#01 患者さんの「不安」に寄り添い「安心したい」という思いに応える医療を常に心がける。

社会医療法人ジャパンメディカルアライアンスの歴史は、今を遡ること40年前に「救急こそが医療の原点である」という信念のもと、志を共にした日本医大卒業の若き4人の医師が6年の準備期間を置き、昭和48年に、病床数50の病院として埼玉県北葛飾郡杉戸町に医療法人仁愛会東埼玉総合病院を開院したことに始まる。 その10年後、昭和58年9月には神奈川県海老名市に海老名総合病院を開院し、平成15年に医療法人仁愛会から医療法人社団ジャパンメディカルアライアンスに名称変更した。  平成21年には複数の都道府県にまたがる法人としては全国初の厚生労働大臣認定の社会医療法人に移行し現在に至る。 (『ドクタージャーナル Vol.10』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
鄭義弘
医療法人社団ジャパンメディカルアライアンス(JMA)理事長、医師(消化器内科)。昭和61年東海大学医学部卒、東海大学医学部付属病院臨床研修医、平成8年医療法人社団ジャパンメディカルアライアンス(旧 仁愛会)海老名総合病院内科、平成10年海老名総合病院内視鏡室科長、その後同病院消化器内科科長、内視鏡センター長等を経て、平成16年医療法人社団ジャパンメディカルアライアンス理事、平成21年社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス副本部長、平成23年理事長就任。

常に患者さんが何を望んでいるかを考える

海老名総合病院は神奈川県県央地域(海老名市、綾瀬市、座間市)の機関病院として急性期医療を担っている。

その間一貫して「仁愛」の精神を基本理念として保健・医療・介護事業に取り組んできたという。「仁愛とは人を思いやり慈しむ心を意味します。

私たちはそれをさらに発展させ、各人生命の尊重と人間愛に基づき、医の倫理をわきまえ、常に医療の向上に努め、何人にも公平な医療サービスを提供すること、と捉えて実践してきました。」と鄭義弘理事長は語る。

- 鄭理事長は医療法人の経営に携わりながらも、あくまでも医師としての診療現場を大切にされていると伺いました。まず最初に理事長の医師としての思いをお聞かせください -

鄭氏:私の専門は消化器内科ですが、最初は小児科医を目指していました。昔から子供が好きで小児科医になろうと思ったのが医師を目指した動機なのですが、臨床実習で重篤な症状を抱えている子供たちを診ることに心が痛みとても耐えられませんでした。

自分には小児科医は向かないのかと悩んだ結果、最終的に消化器内科の道に進みました。

理事長となった今でも、私を強く希望される外来や内視鏡検査の患者さんがいますので、診療の現場は大切にしています。

今まで長年にわたり医師として積んできたスキルは絶対に維持していきたいですし、将来現職を退いた時には、訪問診療や在宅医療で高齢者医療に携わりたいという思いも持っていますので、私としてはあくまでも一人の医師であり続けたいと思っています。

また、医師としての立場で経営を担うことが私に与えられた責務とも捉えています。

診療の現場では、所謂、全人的な医療と言いますが、一番大事なことは常に人を診ることだと思っています。常に患者さんが何を望んでいるのかを一番に考えるようにしています。

例えば、私は肝硬変の患者さんにお酒を止めさせるのが得意で、実際に多くの患者さんはお酒を止めてくれます。その時に大事なことは、患者さんを頭から否定するのでなく、まず相手を認めること。そこから入っていけば患者さんは心を開いてくれます。

また、3日前から発熱していている患者さんに、「何でもっと早く来なかったのか」と言うよりは、まず「3日間も随分我慢しましたね。」と言います。

あるいは不定愁訴と診断されてしまうような場合でも、時間をかけてしっかりと話を聞きます。患者さんが何を望んでいるのかが分かれば適切な検査も行えますし、診察結果に異常が無ければ患者さんは喜んで帰っていきます。

その場合でも、単に「異常はありませんでした。」ではなくて、「異常がなくて良かったですね。」と一緒に喜んであげれば、患者さんは心から納得してくれます。患者さんとの信頼関係が作れないとせっかくの診療も活かされません。

患者さんが病院に来る理由は、勿論病気を治して欲しいからですが、更に掘り下げれば「安心したい」から来るのです。ここを常に心掛けていることが私の診療のスタンスです。

若い研修医には常に、必ず患者さんの眼を見て、専門用語や難しい言葉ではなく患者さんにわかりやすい言葉ではっきりと話をしなさい。人生の先輩である目上の患者さんにはきちんと敬語を使いなさい、と言っています。

ただ、私が見る限りでは今の若い先生方の多くは、昔に比べればはるかにその点はよく解っていて現場でも十分に対応できているように感じます。

また、最近ではチーム医療におけるリーダーとしての医師の役割を自覚している若い医師も増えてきているように思います。

経営判断では医療の質が最優先されるべき

- 鄭理事長は、平成23年に理事長に就任されたと伺っています。最初のころは病院経営に携わるつもりは無かったと伺っていますが、その経緯をお聞かせください。-

鄭氏:私は平成8年4月に、東海大学の消化器内科から出向で海老名総合病院に来ました。

当初は2年ほどでの移動希望を出していたのですが、縁あってそのまま当病院に残ることとなりました。実は私の前に移動者が出てしまい残らざるを得なかったのです。(笑)

海老名総合病院
海老名総合病院

その後、海老名メディカルプラザの院長や海老名総合病院の副院長を経て、平成23年4月に理事長に就任しました。

理事長就任の経緯ですが、前理事長が非常に実務能力の高い方で、5年間をかけて当法人の施設整備や経営基盤を作り上げられた後、これからは臨床の現場を熟知している者が経営を見るのがバランス的に良いということで、理事会において私に白羽の矢が立ちました。

私自身、医療法人の経営に携わることになるとは夢にも思っていませんでした。

当初は財務諸表の理解や行政との折衝などで苦労しましたが、他の理事や職員の方々の協力を受け、実際の経営面においても非常に良くサポートして頂きました。そのおかげで十分な時間を掛けて病院経営を勉強できたと今でも感謝しています。

医療経営では、医師と事務方双方の責任者が車の両輪のように補完、協力し合ってバランスを取って行うことが必要で、どちらか一方だけでは難しいと思います。

当法人の場合、私の他に副本部長が法人全体の経営を見ており、各施設長は医師として診療の質に最重点を置きつつ、理事としてそれぞれの施設の経営に携わっております。

医療機関ですから最終的な経営判断では医療の質の視点が最優先されるべきで、それは現場を知っている医師であり、理事長である私の役割でもあります。現状はグループ全体として上手く経営サイクルが回っていると思います。

この記事の著者/編集者

鄭義弘 社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス(JMA) 理事長 

医療法人社団ジャパンメディカルアライアンス理事長、医師(消化器内科)。昭和61年東海大学医学部卒、東海大学医学部付属病院臨床研修医、平成8年医療法人社団ジャパンメディカルアライアンス(旧 仁愛会)海老名総合病院内科、平成10年海老名総合病院内視鏡室科長、その後同病院消化器内科科長、内視鏡センター長等を経て、平成16年医療法人社団ジャパンメディカルアライアンス理事、平成21年社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス副本部長、平成23年理事長就任。

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。