#01 マーケティング宣伝方法について

街のクリニックにとって「どうやって、患者さんにクリニックにきてもらうか」ということは重要な経営課題だ。 本連載ではネット広告をリードするサイバーエージェントより生まれたMicroAd(マイクロアド)にて位置情報データを利用したクリニック特化型広告サービスCliNearの事業責任者を務める甲斐雄太さんにマーケティングの基本知識について伺った。(全4回)

1.クリニックの集客事情と厳しい現実

クリニックの経営者や広告代理店から、「インターネット広告を使ったクリニック集客にはどのような方法があるのか」という相談が増えてきています。

これまでの広告と言えば、電柱広告やチラシ広告などオフライン広告が多く、インターネット広告は、クリニック検索メディアに純広告を掲載しているクリニックが多いのではないでしょうか。

ただ、人の動きが変化する情勢の中で今まで通りのプロモーションで続けると、本当に来てほしい患者さんに自院を認知してもらうチャンスを逃してしまうことが多くなるかもしれません。

特にクリニックは、コンビニの店舗数よりも多いというデータが出ており、同じ症状を扱っているクリニックが、同じエリアに数十店舗あることも少なくありません。

自院をより多くの人に知ってもらい集客するためには、意味のあるプロモーションを効率良く行う必要があります。

クリニックの広告出稿に関して、よくご相談頂くお悩みは以下の三点です。

  1. 医療広告についての専門知識がなく、掲載ハードルが高く感じられる
  2. クリニックで扱っている特定の症例に該当する患者のみに広告を配信したい
  3. 広告を出してみたが、集客に効果があるのか実感が沸かない

①医療広告についての専門知識がなく、掲載ハードルが高く感じられる

医療行為は生命や身体に関わるため、不当な広告により患者が不適当なサービスを受けた場合の被害が他の分野と比べ著しいことから、広告規制のため、厚生労働省が「医療広告ガイドライン」を策定しています。

そのため、広告掲載までの道のりが長く、医療広告に関する専門知識を持たない場合、ハードルが高く感じられる方が多いようです。

②クリニックで扱っている特定の症例に該当する患者のみに広告を配信したい

新聞広告や電柱広告などのオフライン広告の場合、特定の悩みがあるユーザーに限定して広告を打ち出すことはできません。

一方、インターネット広告は、対象となる患者に効率よく広告を配信出来ることから、近年注目が集まっています。

オンライン診療も広がりを見せる中で、より効率よく集客するため、戦略の見直しを図るクリニックも増加しています。

③広告を出してみたが、集客に効果があるのか実感が沸かない

「広告を出してはいるものの、その後の効果を計測できないまま、ただ広告費用だけがかさんでしまっている」というお悩みを抱えるクリニックは少なくありません。

理由の1つとして、新聞広告や電柱広告などのオフライン広告は、実際にどのくらい来院に繋がったか計測できないということが挙げられます。

一方、インターネット広告は、位置情報を使った配信により、対象のエリアにいるユーザーに対してピンポイントに広告を出すことができ、その後実際に来院したかどうか計測することが可能です。

それによって、広告費に対してどのくらい効果があったのかを可視化することが出来るため、インターネット広告で位置情報を活用した広告配信を検討される方が多くなってきました。

2.クリニックのマーケティングについて

最近ではクリニックのインターネット広告を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

広告宣伝費の年間推移をみると、インターネット広告は2010年頃から需要が伸び始めており、2020年3月に電通が発表した「2019年 日本の広告費」によれば、インターネット広告費がテレビ広告費を逆転するなど、ますます注目が集まっています。

媒体別広告費

3.インターネット広告のメリット・デメリット

インターネット広告の最大のメリットは、細かいターゲティングができることです。CMや屋外看板とは異なり、広告を見てほしいユーザーの年齢、地域、性別などを細かく設定して広告配信が可能です。

