#02 自分に合わせた運動療法で腰痛が劇的に改善し、リハビリの重要性を実感する。
連載:「患者自身の自立」を促す運動療法で 「機能リハビリ」に力を入れる整形外科医
2020.11.02
いかに目の前の患者様に本当に役立てるか
銅冶院長:「医療現場の医師にとって一番重要なのは、目の前にいる患者様に、いかに本当の意味で役に立てるかだと思います。
たとえば、『痛みを抑えてほしい』と言う患者様に対しても、『本当に痛みを取るだけでよいのか? 根本から治して方がよいのでは?』と考え、最初の段階で、再発予防までの話をしっかり説明する必要があります。
場合によっては、一時的に悪化したように感じる事もあるかもしれませんが、そういったことも含めきちんと説明した上で、その患者様に本当に適した運動を見つけていく。
時間も手間もかかりますが、それを端折ってはうまくいきません。最初の段階の説明をきちんと行えば、大抵の患者様は、納得して、疾患の根本が治るまでの治療努力を自発的に続けていただけます。
そして、そのように自発的になられた患者様でなければ、痛みの根本を治すことが難しくなります。」
『運動療法』との出会いは自身の腰痛が発端
ところで銅冶院長は、なぜ『リハビリに力を入れる整形外科医』を目指したのだろうか。
銅冶院長:「父が内科医、叔父が整形外科医ということもあり、自然に医学の世界に進んでいました。
そして、勉強を続ける中で外傷に興味を持ち、その外傷患者が多く来る整形外科を目指すようになりました。
そんな医学生時代に、じつは私自身が腰痛を経験したのです(笑)。それで病院に行ったのですが、痛み止めを処方されただけでした。薬を飲めば、痛みは引くのですが、何かのキッカケで、また腰痛が再発するという経験をしまして非常に困りました。
どうにか、その腰痛を根本的に治すことはできないのかと、いろいろな治療法を自分で探し、試してみました。そんな中で出会ったのが、現在、当クリニックの治療法の柱のひとつである『運動療法』でした。
自分に合わせた運動療法で腰痛が劇的に改善しまして、リハビリの重要性を実感したのです。
痛みが出た時に対処療法としての投薬、薬だけでは抑えられない場合の手術、もちろんそれらも重要な治療法なのですが、疾患様の根本治療に役立つ医療というものがあることに気付かされたのです。」
『運動療法』とは
運動器リハビリテーションのひとつで、本来の運動機能を回復させることにより、患者の「自立」を手伝うための診療方法。
自己運動により、腰痛・肩こり・首の痛み・膝の痛み・肩の痛み・足首の痛みなど、全身の関節の痛みを取ることが可能といわれる。
その方法を要約すると、「姿勢と運動の検査により、患者の反応を見ながら、その患者に最も適したオーダーメードの運動療法を見つける」「運動療法や姿勢・動作指導を自宅などでしばらく実践するとともに、その反応により運動を調整する」というもので、「カラダの痛みは自分で治す」方法を患者が医師とともに探りつつ行うリハビリだ。
現在『お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック』を訪れる患者の6~7割が、この運動療法の治療を受けている。
運動療法の特徴
- その場で効果が実感できることがあり、分かりやすい。
- 自己運動で治療するので、毎日通院する必要がない。
- 姿勢の指導と動作指導を重点的におこなうので、再発を予防できる。
口コミ、紹介による増患
今でこそ、順調に集患できているという同クリニックだが、開院当初は患者数がなかなか増えなかったという。
銅冶院長:「開院から二年で患者数が増えたのは、運がよかったからです。
私がこのクリニックを開院する前に、『自分で治せる!腰痛改善マニュアル』という運動療法に関する書籍を出していまして、当初は、その読者の方とかが来院してくれました。
それで、その方々からの口コミや、たまたま運動療法がテレビに取り上げられる機会があり、それをキッカケに何度かテレビ出演や新聞・雑誌などに紹介されることになりました。
その後は、そういったものを見て来院してくださった方々の口コミや、他の医院からの紹介を中心に患者数が増えてきました。ホームページで運動療法に興味を持って、来院される方もおりますが、やはり多いのは口コミからの患者さんでしょうか。」
患者様が喜ぶより根本的な医療を提供する
病院より手軽な柔道整復師の競合で医院経営に影響を受けている整形外科もいるといわれる昨今。なぜ、同クリニックは口コミを中心に患者数を増やしているのだろうか。
銅冶院長:「まだ開院7年目ですし、それほど偉そうに語る気はありませんが、その上で、敢えて私の考えを言わせていただくとすれば、『やるべきことを、きちんとやる。』ということでしょうか。
当クリニックの場合で言えば、『患者様の痛みはもちろん、きちんとその根本的な部分を治療する』といことです。
私の考えの大本は『患者様に喜んでもらえる、よい医療を提供する』ということ。
業界的な状況や立地など、クリニックの経営にはさまざまな要素が絡み合いますが、患者様に喜んでもらえる医療の提供=『患者様にいかに貢献するか』ということが医療経営では一番大切なのではないでしょうか。」
医療の〝質〟を上げ続ける努力をすること
銅冶院長は、同クリニックの今後の展望をどのように考えているのだろうか。
銅冶院長:「分院を出したいとか、病院を大きくしたいというような、大それたことは考えていないですね(笑)。
これまでも、運動療法での治療を柱にしつつ、『外反母趾や偏平足、膝の痛みにより足の歩き方や立ち方が正しくないことが腰痛につながることがある』『足が悪いとリハビリに支障をきたす場合がある』と考え『足と靴の外来』を。
『腰痛には肥満が関わっていることがある』『膝の負担を軽くしたい』と考え『栄養療法』を。と、常に医療の質を上げる努力をしてまいりました。
ですから、今後も引き続き、『患者様に役立つ医療を提供する』という意味で、さらに〝質〟を上げていきたいですね。たとえば、従来の療法では症状の改善が芳しくなかった患者様の痛みを取る方法とか、多くの患者様に役立つものを、さらに増やしていきたいのです。」
『足と靴の外来』とは
靴や足底板などの装具を用いて、外反母趾・偏平足・足首の痛みなど、足のトラブルから解放する治療。
- 整形外科専門医が足の診断をして、靴や中敷の処方を出す。
- 患者の足の型をとり、一人一人にあった靴や中敷(インソール)を作製する。
足と靴の外来の特徴
- 整形外科学会専門医である銅冶院長のもと、安全かつ効果的な靴作りを行う。(銅冶院長は、米国の国家資格である足装具士[ペドーシスト]の資格を取得した、日本で唯一の医師でもある)
- 米国式足装具学(ペドーシクス)に基づき、足を生体力学的に評価。最適な靴や中敷(インソール)の形状および素材を決定する。
- 靴の作製は、足専門の装具会社である、浅草の東京ペドーシックサービス株式会社の義肢装具士が行う。
- 足の変形が強い場合、足に合っているかどうかを透明のチェックシューズで確認。