鈴木内科医院 院長  鈴木央 氏
連載鈴木央氏インタビュー:緩和ケアや在宅医療の目標とは、QOLを高め、生活を支えること

#04 鈴木央氏: 大田区在宅医療連携推進協議会の会長として、地域に在宅医療を広めるために活動する。

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「鈴木内科医院」は、地域の診療所として50年以上の歴史を持つ。 在宅療養支援診療所として地域の高齢者や認知症患者の医療を担う一方、日本でいち早く緩和ケアに組んだクリニックとして在宅緩和ケアを得意とし、地域のかかりつけ医として患者とその家族を支えている。 初代院長でもある父の鈴木荘一医師は、わが国における緩和ケアの草分けで、在宅ターミナルケアの先駆的な存在としても有名だ。 鈴木央院長は、内科医として外来診療を行いながら、在宅医療では、がんの疼痛管理を始め、経験豊かな知識に基づいた高度な緩和ケアを提供している。 鈴木央院長は、在宅医療は医療の頂点であり、ここには医療の原点があるように思うと語る。 (『ドクタージャーナル Vol.21』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)

まず何といっても、在宅医療は良い医療

国民の6割の方が在宅での療養を希望しているという厳然としたニーズもありますから、それを供給できる体制づくりは非常に重要だと考えています。

国の医療政策では今後病院を増やすことは難しい上に、特に都市部では今でも療養病床は不足しています。

ですから多職種との連携による在宅医療でそのような患者さんをケアし支えていかなければ、東京などでは医療が崩壊してしまうと思っています。

在宅医療はチーム医療ですから、様々な職種の人たちが協力して一人の患者さんを支えなければなりません。

そのために多職種が連携して在宅医療を推進するための協議会が大田区在宅医療連携推進協議会です。

当院のある大田区は若い世代の流入も多く人口も増えている地域ですが、地域の中で長く住まわれている住民も多く、その方々が高齢化しており、結果的に高齢者の方が多い地域になっています。

最も大事な取り組みとして、在宅医療とは病院を追い出された患者さんが受ける医療ではないということ、そして在宅医療は正しい選択肢の一つであることを、区民の皆さんに理解してもらうための活動をしています。

そのための啓蒙活動の一つとして、地域の商店会のイベントなどで無料の健康相談を行ったりしています。

地域の多職種の方々と一緒に活動に取り組とその過程で新しいチームができ、そこではさらにお互いがより理解を深め合うことができる。そんな地域連携の姿を目指しています。

認知症診療はかかりつけ医が担い手。

認知症の患者さんの不安を解消できるのはかかりつけ医です。

認知症の人は、記憶を失ってしまうという非常に不安な病態だと思っています。認知症は診断が確定することによって、ご本人はもとよりご家族も大きな不安とストレスを抱え込むことになります。

ですから不安を少しでも和らげてご本人が安心できれば、いろいろな症状がずいぶんと改善されると思っています。

そのためには、古くからその患者さんを良く知っている顔見知りのかかりつけ医に毎回診てもらうことが重要だと思います。同様に、ご家族も安心できるように、何でもかかりつけ医に相談できる体制があることも理想的です。

認知症の患者さんの場合、投薬による治療ももちろん大事ですが、治ることのない病気だけに、患者さんやご家族の生活の不便さをどれだけ解消でき、満足した生活を送れるための支援かできるかが非常に重要だと思っています。

画像診断のような専門的な部分は専門医に任せますが、認知症の方が抱いている不安を解消できるのは、地域のかかりつけ医でなければできないでしょう。

ご家族にとっては、長い行き先の見えない旅路を共に歩むかかりつけ医がいることが、大きな支援になると感じています。

認知症診療ではでかかりつけ医は、薬物療法だけではなく、ご家族のケアという大きな役割も担っているのです。

私が考える在宅医療とは、"生活を支える医療"といえます。寝たきりの方、退院したいけどできない方、自宅で看取りたい方などのニーズにお応えすることが、この地域における当院の役割だと考えています。

(続く)

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この記事の著者/編集者

鈴木央
鈴木央 鈴木内科医院 院長 

医師:内科、消化器内科、老年内科。専門:プライマリ・ケア、がん緩和ケア、在宅医療。一般社団法人 全国在宅療養支援診療所連絡会 副会長。大田区在宅医療連携推進協議会会長。日本在宅医学会理事。日本プライマリ・ケア連合学会理事。1987年昭和大学医学部卒業。1995年~99年都南総合病院内科部長。1999年~鈴木内科医院副院長。2015年鈴木内科医院 院長。 主な著書:『がんの痛みをとる5つの選択肢』、『医療用麻薬』、『命をあずける医者えらび-医療はことばに始まり、ことばで終わる-』他多数

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