認知症介護研究・研修東京センター長  山口晴保 氏
連載山口晴保氏インタビュー:患者さんや家族のQOLを高めることが認知症の実践医療

#07 山口晴保氏「認知症であっても穏やかに暮らせるのであればそれでよい。」

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病理学研究、神経内科医、リハビリテーション医と特異な経歴を有し、30年以上にわたる認知症医療で、多くの臨床経験を積んできた認知症専門医で群馬大学名誉教授の山口晴保氏は、特に認知症医療の薬物療法における医師のエビデンス信奉に警鐘を鳴らす。 新著の「紙とペンでできる認知症診療術 - 笑顔の生活を支えよう」では、目の前の患者・家族の困難に立ち向かう認知症の実践医療を解説し、あらゆる分野の医師に認知症の診断術を理解・習得して欲しいと訴える。 (『ドクタージャーナル Vol.20』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

認知症の患者さんが幸せに人生を生きること

認知症の人をどうとらえるかが重要です。医学的には認知症は治らない病気です。

根本的な治療薬ができたら、多少の副作用があっても我慢して飲んでもらうことになるでしょう。

しかし今ある認知症薬は進行を遅らせるだけの薬です。

副作用を我慢してまで飲む薬でもないし、食欲がないという人に無理やり飲ませる薬でもないと思っています。

根本的な治療法がないのであれば他にできることは何か。

それは認知症の患者さんに人生を楽しく幸せに生きてもらうことです。穏やかに家族と円満に生きてもらうために関わるのが認知症医療の在り方だと思います。

さらには、認知症があってもその人が穏やかに家族と暮らせて、家族もそれほど困っていないのであれば、それで良いのではないでしょうか。

病棟においても、その人がそれほど迷惑もかけていないし、普通に治療もできているのであれば、別に認知症があっても良いのではないか。

認知症だからとにかく治療するということではないと思います。これからの認知症医療にはそんなスタンスも求められているのではないかと思っています。

認知症の患者さんを三次元で見ること

これまで病棟では認知症の人は歓迎されていませんでしたが、2016年4月から病棟で認知症ケア加算が取れるようになりました。

チームを作って認知症の人に適切な対応をすれば診療報酬に繋がるようになったので、これからは認知症に対応する医療機関が沢山出てくるでしょう。

しかし、そこで認知症をどんどん見つけて、とにかく薬を出せば良いというような画一的な認知症医療が行われたら、今度は困る患者さんが大勢出てくることになるでしょう。

医療やケアの現場では、認知症の患者さんを必ず三次元で捉えてほしいと常々言っています。

まず一つ目の次元とは認知症のタイプです。アルツハイマーなのか前頭側頭型なのか、それともレビーなのかという認知症のタイプです。

二つ目の次元は認知症の時期です。初期なのか中等度なのか重度まで進んでいるのかという現時点の認知症の時期の次元。

三つめの次元が発症年齢です。若年性なのか随分と高齢なのか。

この三次元の視点から、今この患者さんはどの状態に位置づけられるのか。そこに介護環境も加えて、その中でその患者さんにとっての医療・ケアの答えを見出してゆく。

アルツハイマーというと単にアルツハイマーの認知症薬を出すだけではなくて、患者さんの認知症を三次元的に考えて最も合った治療プランを立てることが大切なのです。

(続く)

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この記事の著者/編集者

山口晴保
山口晴保  認知症介護研究・研修東京センター長 

群馬大学名誉教授、認知症介護研究・研修東京センター長。認知症専門医、リハビリテーション専門医。 アルツハイマー病の病態解明を目指して、脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたって病理研究を続けてきた後、認知症の臨床研究に進む。認知症の実践医療、認知症の脳活性化リハビリテーション、認知症予防の地域事業などにも取り組む。群馬県地域リハビリテーション協議会委員長として地域リハビリテーション連携システムづくりに力を注ぐとともに、地域包括ケアを10年先取りするかたちで、2006年から「介護予防サポーター」の育成を進めてきた。2005年より、ぐんま認知症アカデミーの代表幹事として、群馬県内における認知症ケア研究の向上や連携に尽力している。

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