日本赤十字社 足利赤十字病院 院長  小松本悟 氏
連載医師の視点で医師中心の医療経営戦略を推進し、地域医療に貢献する。

#04 社会ニーズや地域に即して総合的に経営判断をおこなうことが重要です。

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2011年7月1日に新病院としてオープンした足利赤十字病院は、足利市を中心に佐野市、群馬県太田市、桐生市、館林市の両毛5市をカバーする地域の中核病院だ。 従来の病院建築の概念を変えた珍しい免震構造による6分棟型構造で、一般病棟の500床は全室個室である。風力発電機や太陽光発電パネルなどを備え、病院として初の国土交通省の省CO2推進モデル病院にも選出されている。 施設の斬新さもさることながら特筆すべきは小松本悟院長が推進する、医師の視点による医師を中心とした全員参画型の病院改革だ。患者満足と職員満足を両立させる病院を創ることを理念に掲げる。 (『ドクタージャーナル Vol. 3』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒) 

常に患者さんに目を向けた経営戦略が重要

小松本院長が就任してから最優先の課題としたのは、医療職の増員、診療科の増設とそれにともなう医師の増員である。医師については、人脈を活用したりして、34人の増員を果たした。結果、医師を含めて医療職の増員は合計128人にのぼった。

女性医師や看護師がより働きやすくなるようにも院内制度を改めた。人事考課制度を改定し、認定医、専門医、指導医、認定看護師、診療情報管理士の資格取得で給与もアップするようにし、職員にとって納得性の高い給与制度にした。

また、資格取得の支援を強力に推し進め「足利赤十字病院では、認定医や専門医の資格取得を支援してくれる」ということで、いろいろなところから医師が来てくれる。これも中長期的視点からの投資である。

小松本院長の強いリーダーシップの基、マクロ視点とミクロ視点のバランスのとれた舵取りで全員が同じ方向を目指す。

医師を経営参加に動かすには、ロジックの裏付けが必要である。そのため経営指標データの透明化をはかり、前年同月比を提示し、分析結果を理解しやすいようにして経営参加を促進している。

病院経営セミナーなどで学んだ事例を、すぐそのまま自院に取り入れようとする中小病院の院長に対しては、小松本院長はこう指摘する。

「他の事例が自院で成功するかどうかは判りません。地域の風土、患者さんの傾向、職員の考え方などを総合的に判断することが必要です。

経営戦略を立てるときは、自院にモディフィケーションして導入するようにしなければならないでしょう。原点は、その戦略が患者さんに本当に向いているかどうかです。

患者さんのニーズを優先させるようにする。経営戦略は、常に患者さんに目が向いていれば間違いありません。」

「医療制度や施設基準などは日々変わっていく。その変化についていく対応力が必要になります。患者さんのニーズや社会のニーズは次から次に高くなっていく。つねに手綱は緩められません」

同病院は、外来収入の推移や、近隣の病院の動向、社会のニーズを総合的に検討して、病院の進むべき道として地域医療支援病院を選択した。

3次医療に徹しつつ地域医療連携体制を構築

足利赤十字病院が所属する日本赤十字社は1877年(明治10年)の創立。グループ職員数は約6万人。全国に47支部があり、その下に92の病院が組織されている。

各病院は独自性を持った独立採算制であるが、2011年3月の東北大震災の際には、24時間以内に全国52赤十字病院のスタッフが現地入りしている。

「人間を救うのは、人間だ」を理念とし、結束の固さには揺るぎないものがある。足利赤十字病院が、地域からの期待に応えることを使命としているのも、日本赤十字社の理念を体現するものだ。

「当病院は63年間にわたって、足利市における地域医療に取り組んできました。職員1人ひとりが同じ使命感のもとに働くことが当院の姿勢であり、伝統でもあります。」

(続く)

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この記事の著者/編集者

小松本悟
小松本悟 日本赤十字社 足利赤十字病院 院長 

日本赤十字社 足利赤十字病院 院長 1969年慶應義塾大学医学部卒業、1979年同大学院医学研究科(内科学専攻)終了、1984年~86年米国ペンシルバニア大学脳血管研究所留学、1988年慶應義塾大学神経内科医長、1994年足利赤十字病院副院長、2005年東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修士課程医療管理政策学(MMA)コース修了、2006年慶應義塾大学医学部客員准教授(内科学)、2008年足利赤十字病院院長、2010年~慶應義塾大学医学部客員教授(内科学)

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