#04 オンプレミスとクラウドの特徴から考える電子カルテの選び方

<本連載について>
多くの先生方が1日の中で最も長い時間触れられるクリニックにある機器といえば「電子カルテ」ではないでしょうか。現在はありとあらゆる種類の電子カルテが登場しています。 一方、選択肢が多くなったことで電子カルテ選びが複雑になったことも事実かと思いま す。 本連載では「これから電子カルテの導入を考えている先生」や「すでに電子カルテを使われている先生」あるいは「先生に代わって電子カルテの入力をされているクラークさん」に 向けて、電子カルテメーカーを取り扱っている各社からそれぞれの会社の特長、思いなどを リレー形式でご提供致します。(PHCメディコム株式会社 小川誠一郎)

この記事について

厚生労働省の医療施設調査によれば、診療所向け電子カルテの普及率は41.6%まで増えました。その後も年に数%の勢いで普及は進んでおり、今や電子カルテで診察を行う光景は珍しいものではなくなりました。インターネット上でも数多くの電子カルテベンダーが広告宣伝を行っており、導入検討にあたりその種類の多さに頭を抱える方も多いのではないでしょうか。

中でも、近年急増するクラウド型の電子カルテを採用すべきか、それとも院内にサーバーを設置するオンプレミス型の電子カルテを採用すべきか、で悩まれる先生も多く見受けられます。

こうしたトレンドを踏まえ、当社では今年4月にクラウド型電子カルテの事業を譲受し、オンプレミス型とクラウド型の2つのラインナップによるソリューション提案を開始しました。本稿では、2つのソリューションの特徴と強みについてご説明させていただきます。

土屋哲史
PHC株式会社メディコム事業部CX戦略部新規営業課課長。
名古屋商科大学大学院にてMBA取得。
医療ITベンチャーにて診療所向けシステムの営業、マーケティング、開発企画に従事。
その後、PHC株式会社に入社し、新規営業課の立上げに参画。
発足以来、500件以上のオンライン商談を実施しており、幅広いニーズに接している。

経験と実績豊富なオンプレミス型電子カルテソリューション

はじめに、2009年から当社が手掛ける医事一体型電子カルテからご紹介させていただきます。

医事一体型とは、医事会計の機能とカルテ入力の機能を一台の端末に併せ持った電子カルテのことを指しており、先生がカルテを記入しながらレセプトの内容をその場で確認できます。また、冒頭に院内に「サーバー」を設置することがオンプレミス型の電子カルテの特徴と記載しましたが、この「サーバー」は専用のサーバー室を用意するような大規模なものではありません。一般的なデスクトップパソコンを用いており、またサーバー自身も一つの端末として動作しますので場所を取ることもございません。よく見られるのは、受付スペースの一台をサーバーにあてがう構成ですが、これは万が一の故障時にすぐ保守メンテナンスの人員が駆け付け、対応を行うためのものです。(診察室に置くと、言わずもがな先生の診察に支障を来たしてしまうことになりかねません。)オンプレミス型は、あくまで院内にデータを保存している、そのためのシステム構成であるとご理解いただくと良いかと思います。

当社のオンプレミス型電子カルテの特徴は、①長年の実績に基づく豊富な機能、②お客様の運用に合わせられるカスタマイズ性、そして③数多くの医療機器・システムとの連携実績になります。

特徴①長年の実績に基づく豊富な機能

当社の電子カルテは全国で約25,000件のユーザー様に日々ご使用いただいており、日常の診療での実際の操作から得られたフィードバックを元に成り立っています。そのため、幅広い診療科でご使用いただける数多くの機能が搭載されており、その数は数百点以上に上ります。これはスムーズなカルテのご記入に限らず、あらゆる診療科でご使用いただけるように機能を拡張してきた結果に他なりません。例えば、小児科における体重換算や力価入力、あるいは整形外科におけるリハビリカルテの作成や指示など、外来診療において求められる機能を幅広く網羅しておりますので、安心してご使用いただくことが出来ます。

特徴②お客様の運用に合わせられるカスタマイズ性

次にカスタマイズ性ですが、いくら機能がたくさんあってもそれらを使いこなすことが出来なければ宝の持ち腐れになります。当社のオンプレミス型電子カルテは、先生の診療科や診察スタイルに合わせてお使いいただけるよう、カスタマイズの余地を残しております。たとえば「シート入力」というカルテの所見からオーダー、病名に至るまでを一枚のシート上に表示する機能がありますが、ここに表示する内容はお使いいただいているユーザー様毎に異なります。この中身について、導入前にコーディネーターと呼ばれる販売代理店のスタッフと一緒に打合せを行い、そこでお伺いした内容を元にコーディネーターが作り込んでいきます。もちろん、学習機能を活用した手入力にも対応しており、多種多様な入力スタイルに対応できるカスタマイズ性も持ち合わせています。

特徴③数多くの医療機器・システムとの連携実績

最後に、数多くの医療機器・システムとの連携実績ですが、これは当社が持つ長い歴史がもっとも活きる領域の一つとなります。画像ファイリングシステムや検査機器といったものからインターネット予約システム、自動精算機、最近ではオンライン診療システムなど、連携先は多岐にわたります。特に強調しておきたいのは、当社はその数だけではなく質にも自信がある点です。連携と一口に言ってもその内容は幅広く、表面的な連携では診療の質を高めることは出来ません。当社では各ベンダー様との技術的な連携だけでなく、稼働後の満足度向上までを見据えた独自の認証制度も設けておりますので、院内のIT化を安心して推し進めていただくことが出来ます。

