#02 位置情報ターゲティングについて

街のクリニックにとって「どうやって、患者さんにクリニックにきてもらうか」ということは重要な経営課題だ。 本連載ではネット広告をリードするサイバーエージェントより生まれたMicroAd(マイクロアド)にて位置情報データを利用したクリニック特化型広告サービスCliNearの事業責任者を務める甲斐雄太さんにマーケティングの基本知識について伺った。(全4回)

1.前回のおさらい

前回記事では、クリニック市場傾向と医療広告における難しさがあること、オフライン広告とインターネット広告の特徴と費用の比較についてお話をさせて頂きました。今回はインターネット広告の中でも位置情報を使った広告を利用して“来院計測”まで行える配信方法についてお話させて頂きます。

#01マーケティング宣伝方法について

2.位置情報ターゲティングについて

位置情報ターゲティングとは、人の行動履歴をもとに広告を表示する方法です。広告業界ではジオターゲティングとも呼ばれています。

現在、クリニック様をはじめ、流通系のリアル店舗を持っているクライアント様などから直近注目されている広告手法の1つです。

前回記事でもご説明させて頂いたディスプレイ広告を用いて配信する仕組みとなります。

※ディスプレイ広告

webサイトやアプリ上の広告枠へ画像、動画広告やテキスト広告など表示する広告。バナーで表示されることが多く、「バナー広告」と呼ばれることもあります。

検索連動型広告とは違い、ディスプレイ広告では、まだ自分の病症に気付いていないなど、「気になっているけど、まだ検索までしない」潜在的な患者にアプローチし、幅広く認知拡大させることが可能です。

ジオターゲティングではターゲットユーザーの特定の場所(経度・緯度の指定)の位置情報を取得出来るため、例えば、地域に密着した広告やサービスの広告を近隣居住者に絞って配信し、ターゲットに対する認知向上を効果的に行うことが可能です。

位置情報の行動履歴をもとにオリジナルセグメントでターゲッティングすることが可能

3.位置情報の取得方法について

位置情報の取得方法に関しては、色々な方法がありますが、広告配信時に利用する方法は大きくは以下の3点がメインになります。

  1. IPアドレス
  2. GPS
  3. Wi-Fi

弊社では1-3の全ての方法で位置情報の取得が可能であり、位置情報の利用用途に応じて位置情報の取得元をご提案させて頂いており、クリニック様に関しては、GPSでの位置情報利用が多くなっています。

こちらの理由は次回連載で詳しくご説明させて頂きます。

クリニック様で利用が多いGPSの位置情報の取得方法は下記になります。 

位置情報の取得方法

GPSは、いまやほとんどの人が利用しているスマートフォンのアプリから位置情報を取得しています。

具体的には、新しいアプリをダウンロードした後の初回起動時に「位置情報の利用を許可しますか」のようなポップアップ通知が表示されると思います。

そのポップアップで「はい」を選択したユーザーから、利用規約とともに位置情報を取得している仕組みとなっています。

ちなみに常時起動している必要は一切無く、バックグランド上で起動していれば位置情報の取得は可能となっているため、取得条件のハードルも決して高くないのが特徴です。

4.ターゲティング方法について

ジオターゲティングの配信方法は、下記の図の通り2パターン可能です。

ターゲッティングは2つのパターンから選択

左側のように経度と緯度を指定し、その点を起点として半径〇〇といった形で任意で設定していく方法。

右側のように予め弊社にて位置情報をセグメント化しており、そのセグメントパッケージを利用する方法があります(下図)。

このように位置情報を駆使する事により、様々なアプローチが可能となっています。

上記を駆使しながら、実際のクリニック様ではどのように配信を行っているのか、その詳しい配信方法に関しては、次回連載の際に事例と共にお話しさせて頂きます。

5.来院計測について

ジオターゲティングの優れた点は位置情報の活用だけでは無く、“来院計測”が可能な点です。

「来院計測」が出来るようになった時は画期的でした。

オフライン広告では難しいとされていた、来院までの費用対効果の算出が可能となるからです。

来院計測

前回記事の通り、医療業界では電柱広告や看板広告などをご出稿されているクリニック様は多いと思います。

電柱広告の費用は1本の月額平均が5,000円~6,000円、看板広告は1ロケーション年間10,000円~40,000円+材料費が相場となっています。

もちろん自院の近くの駅で人が行き来する場所に電柱や看板広告を取り付けることで認知を促す事は有効的な手段ですが、では実際にその電柱の広告をどのくらいの人が見て、どのくらいの人が興味を持って結果来院に繋がったのかを可視化するのは現実難しいと思います。

このような調査をする事が出来ないまま「出来る限り効率よく広告をだして集客できている」と認識されている経営者様や広告代理店も多いのではないでしょうか。

ジオターゲティング配信の広告では、興味を持って自院のサイトをみてくれたか、そして実際に何人の新規患者様が自院に来院したのかがわかるのが特徴です。

あるクリニック様では来院した新規患者様向けにアンケート調査を行い、「ジオターゲティング広告経由で来院」と実際のアンケートベースでも来院に繋がっている事が判明しています。

6.配信後のレポーティングに関して

配信終了後や月次ベース等で⑤の来院計測結果を下記図のようなレポート形式でご提出もしています。

来店計測レポート

一般的なWEB広告のようなクリック数などにプラスして、「来院数」・「来院率」の数値を記載しています。

実際上記レポートを基に数年間継続で実施頂いているクライアント様がいらっしゃいます。

WEB広告はその広告効果を数値的に可視化出来る点が強みです。また、運用型広告と呼ばれるWEB広告では、その可視化した広告効果の目標値を設定して、広告配信の運用を行いながら目標とする広告効果まで最適化を行っていきます。

同様に、「来院計測」も広告効果を数値的に可視化する手法の一つです。一方で、「来院計測」には目標設定が難しいという側面が存在しています。

いわゆる立地条件やブランド力、集客力などリアルな要因も様々相まって、一律に平均的な目標値という値が算出しづらい点が特徴です。

1人当たりの来院単価をCPW(Cost Per Walk-in)と表記するケースが多く、まずは自院の来院単価を算出→レポートのCPW値を基に数値改善を繰り返す。

上記のように継続して実際の来院数を上げているクリニック様がいらっしゃいます。

その他にも位置情報技術を活用して居住地や勤務地といったデータの抽出も可能になっています。

広告出稿費用に応じて様々なレポートタイプをご用意しており、具体的なレポーティング内容に関しても次回連載時にご説明させて頂きます。

次回はクリニック業界における具体的なジオターゲティングの配信方法をご説明させて頂きます。

株式会社マイクロアドの基本情報

この記事の著者/編集者

甲斐雄太 株式会社マイクロアド 営業本部 戦略営業局 局長 

1989年生まれ。2012年外資系IT企業へ新卒入社。2015年に現在のマイクロアドへ入社。
SSP事業部・DSP事業部を経て福岡営業所へ異動。2018年福岡営業所長を経て2020年戦略営業局局長へ就任。CliNearの事業責任者も兼務。

この連載について

開業医のためのWEBマーケティング講座

連載の詳細

最新記事・ニュース

more

遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。