#02 地域のかかりつけ医として街づくりに取り組む
連載:住民参加型の地域包括ケアを志向し、 コーディネーターとして住みやすい街づくりに尽力する
2019.08.23
地域包括ケアの先駆け、住民参加型のボランティアグループ「暖家の会」
平成元年に、地域ボランティアグループ「暖家の会」を設立しました。
「暖家の会」の名称には、暖かい家庭で最後まで暮らしたいという意味と、生かされていることへの感謝(ドイツ語のダンケ=ありがとう)の意味が込められています。
地域包括ケアの中には、医療保険や介護保険などの制度上で賄われるサービスもあれば、保険制度や行政サービスの狭間にあるサービスもあります。
その狭間にあるサービスを誰がやるのか。その時に私が考えたのは、資格を持たない普通の人たちによるボランティアグループでした。
本来の地域包括ケアとは、たくさんの人たちが、それぞれの役割を持って地域づくりに参加するということだと思います。
専門職でない普通の人に何ができるのか、そしてケアやサービスを受ける側にとってはどんなサービスが受けたいのか、という普通の人達の思いを中心に据えた時に、そこから色々なニーズが見えてきました。
「暖家の会」では、人が動くことでできるサービスにいろいろと取り組みました。
最初は、利用者さんが自由に楽しく過ごせるミニ・デイサービスから始めました。
主婦の会員が余分に作った食事を、老々介護のお宅と一人暮らしの男性に限定して提供する配食サービスや、時には訪問入浴サービスも行いました。
また、介護に関する勉強会やセミナーなども精力的に行い、地域に住民参加型の街づくりの種をまいてきました。
住民アンケート調査から見えてきたもの
平成4年に、この地域(成瀬台)にあった町田市の公用地に、コミュニティーセンタ―の機能も持ったケア施設を住民の手で建設しようという請願活動を始めました。
2ヶ月で4,500名の署名を集め、「自ら運営しケアの自給自足を目指すケアセンター」という住民参加型のスタイルを町田市に提示しました。
請願書では、運営を外部に委託するのではなく、ケアから食事サービスまで全ての高齢者ケアを地域の自分達でやらせてください。と訴えました。
当時は介護保険もまだない時代でしたから、私たちの提案も一つの形と認められ、市長からゴーサインが出て、調査費用の予算を確保してくれました。
私は、行政も含めたプロジェクト委員会で、「一部の人の意見で決めていくのではなく、全部私たちで行うので、アンケートを取らせてほしい。アンケートの回収からデータ分析まで全て自分たちで行います。」と訴えました。住民参加型のまちづくりを推進したかったからです。
そこで私たち「暖家の会」と自治会は、住民のニーズを引き出すために、4000世帯にアンケートを配り、2000件の回答を得ました。なんと50%という高い回収率です。
なぜアンケートを取ったかと言うと、住民参加型を貫くためには一人一人の意思が大事で、自ら手を挙げる方式が必要なわけです。いわゆる草の根民主主義的手法です。
アンケートにも工夫を加えました。例えばアンケート用紙のページ半分は無記名で回答できる設問にして、残り半分は各種の活動に参加できる人が氏名や連絡先も記入できるようにしました。そうすることで、回収したアンケートの中から、各種の活動への希望者をそれぞれに集めることができるからです。
集まった回答からわかったのは、ここに住み続けたいという永住志向の強さと、ケアセンターを利用したいという希望が90%もあったということでした。
アンケートの集計で更に驚いたことは、「あなたがサービスを提供する側として活動に参加しますか」、という問いに対して実に6割、1200名もの人が賛同してきたことです。