こうした特徴を説明すると、「価格が高いんじゃない?」との質問を寄せられることがあります。たしかに、これまでは手厚いサポートの伴うフルパッケージのオンプレミス型電子カルテということで高価なイメージを持たれていたこともありました。しかし現在では、選べる料金プランをご用意し、必要な機能を選択しクリニック様のステージに合わせたシステム運用が可能になりました。

現場の意見を取り入れ、スピーディに反映するクラウド型電子カルテソリューション

一方、従来のオンプレミス型に加え、ここ数年で大きく導入数が伸びているのがクラウド型の電子カルテです。クラウド型のカルテはパソコンとインターネット環境があれば利用可能なため、使用する端末や場所の制限がありません。在宅医療での利用はもちろんのこと、省スペースで利用できることから、都心部など広いスペースの確保が困難なクリニック様でも多くご利用いただいています。オンプレミス型と比べて初期コストを抑えてスタートできるという点も、導入が増えている要因の一つです。

機能やデザインがシンプルで直感的に操作できる

また、機能やデザインがシンプルで直感的に操作できるというのもクラウド型の特徴です。通常、紙カルテからの移行やシステム入れ替えの際は、診療と並行して新しいカルテの操作を習得する必要があります。あまり操作が複雑だと習得に時間を要し、業務に影響をきたしてしまう可能性もありますが、クラウド型の場合は操作が非常にシンプルです。直感的に操作できるため、パソコンに慣れた先生であれば、マニュアルを見ながらご自身で操作を習得されることもあるほどです。もちろん、ご希望に応じて訪問による初期導入サポートなどのプランもご準備していますので、それぞれに合ったサポートを選択いただくことも可能です。

長く紙カルテで運用しており、あまり機能が多くても使いこなせないというクリニック様や、二世代で診療をされているクリニック様は、操作面でのハードルも低いクラウド型を選択することも増えているようです。

自動更新で常に最新の機能を利用できる

一方で、クラウド型にはオンプレミス型に比べると個別のカスタマイズ性に乏しいという側面もあります。特にインターネットブラウザ上で動くタイプの電子カルテの場合、どうしてもブラウザ側の制限に左右されてしまうことから、クリニック様ごとに表示する項目を変更したり、デザインを調整したりといった個別の対応はできないというのが一般的です。カスタマイズ性の高い、オンプレミス型の電子カルテに慣れていると、物足りなく感じることがあるかもしれません。

その反面、クリニック様からの意見を反映した機能追加や更新が随時行われるというのは、クラウドならではのメリットです。オンプレミス型の場合、機能更新作業はクリニック様での作業となるのに対し、クラウド型の場合は更新も自動。入替や手動によるバージョンアップ作業なしに、常に最新の機能をご利用いただけます。

近年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、院内システムのIT化が加速しつつあります。予約システムや在宅医療、オンライン診療システムとの連携といった機能を備え、導入コストも低いクラウド型の電子カルテは、変化する医療現場における選択肢の一つとなるのではないでしょうか。

今後の展望

こうした2つの異なる性質を持つソリューションを持つ当社では今後、シナジーの創出に向けた取組みを加速させていく予定です。コロナ禍により、診療現場とそこで活用されるシステムに求められる要件はさらに高度化・複雑化しています。当社ではオンプレミス型の持つ経験や実績とクラウド型の持つスピーディな開発スタイルを融合し、さらなる価値を届けられるように最善を尽くして参る所存です。

以上、当社が抱えるオンプレミス型電子カルテとクラウド型電子カルテの特徴について書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

電子カルテの導入は単なる紙カルテの電子化に留まらず、院内業務の効率化、ひいては患者様の満足度向上など、多方面に様々な効果をもたらします。その分、電子カルテ選びにも慎重になられるものと存じますが、当社ではご自宅や外出先からでも手軽にご覧いただけるオンラインデモを実施しております。百聞は一見に如かずですので、ぜひご興味を持たれた方は下記リンクよりお気軽にお問合せください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

PHC株式会社の基本情報

1969年に設立されたPHC株式会社は、糖尿病マネジメント、診断・ライフサイエンス、ヘルスケアソリューションの事業領域で開発、製造、販売、サービスをグローバルに行うPHCホールディングス株式会社の日本における事業会社です。

オンプレミス型電子カルテ「Medicom-HRf」
https://www.phchd.com/jp/medicom/clinics/mchrf

クラウド型電子カルテ「きりんカルテ」
https://xirapha.jp/

この記事の著者/編集者

土屋哲史 PHC株式会社 メディコム事業部 CX戦略部新規営業課課長 

名古屋商科大学大学院にてMBA取得。
医療ITベンチャーにて診療所向けシステムの営業、マーケティング、開発企画に従事。
その後、PHC株式会社に入社し、新規営業課の立上げに参画。
発足以来、500件以上のオンライン商談を実施しており、幅広いニーズに接している。

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