#03 県外からも来院するリズム新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック

前回記事「睡眠医療の専門機関が増えていくことは社会の必然」に続き、白濱氏が「リズム新横浜」で目指す医療と、そのための体制や経営のシステム作りについて伺いました。

(記事内容は2020年取材日時点のものです)

新横浜に睡眠医療の専門施設を作る

睡眠医療は、いろいろなことを加味してしっかりとした診断を下していかなければなりません。当初から的確な検査と診断、診療が一貫してできる施設を作りたいという思いがありました。

場所についても睡眠医療の専門施設は、都心部に集中しているのではなく各地域に分散しているのが理想形だと思っていました。

新横浜という立地は、新幹線も止まるし空港にも直接アクセスできるというハブ的な場所と言えます。

まずは地域の患者さんのために必要な医療を提供し、将来的には遠方の方にも交通の便を活かして来院して頂けるようにしていきたいと考え、さらには寝具メーカーからもクリニックの方向性や趣旨に賛同を頂いたことで、現在の場所で開業することになりました。

外来の診療体制としては、睡眠を軸にした専門医療を行う当クリニックの趣旨に賛同を頂き、慶應大学、聖路加国際病院、東京医科歯科大学病院、虎の門病院、聖マリアンナ医科大学の先生方にそれぞれの専門の診療を担当勤務して頂いています。

患者さんは、県内はもとより、都内や先述のように静岡や山梨からも来られます。新幹線ということでは、地方から東京本社への出張のついでにということで、大阪などからも来院される患者さんも多数おられます。

リズム新横浜クリニック

ストレスを軽減させる院内環境にこだわる

患者さんがリラックスして検査や治療を受けて頂ける環境に一番配慮しました。

患者さんは疾患で傷つかれて来院されるわけですから、検査や治療行う施設であっても温かみのある院内環境が最も重要と考えました。クリニック内の配色も落ち着いたブラウンと黒を基調にしています。

待合室はホテルのように広々と取って、新幹線の待合スペースをイメージした窓際にある広く明るいカウンターテーブルには、診察待ちの時間を有効に使って頂けためにPC用電源やWi-Fiも設置し、ビジネスマンや主婦の方などに活用して頂いています。

特に最近は患者さんも多くどうしてもお待ち頂く時間が増えてしまいます。でも診察で待つのは当たり前というのではなく、少しでも患者さんの負担やストレスを軽減できないかという考えから工夫した結果です。

クリニック内にはベッドを備えた個室の検査・治療室、レントゲン室、睡眠時の脳波検査に使用する睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)も設置して、専門クリニックとして十分な機能を整備しました。

また良質な睡眠の提案を行うためにベッド、照明、香りなど理想的な寝室環境を作りこんだモデルルームも設置しております。

RESM新横浜内観

睡眠医療という明確な軸を打ち出す

なんといっても睡眠医療という軸が明確にある点が当クリニックの強みだと思います。

睡眠に関して検査から診療まで一貫して行える専門診療所として、各専門科目のドクターが患者さんを診ています。

それは例えば、睡眠障害でも不眠症、ひいては精神疾患に関係しているような患者さんにはその方面の専門医が診断を行いますし、レム睡眠行動障害の患者さんには神経内科の専門医が連携病院でMRIを撮って最終的な診断を行い、睡眠時無呼吸症候群であれば呼吸器内科の専門医が診断を行うというように、総合的に診断と治療を行えるということです。

さらに言えば、この分野に特化して診療を行える施設がまだまだ少ないということも一つの強みと言えます。

大規模病院と、地域で患者さんを診ておられるかかりつけ医の先生方の中間に位置して、双方の患者さんのために機能しているのが当クリニックの役割だとも思っています。

クリニックは専門機能が集結した「場」

現在軌道に乗っているとはいえ、クリニック経営は常に一番の悩みです。医院経営も一般の企業経営と同じで、ただ漫然と適切なことをしているだけでは経営維持するのは難しいと思います。

