オンライン資格確認の導入状況と今後の動向

<本連載について>
オンライン診療・在宅医療・診療報酬などクリニック運営を取り巻く環境は変化しています。本連載では、開業医もしくはこれから開業する医師へ向けて、最新の医療制度や業界動向について専門家に解説していただきます。

2021年10月20日より本格運用が開始された「オンライン資格確認」。
2022年4月に実施された診療報酬改定では、初診・再診時に診療報酬に加算ができるようになったこともあり、各医療機関や薬局への導入が進みつつあります。
現状ではどれだけの施設でオンライン資格確認が稼働しているのか、更なる導入拡大に向けた関係省庁の動向についてご紹介します。

オンライン資格確認とは

医療機関(病院やクリニック、薬局など)は来院した患者が加入している医療保険情報を確認する必要があり、この作業を「資格確認」といいます。

これまでの資格確認では、医療機関を訪れた患者が提出した健康保険証から、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などを確認し、医療機関が保有する電子カルテ等のシステムに情報を入力する、あるいはスキャナーを通して情報を読み取る、という作業が必要でした。しかしこの方法では、受付業務の煩雑化や患者の待ち時間の増加、さまざまな課題がありました。

また、高額療養費の場合、保険者に限度額適用認定証の発行を求める必要があったり、患者が提示した保険証が資格を失効していた場合は失効保険証の利用による過誤請求や未収金が発生し、保険者が「元被保険者」である患者の医療費を負担するなどの問題がありました。

これらの課題を解決するために導入されたのが「オンライン資格確認」です。

オンライン資格確認では全ての国民の資格履歴を一元的に管理し、患者のマイナンバーカードのICチップや保険証の記号番号をもとに、加入している医療保険などを確認できるのです。

オンライン資格確認における本人確認方法は2種類あります。

  1. マイナンバーカードを提示された場合
    顔認証付きカードリーダーまたは窓口スタッフによる目視で顔認証、もしくは4桁の暗証番号を患者本人が入力することで本人確認をします。
  2. 健康保険証を提示された場合
    受付スタッフが保険証の記号番号などを端末に入力します。
出典:厚生労働省 「健康保険証の資格確認がオンラインで可能となります 【医療機関・薬局の方々へ】」
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000663427.pdf

マイナンバーカード・健康保険証のいずれも上記の方法で本人確認をしたうえで患者の資格情報を取得、支払基金・国民健康保険中央会が一元管理している資格履歴を照会し、患者の現在の医療保険資格の状況を確認します。

オンライン資格確認のメリット

オンライン資格確認を導入するメリットは、大きく以下の3つとなります。

  1. 保険証情報入力の手間削減
    マイナンバーカードを提示した患者の場合、オンライン資格確認の導入後は医療機関のシステムで最新の保険資格を自動的に取り込めるようになります。
    保険証を提示した患者の場合は最低限の保険証情報の入力が必要になりますが、以降は同じように資格情報を取り込むことができるようになり、入力の手間を減らせます。
  2. 資格過誤によるレセプト返戻の作業削減
    オンライン資格確認を導入すると、患者の保険資格がその場で確認できるようになります。
    そのため資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務の負担が減ります。
  3. 来院(来局)前に事前確認できる一括照会
    一括照会によって、患者が来院する前に予約患者の保険資格が有効か、保険情報が変わっていないかを把握できるようになります。

他にも、新規患者情報を登録する際に照会番号をオンライン資格確認等システムに登録することで、2回⽬以降は医療機関や薬局のシステムで管理されている患者情報と資格確認結果を紐づけられるようになるなど、メリットがたくさんあります。

オンライン資格確認の導入状況

厚生労働省の社会保障審議会の医療保険部会(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000942378.pdf)によると、2022年5月15日時点でオンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの申し込みは約13万施設。全体の約6割に上っています。

しかし、システム改修が完了しオンライン資格確認を開始できる準備ができている施設は約25%、運用を開始できている施設は約19%。医療機関・薬局ごとの導入状況では、医療機関では約13%、薬局の約32.8%でシステムが稼働中となっています。

