【開業医必見】患者さまに選ばれるかかりつけクリニックになるために

<本連載について>
新宿で高い人気を誇る「信頼と実績」のクリニックを経営するカリスマ院長が、自らの実体験をもとにクリニック経営のノウハウをご紹介。クリニックを開業するにあたって重要な立地選び、ネット広告、接遇マナー、採用・教育など、今の時代に即した経営戦略をお伝えします。

クリニック経営を安定させるには、かかりつけの患者さまを増やすことが必要不可欠です。しかし、競合クリニックがますます増えている今、かかりつけとして選んでいただくことがだんだんと困難になってきました。

よって今回は、かかりつけ医になるためのポイントについてご紹介していきます。

かかりつけを増やす必要性

ビジネスの世界では、経営を安定させるための指標として「ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)」が重視されています。たとえば、1回きりの利用で終わる初診患者さまのライフタイムバリューが5,000円だとしましょう。しかし、1年に1回の利用だとしてもその後20年間来院してくださるとしたら、ライフタイムバリューが100,000円になるのです。

初診失客率を減らしリピート率を増やすことによって、どれだけの影響があるのか分かりやすく示したものが下の図になります。

LTV

この図から分かる通り、来院数や診療単価が変わらなくても、かかりつけの患者さまを増やすことによって売上に大きな差が出るのです。

しかも、新しく患者さまを呼び込もうとすると宣伝・広告にかける手間や費用がかかりますが、かかりつけの患者さまの場合は来院していただくのに余計なコストがかかりません。コストダウンという観点から見ても、かかりつけを増やす必要性は明らかです。

信頼関係を築くポイント

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では、かかりつけ医として選ばれるためには何が必要なのでしょうか。

私は「信頼」が最も大切だと考えています。診療に納得・満足いただき、医師の腕や対応に信頼を寄せていただくことで、何かあった時に「あそこのクリニックへ行こう」と想起されやすくなるからです。

信頼されるには、正しい診断や適切な治療をするだけでは足りません。それは医師としての及第点に過ぎず、患者さまの立場からすれば「当然のこと」です。患者さま一人ひとりにしっかり向き合い、気配りを伴った接遇をすることによって信頼が生まれます。ここからは、患者さまと信頼関係を築くためのポイントを3つご紹介しましょう。

①アイスブレイクで緊張をほぐす

アイスブレイクは直訳すると「氷を溶かす」という意味です。転じて、会話の冒頭で緊張をほぐすための手法を指します。緊張を和らげ、コミュニケーションを取りやすい雰囲気を作るのがアイスブレイクです。

たとえば、自己紹介をする際に意外性のあることを言ったり、患者さまの服装を褒めたりといったことが挙げられます。話しやすく簡単な話題として、天気や地域のイベントなどに触れるのも良いでしょう。

②質問力と傾聴力で受け入れる

アイスブレイクによって信頼関係を築く土壌ができたところで、いよいよ診察に入ります。診察をする際、「はい」か「いいえ」で答えられる閉鎖型質問をしてしまいがちですが、これだと患者さまは詰問されているかのような印象を持ってしまいます。そのため、「どうされましたか?」などの開放型質問によって、患者さまが自由に答えられる場を整えることが大切です。

患者さまが話している間は、遮ることなくしっかり耳を傾けましょう。相手を受け入れ、寄り添う姿勢を示すことができます。

③納得できる説明で信頼を掴む

たまに、不調の原因や体の状態に関する説明をすることなく、一人で診療・診断を完結させてしまう医師の話を耳にします。当たり前ですが、これでは信頼どころか不信感に繋がりかねません。どれだけ適切な診断を下し、効果的な治療を提供したとしても、患者さまが納得できなければ信頼に結びつかないのです。

しっかりと説明をすることはもちろんですが、説明の仕方にも気をつけましょう。患者さまにとって、医学用語や病名などはあまり馴染みのないものです。そのため、簡単な言葉に置き換えて説明したり、場合によっては図や写真を用いたりして、きちんと伝わる説明を心がけてください。

良くない診療例

プラスのことをしていても信頼関係を築けるとは限りません。マイナスの要素も同時並行で減らしていく必要があります。そこで、多くの医師が陥りがちな良くない診療例についても見ていきましょう。

言葉遣いが乱れている

正しい言葉遣いは医師として云々というより、社会人として必須のマナーです。間違った言葉を使っていないか、軽薄な言葉遣いになっていないか、普段の会話でもよく注意することをおすすめします。

また、年下の患者さまや話しやすい患者さまが相手だと、砕けた口調になる医師も少なくありません。患者さまを不快な気持ちにさせないために、誰に対しても丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

話の流れがはっきりしない

行き当たりばったりな会話をすると、結論や話の道筋が見えずに患者さまが混乱してしまいます。「問診→診察→診断名→説明」という流れで話すことを習慣づけ、スムーズに話を進めることが大切になります。クリニックにおいて話の主導権を握っているのは医師です。患者さまが不安にならない話し方を常日頃から意識しましょう。

愛想が良くない

多くの接客業と同じように、医師にも社交性が求められます。会話の中で相手の印象を左右する要素の大部分は言葉の内容以外のノンバーバルな部分です。声の調子や表情なども、患者さまとの信頼関係に大きく関係します。

まずは笑顔でにこやかに接しましょう。挨拶をきちんとすることも大切です。また、積極的に患者さまと関わろうとする姿勢を示すことで、話しやすい印象を持っていただけます。

患者さま思いのスタイルが信頼に繋がる

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今回の記事では、具体的な診療方法について述べてきましたが、正解がこれだけというわけではありません。基本的な事柄は押さえつつ、自分に合った診療スタイルを確立しましょう。

まだ開業前ということであればいきなり開業するのではなく、クリニックで働いて自分の癖を知ることをおすすめします。病院とクリニックではいろいろと勝手が違うので、まずはクリニックで働きながら自分に合った診療を見極めると、その後のクリニック経営が上手くいきやすいのではないでしょうか。

ただし、その際に注意したいのが独りよがりな診療にしないということです。診療は患者さま有りきのものなので、患者さまのためになるかどうか、患者さまに喜ばれるかどうかなど、患者さまに軸を置いて考えましょう。それさえ押さえればおのずと信頼関係ができてきます。どんな時でも患者さまを思うことを忘れないでください。

この記事の著者/編集者

蓮池林太郎 医療法人社団SEC 新宿駅前クリニック院長 

1981年、東京都生まれ。5児の父。医師。作家。帝京大学医学部卒業。2009年、新宿駅前クリニック開業。2011年、医療法人社団SEC設立。クリニックの開業支援や経営コンサルティング、記事執筆、講演などをおこなう。著書に「競合と差がつくクリニックの経営戦略―Googleを活用した集患メソッド」(日本医療企画)、「患者に選ばれるクリニックークリニック経営ガイドライン」(合同フォレスト)など。

  医療法人社団SEC理事長
  新宿駅前クリニック 皮膚科 内科 泌尿器科 院長
  蓮池林太郎(はすいけりんたろう) 
  蓮池林太郎ホームページ:https://www.hasuikerintaro.com
  ――――――――――――――― 
  〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-11山銀ビル5F
  TEL:03-6304-5253   
  FAX:03-6304-5257   
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新宿駅前クリニックホームページ:https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info
  
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