連載英裕雄氏インタビュー:在宅医療で培った資源を活かした地域のかかりつけ医を目指す

#04 地域におけるかかりつけ医の役割とは

新宿ヒロクリニックの英 裕雄院長は、「地域におけるかかりつけ医の役割とは、地域を健全にすること。健康な地域づくりを進めていくことだと考えています。ですから、疾病だけにとどまらず、患者さんを取り巻く社会問題にもアプローチせざるを得ないと思っています。」と語る。 在宅医療の延長線として外来診療を捉え、開業以来21年間、在宅医療で養ってきたノウハウやシステムを活かし、外来診療にも積極的に取り組んでいる。(全4回) (『ドクタージャーナル Vol.23』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)

地域におけるかかりつけ医の役割とは、地域を健全にすることだと思っています。

一般的には、外来とか往診、在宅など患者さんの状態像に合わせた対応をしながら専門医や病院、介護サービスなどと連携して医療を行うのがかかりつけ医の役割といわれます。

私はもう少し踏み込んで、地域におけるかかりつけ医の役割とは、地域を健全にすること。健康な地域づくりを進めていくことだと考えています。ですから、疾病だけにとどまらず、患者さんを取り巻く社会問題にもアプローチせざるを得ないのではないかと思っています。

その具体的な取り組みとして、無料結核検診ができないかと模索しています。新宿区は結核患者数が非常に多く、さらには隠れている結核感染者もいるからです。また外国人の検診の受診率が非常に低いので、それを改善したい。渡航外来者の健康診断や、慢性疾患の外国人への対応も考えていかなければなりません。

世の中から取り残された患者さんに対して何ができるのか。

20年以上在宅医療に取り組んできた経験から、在宅でかなりの対応ができるという実感は持っています。でも、それは恵まれた在宅医療がベースだったという思いもあります。今は介護サービスもあります。在宅医療を受け入れる家族もいます。患者さんにも、在宅医療の理解は進んでいます。

介護体制や生活支援体制ができている恵まれた状況下での在宅医療であれば、医師がある程度環境整備をして、緊急時にも対応することで、患者さんを地域で支えることが、かなりの割合でできます。

ところが、急に往診の依頼があって行ってみると、そこには介護体制も生活支援体制もない虚弱な独り暮らしの人が、世の中から取り残されたようにいるわけです。そういう人たちに、いきなり生活支援、介護体制支援、更には医療支援を入れて、全てを一気に引き上げることは、まだまだできません。

介護支援や生活支援の申請には時間がかかります。私たちが訪問して医療を行うことはできますが、患者さんの置かれた状況を見れば、そのままで帰ってくるわけにもいきません。

そこで、そのような人たちにはとりあえず入院してもらうということになります。入院している間に元気になれば良いですが、病院で治療をしてもそのような人の多くは元の状態にまでは改善しません。

地域でも安心して帰れる体制ができていない。そうなると地域に帰せない。だから帰れない。一方通行のいわゆる社会的入院になっていることが多いのです。ですから入院した人が、地域に安心して戻れるようにしないといけないと思います。

入院している間に、介護体制を整えるとか、入院先の医師たちとコミュニケーションを密にしながら、少しでも退院して戻れる可能性があるのなら、そのトライアルができるような取り組みも必要だと思います。

英裕雄

患者さんが地域に戻ってきた時に、一人でも安心して暮らせる体制づくりが必要です。

そのためには地域も努力し、病院とかかりつけ医の間での患者さんの情報共有などのコミュニケーションでも努力しなければなりません。例えば、少し症状が良くなったから一旦退院してみる、症状が良くないからまた入院する、というように、フレキシブルに入退院の対応ができると良いと思います。

病院が十分な治療のために長期の入院をさせている間に、生活機能が低下していってしまい、その結果、退院しても地域に帰ってくることが難しくなってしまう患者さんも多いのです。ですから、この地域で在宅医療を行うということは、患者さんを往診して、時には病院に入院させて、それで良かったでは済まされないのです。

その患者さんたちがもう一度社会生活を再開できる、或は社会生活からドロップアウトしないような取り組みが、初期対応も含めていろいろと必要だと考えます。

在宅医療機関は地域の人たちが抱える様々な問題のソリューションを提供できます。

在宅で養ってきたノウハウやシステム、体系を、様々な患者さんに対してどれだけフィードバックしていくかが大事だと思っています。その延長線が、かかりつけ医療だと思っています。

例えば、私がドライバーと一緒に訪問診療に行っていたのを無料送迎に切り替える。医師の手が空いている時間を有効活用し、往診で寄り添い事業をする。在宅医療で行っている皮膚科的なアプローチや整形外科的なアプローチを、外来診療でも試みてみる。訪問リハビリのスタッフに外来リハビリも行えるようにしてみる。

在宅医療機関は、そのような人的資源や医療資源を有効活用することで、地域の人たちが抱える様々な問題のソリューションを提供できるのではないかと考えます。

人々が地域において社会生活を営むのに必要なアイテムを、必要とする人に必要なだけ提供することが求められていて、そのアイテムの一つに、訪問診療や訪問介護、外来診療、寄り添いがあると考えます。これからも、そのようなアプローチを続けていこうと思っています。

この記事の著者/編集者

英裕雄 新宿ヒロクリニック 院長 

医療法人三育会理事長、新宿ヒロクリニック院長。1986年慶応義塾大学商学部を卒業後、93年に千葉大学医学部を卒業する。96年に曙橋内科クリニックを開業し、2001年に新宿区西新宿に新宿ヒロクリニックを開業する。2015年に現在の新宿区大久保に新宿ヒロクリニックを移転、開業し、現在に至る。

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