診療報酬改定により一時的に導入数は伸びたものの、4月以降の導入数については伸び悩んでいる状況です。

厚生労働省は今度の導入目標として、2023年5月までに、概ねすべての医療機関・薬局に導入されることを目指しています。

出典:厚生労働省 第151回社会保障審議会医療保険部会(ペーパレス) 資料
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000942378.pdf

オンライン資格確認普及に向けての政府の取り組み

オンライン資格確認導入に必要となる顔認証付きカードリーダーは受注生産となっており、機器の申し込みから配送まで平均4か月は要します。

今年度中に概ねすべての医療機関・薬局においてオンライン資格確認を導入するという目標達成のためには、現時点で顔認証付きカードリーダーを手配していない施設が遅くとも2022年9月までにシステム事業者に発注を済ませていなければなりません。

この状況を受けて、厚生労働省は2022年度上半期にオンライン資格の導入加速化のための以下の集中的な取り組みを行うとしています。

  1. 現時点で顔認証付きカードリーダー未申込施設に対して
    ・個別施設への架電による働きかけや個別のダイレクトメールによる周知の実施
    ・地域単位説明会やシステム事業者を通じた働きかけ
  2. カードリーダー申込済でシステム改修工事が未完了の施設に対して
    ・導入状況を踏まえた個別メール送付の実施
    ・地域単位説明会やシステム事業者を通じた働きかけも含めた重層的な取り組み
  3. 改修工事は完了しているが運用を開始していない施設に対して
    ・個別メールにより運用開始日の入力を促す

さらに、2022年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf)において、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進が打ち出されました。

その中で、2023年4月から医療機関および薬局にオンライン資格確認の導入を原則として義務化を検討するとしています。

まとめ

  • オンライン資格確認導入により「保険証情報入力の手間削減」や「資格過誤によるレセプト返戻の作業削減」、「来院(来局)前に事前確認できる一括照会」が実現できる
  • オンライン資格確認のシステム稼働状況は全体の19%にとどまっており、導入促進施策が必要
  • 2023年4月以降のオンライン資格確認の原則義務化も検討されており、未導入の施設への働きかけを強めていく方針

オンライン資格確認をはじめとして、医療機関や薬局のICT化が急務となりつつあります。PHC株式会社では医療現場のICT化をサポートするためのサービスや製品を提供しております。

身近な医療のICT化を実現する製品として、外来診療にも在宅診療にも対応できるクラウド型電子カルテ「きりんカルテ」を提供しています。「キリンカルテ」は、これまでの電子カルテ導入にかかっていた高額な初期費用・月額利用料などのコストを抑え、クリニックのスマートな経営をサポートいたします。

医療現場のICT化にご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ホームページ:https://xirapha.jp/
電子カルテとしての基本的機能に加えて、予約システムや在宅医療での利用など豊富な機能を搭載。
これまでの電子カルテ導入にかかっていた高額な初期費用・月額利用料などのコストを抑え、クリニックのスマートな経営をサポート。

運営元:PHC株式会社
ホームページ:https://www.phchd.com/jp/medicom
所在地:〒105-0003 東京都港区西新橋2丁目38番5号
TEL:03-5408-7750
事業内容:糖尿病マネジメント、診断・ライフサイエンス、ヘルスケアソリューションの事業領域における開発、製造、販売、サービス

この記事の著者/編集者

PHC株式会社 メディコム事業部 デジケアプロダクト部  

クラウド型電子カルテ『きりんカルテ』及び、デジタルヘルスケアサービスの開発、運用・保守を提供。

するとコメントすることができます。

新着コメント

最新記事・ニュース

more

せっかく開業するなら、患者さまが集まるクリニックにしたいと思いませんか? 実は、クリニック経営が上手くいくかどうかは、開業した時点でもうほとんど決まっています。この連載では、特に重要な「立地」について詳しくご紹介します。正しい立地を知ることで、患者さまが集まりやすいクリニックになるでしょう。

クリニックのM&Aが注目される理由は、後継者不在の開業医が増えてきたという理由だけではありません。最近、「医療と経営の分離」という言葉も…