三鷹あゆみクリニック 院長  高橋壮芳 氏
連載あえて治療をしないという選択ができることも、在宅医の条件だと思います。

#04 医療の世界では100%はなく、中間のグレーの部分が多い世界だと感じています

このエントリーをはてなブックマークに追加
在宅療養支援診療所と訪問看護ステーションを運営する、医療法人社団壮仁会 三鷹あゆみクリニック院長の高橋壮芳氏。医学部時代からの無医村に行く夢が紆余曲折して在宅医療に進むこととなり現在に至る。   在宅医療に取り組んでみて、「これこそ自分が目指していた医師としてのイメージでした。常に医師としての技量や資質だけでなく一人の人間としても試されます。大変な面もありますが、それ以上に在宅医療は楽しい。」 「ただ見守るという選択肢を患者さんや家族に説明できること。そしてご家族が何もしてあげていないのではないかと感じる不安やうしろめたさに寄り添える医師でありたいと願っています。」とも語る。 (『ドクタージャーナル Vol.10』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)

患者さんのわがままは信頼関係の証

医師にとって病院はホームグラウンドですが、在宅は患者さんのホームグラウンドなので、そこでは医師はいわばアウェイです。そこに抵抗を感じる医師もいるのではないでしょうか。

とにかく在宅診療では、患者さんはわがままを結構言います。病院の中ではまずそのようなことはないでしょう。

しかし私は、患者さんのわがままは信頼関係の証だと思っていますので、わがままは言ってもらったほうが良いと思っています。ましてや、在宅の患者さんの多くは高齢者で、私たち若輩は人生の先輩として敬うことを心掛けるべきだと思っています。

ですから当院では全医療スタッフに対して、患者さんとご家族に礼を失するような態度は厳しく戒めています。

あえて何もしないという選択

ある会合で聞いた、「治療をしないという選択をできることが良医の条件である。」という一人の医師の言葉に非常に共感を覚えました。治療をしない選択ができるかどうか。これは在宅医療を含めた医療の課題かもしれません。

医学の発展に伴い延命の技術は進みましたが、そもそも治療を行うことの必要性があるのかと疑問に感じる場面もあります。

基本的には患者さんに管一本付けないで、何もしないで臨終を迎えてもらうことが私の理想としているところです。

今までは点滴や胃ろうが当たり前のような風潮でしたが、はたして患者さん本人がそれを望んでいるのか。そのような時に、何もしないことが患者さんのためになる。何もしなくても良いと患者さんや家族に説明できること。

そしてご家族に対して、何もしないことに耐えられる安心感を与えられることが医師として人としての技量だと思うのです。そこに寄り添える医師であり人でありたいと思っています。

多様性が在宅医療の魅力

また最近では、胃ろうは悪で不要のような風潮もあります。しかし、家族にとっては最良の選択肢であったりすることもあります。在宅医療の現場では患者さんの状況に合わせてケースバイケースで考えなくてはなりません。パターン化して一律な対応をすることは不可能です。

総合的に考え関わっている方々と連携していく気概が在宅医療に関わる医師には求められるのです。そのパターン化していない、ありとあらゆる選択肢があるということが在宅医療の魅力だと思います。

私は医療の世界で100%はないと思っています。

「絶対に家には帰れない。」「絶対に治らない。」逆に「絶対治る。」とか、医療では絶対と断言できることは無いと考えています。

絶対と言える白や黒ではなく、その中間のグレーの部分が多い世界と感じています。実は診断が付かないことも非常に多い。

医師になったばかりの頃は、明確に診断がつかないというそのはっきりとしない世界が私には苦しかった。しかし、現在は本人家族と話し合って、このグレーの部分の中から70%上手くいく治療でも、30%しか上手くいかない治療でも本人やご家族と相談して選択することが可能です。

この多様性が在宅医療の魅力であり、その中から最良の選択をする手伝いができることに在宅医としての充実感を感じています。

(続く)

このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事の著者/編集者

高橋壮芳
高橋壮芳 三鷹あゆみクリニック 院長 

東京都出身。2002年名古屋大学医学部卒業。2011年三鷹あゆみクリニック開業。 在宅療養支援診療所として24時間連絡が取れ、適宜対応が可能な体制で、膝が痛くて通院できない、麻痺があり歩行困難で通院ができない、認知症で定期的な通院や体調管理ができないなどの患者さんから、癌の末期、在宅酸素、中心静脈栄養など様々な在宅医療のニーズに応えている。心理的に垣根が低く気軽に病気のことを相談できる窓口となり、患者や家族の希望を聞きながら、患者一人一人に適したオーダーメイドの医療を提供することを心掛けている。

この連載について

あえて治療をしないという選択ができることも、在宅医の条件だと思います。

連載の詳細

アカウント登録

話題のニュース

more