それ以外にも、費用対効果がわかりやすい点、申込みから掲載までが簡単で、手軽に広告を出稿できる点など、多くのメリットがあります。

一方デメリットとして、広告効果を最大化するためには、リアルタイムで計測される広告効果を見て日々改善を行う、運用作業が必要となります。運用作業には知識と時間を要するため、専門知識を持った広告会社に任せるのが一般的となっています。

4.様々な広告の特徴と料金比較

次に各広告媒体の特徴と費用を比較してみましょう。

【オフライン広告】

新聞広告

特徴:読者は年々減少していますが、新聞は依然として社会的信用度が高いメディアです。新聞広告は企業の信頼獲得が期待できます。

料金:約20,000,000円~(広告サイズ、地域、朝刊、夕刊などによって変動あり)

雑誌広告

特徴:新聞と同様に年々読者が減少しており、広告費は前年比に比べ91.0%と伸び悩んでいます。雑誌広告の特徴は、読者の性別・年齢・ライフスタイル・志向によってターゲットを絞り込むことができることですが、狙いがぶれるとその効果が弱くなるため、広告を掲載する媒体は慎重に決める必要があります。

料金:約1,600,000円~(掲載場所によって細かい料金設定あり)

テレビ広告

特徴:地上波テレビ広告も年間通してプラス成長で、前年比101.6%でした。日本はテレビの普及率はほぼ100%であるため、最も影響力の高いメディアだと言えます。

料金:約400,000~800,000円(東京キー局、15秒1回放映あたり)

電柱広告

特徴:屋外広告の中で"ダントツ"の低価格で長期的な訴求が出来ることが魅力。地域密着性が高く、商圏が限定的な広告主に適した広告です。

料金:約2,800円~/月額

【インターネット広告】

検索連動型広告

特徴:GoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索結果画面に表示されるテキスト広告。ユーザーが検索したキーワードに連動した広告が表示されるため、情報を主体的に探しているユーザーにアプローチすることが出来ます。

料金:1円~(キーワードによって、click単価が1,000円以上になることもある)

バナー広告

特徴:Webページ上で画像やアニメーションによって表示される広告。視覚的に表現することができるためイメージを喚起しやすく、文字で表現するテキスト広告に比べて、表現力・訴求力が高いという特徴があります。

料金:1円~(ターゲティングによってclick単価が100円以上になることもある)

新聞広告や雑誌広告、テレビ広告、電柱広告は、金額と契約期間がある程度決まっていますが、インターネット広告では、固定の金額や契約期間は決まっておりません。

そのため、それぞれのご予算に合わせた金額で出稿することが可能です。

5.効果について

前述した通り、インターネット広告はオフライン広告とは異なり、正確な効果計測が可能です。

新聞広告や雑誌広告、電柱広告を出稿した際、広告経由で何名の患者さんが来院したか、また集客単価はいくらだったのか把握していましたか?

あるいは、広告効果が高い時間帯や曜日、広告に関心を持ったユーザー像について調査されたことはあるでしょうか?

新聞広告や雑誌広告、電柱広告からの来院を正確に計測することは難しいため、集客単価も目安で出すことしかできません。また、広告効果が高い時間帯や曜日を調査したり、それに合わせて出稿内容を途中で変更したりすることは出来ません。

一方、位置情報を使ったインターネット広告では、広告を出稿して実際に何名来院したか、どのような人が広告内容に興味を持ってくれているのか、時間をかけずに可視化することができます。

そのため、特定のターゲットを効率的に集客し、きちんと広告効果を計測したいクリニック経営者の方には、位置情報を使ったインターネット広告がおすすめです。

次回は実来院や傾向値が分かる集客方法についてお話します。

株式会社マイクロアドの基本情報

この記事の著者/編集者

甲斐雄太 株式会社マイクロアド 営業本部 戦略営業局 局長 

1989年生まれ。2012年外資系IT企業へ新卒入社。2015年に現在のマイクロアドへ入社。
SSP事業部・DSP事業部を経て福岡営業所へ異動。2018年福岡営業所長を経て2020年戦略営業局局長へ就任。CliNearの事業責任者も兼務。

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