#05 医療タウンともいうべき地域の一大拠点となっている足利赤十字病院
連載:医師の視点で医師中心の医療経営戦略を推進し、地域医療に貢献する。
2020.05.25
役割分担で、地域完結型の医療体制を作る
地域医療連携の一環として、健診病棟の1階には休日夜間急患診療所が設置されており、足利市医師会が業務委託で、医師会の医師による当番制の365日診療を行っている。
軽度な急患は診療所で受診し、同病院は2次・3次救急に徹するという、患者さんの棲み分けをはかる取り組みが行われている。
これまで同病院では、救急を決して断らないという方針を貫いてきた。中軽症の患者は、地域のそれぞれの病院が受け入れている。そうした中で、足利赤十字病院には、重症患者だけを送ろうという地域の合意形成がなされるようになった。
最先端医療による救命措置は同病院が担い、回復、慢性期は地元の開業医が受け持つという役割分担で、地域完結型の医療体制をつくっていくというものだ。DPCの流れのなかで、開業医との連携は、今後ますます強化していくことが必須になってきている。
また周辺の他市から運ばれてきた患者さんも、回復期になったらその市の医療機関に戻すようにすることで広範囲な両毛地区内での医療を完結させられる仕組みが整えられていく。
地域医療支援病院になってからは、栃木、群馬をまたいだ両毛5市の医師会や市長とも地道に話し合い、その調整を進めてきた。敷地内にはヘリポートも設置され、ドクターヘリで運ばれてくる患者も今後増えていくことも予測されている。
巨大医療モール構想の担い手をめざす
栃木県、群馬県の両県を跨ぐ県境の病院として、足利赤十字病院のような500床規模の病院は全国でも珍しいといわれる。実際3割の患者さんが群馬在住である。
県境を越えて広く救急車を受け入れ、医療特区的役割を果たしている病院として、NHKのテレビ放送で紹介されたこともある。
いま欧米では、医療機関が充実している地域に疾病年齢を迎えた人たちが集まる傾向にある。将来的には足利も人が集まる地区として注目されるだろう。実際に患者の流れはそういう傾向にある。
足利赤十字病院では予防医療の意識啓発のために地域に開かれた病院を目指している。隣接する公園との間には塀が無い。地域の住民が自由に病院敷地に入ることができる。一方で、患者さんも公園を散歩できる。
ホスピタルモールの1階はパブリックスペースになっており、コンビニエンスストア、コーヒーショップ、レストラン、くつろぎスペース、24時間営業のショップもあり、ホテル感覚で誰でも利用できる。
同病院には、入院患者、外来患者、その家族、職員、業者などを含めると、一日4000人から5000人もの人が集まってくる、医療タウンともいうべき地域の一大拠点となっている。そこに巨大医療モール的構想が生まれてくるのも当然である。
「地域医療の理想とは、地域住民が生まれてから亡くなるまでの医療サービスを地域で完結できる体制を作ることです。両毛5市では当病院が中心になって作っていきたいと考えています」
心の通った医療を提供し成果を上げることが患者の心に響いて、患者が地域に喜びを情報として発信する。その繰り返しによって病院と地域の強い信頼関係が築かれていく。その好循環をいかに大きなものにするかが問われる。
小松本院長が牽引する足利赤十字病院が、最先端の医療を提供する巨大医療モール実現の起爆剤になろうとしているのは間違いない。