

もう一つは、18歳以上の重度の障がいを持つ人が毎日通える施設を作りたい。現実にはまだまだ少なく、困っている人も多くいます。そういうデイサービスのような施設を作りたいと思っています。

さらには、家が必要です。お父さんやお母さんが子どもの介護ができなくなった時に、彼らが安心して生活できる家があることが重要です。彼らが最期まで生活できて、看取りまでできる家です。実はこのことが多くの親にとって最大の不安なのです。そこまで作りたい。それが私のライフワークだと思っています。

それら全てに関わってくる最重要のキーワードが人材育成です。看護師さんだけでは絶対に足りません。私どもでは、ヘルパーさんが、人工呼吸器の子どものケアまでできるように育成しています。人材が大勢増えてくれば、これからの医療的ケア児を取り巻く環境も大きく変わっていくでしょう。

人工呼吸器をつけた人達が、普通に働いている世の中を想像したらワクワクします。

障がいを持った人と一般の人たちが、お互いを理解して認め合い、共生できる世の中を作り上げていきたい。

最近は酸素ボンベをぶら下げて走り回るような活発な重症児もいます。スタッフが一緒について動かなければならないので大変です。昔では考えられないことで、医療が進歩した結果です。

そのような子どもの中には知的能力が高い人もいます。そんな子どもたちこそ、普通の保育園や学校に行って欲しい。そして普通に教育を受けたら、将来は仕事に就いているかもしれない。人工呼吸器をつけた人達が普通に働いている世の中を想像したらワクワクします。

子どもの脳は、可塑性といって柔軟に変化して新しい能力を身に着けていく力を備えています。手をかけて子育てをしていくと、私たちが思っている以上に成長することがあります。それを目の当たりにすることは、大きな驚きであり、心が躍ります。

現場では、こちらから声をかけても返してくれない子どもも多いのですが、いつか私が1回でも魔法が使えたら、その子たちと会話ができて、あの頃はこうだったとか、先生のダジャレはつまらなかったとか、たくさんの思い出話ができたら良いなと、思っています。

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高橋昭彦
高橋 昭彦 (たかはし あきひこ) 氏

小児科医。1961年滋賀県生まれ。1985年に自治医科大学卒業後、大津赤十字病院、郡立高島病院、朽木村国保診療所に勤務。1995年より沼尾病院(宇都宮市)在宅医療部長。2002年ひばりクリニックを開業。2006年に重症障害児の日中預かり施設「うりずん」を開所。2012年特定非営利活動法人うりずん設立。2014年第10回 ヘルシー・ソサエティ賞受賞。2016年に現在の地にひばりクリニックを新設移転し、病児保育かいつぶりを併設する。2016年の第4回赤ひげ大賞(日本医師会)を受賞。