大事なことは自分が目指す医療を明確にして、自分の施設の立ち位置を見失わずに努力することだと考えます。そのための医療体制や経営のシステム作りも必要だと思います。自分の欲が先に立つと医院経営は難しいでしょう。

睡眠医療は、いろいろな専門領域に関わってきますので、各専門医を揃えなければなりません。

私はリズム新横浜の設立にあたって、まず睡眠医療に専門特化することを目指し、趣旨に賛同し勤務して頂ける専門医の先生方、施設や機器、資金を集めました。専門医の先生方はそれぞれ大病院で重鎮の方々でして、この点は非常に感謝しています。

目標を定め、そのために人脈を駆使して所謂「ヒト、モノ、カネ」を集めて形にしてゆく。それが苦にならない、むしろそれが好きな性格が良かったのかもしれませんね。

例えば一人のパーフェクトなドクターが全ての患者さんを診るとなると、それだけで他に何もできないでしょう。勉強する時間とか、専門施設としての運営などに時間を割くことが難しくなります。

専門医でありながら、経営者でもあるバランスを考えて、あくまでも「場」を作ることを最初からの目標にしていました。その意味ではこのクリニックは、睡眠医療施設の一つの在り方、ケースだと思っています。

そのせいか、最近では国内に限らず海外からも当クリニックの見学に多数の方が来られています。

白濱龍太郎

たかが睡眠、されど睡眠です。

あくまでも医学的なアプローチから良好な睡眠をとるための寝具の開発や、検査機器の補助具の開発などの監修を行っています。

待合室に置いてあるCPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)のチューブをサポートするスタンド器具などもそれで、現在特許申請中です。

人の睡眠パターンは個人ごとに違うので一概にこれが良いということが難しい。世の中には睡眠関連の商品も数多くありますが、中には高価なだけのものとか、粗悪なものも出回っているように感じますし、時には逆に体に悪影響を及ぼすものもあるように思われます。

ですからあくまでもエビデンスに基づいた医療の裏付けのある商品が理想だと思います。本来であれば病院に掛からず未病の段階で解決できればそれが一番良いわけです。

病気にならないために良い睡眠は必要です。たかが睡眠、されど睡眠です。

例えば病院のベッドは睡眠にとって理想的なものといえるでしょうか。病院のベッドは快適な睡眠よりは衛生面や機能性が最重要視されているのではないでしょうか。

しっかり眠るということは体の細胞を修復するという作用があります。睡眠の本来の機能とはそういうものです。その視点から見れば病院の睡眠環境が治療の効果を最大限に引き出すという状態にあるとは言えないかもしれませんね。

心地良い睡眠環境こそが重要

心身のケアで考えると、外見ではなく心地良い睡眠環境こそが重要です。

例えば最近では、仕事の疲れを取り翌日の仕事に最高のパフォーマンスを発揮するために快適な睡眠環境の整備に特化しているビジネスホテルなどもできてきています。実際にいくつかのホテルからの要請で睡眠環境作りのアドバイスも行ったりしています。

そのような意味では、病院も治療する場所ではありますが、これからは傷を癒すという観点から患者さんの睡眠環境にもこだわって良いのではないでしょうか。

スポーツ選手からの相談も多く頂きます。スポーツ選手の場合は時には治療も含みますがそれ以上に自身のパフォーマンスをマックスに持っていくための効果的な睡眠の取り方のアドバイスなどが多いです。

アジアでは優位な日本の睡眠医療

睡眠医療の専門施設が少ない現状を見れば、全国規模で専門クリニックを展開するという考えもあるでしょう。確かに施設というハードを作るのであればそれは簡単です。

しかし最も重要なのはスタッフも含めた優秀な人材をそろえるというソフトの部分です。それは決して易しいことではありません。

今はリズム新横浜の医療モデルをしっかりと温めながらより完成させたいと思っています。その先に、国内に限らず海外も視野に入れた次の展開があるかもしれません。求められる機会があればしっかりと応えていきたい気持ちはあります。

先ほども述べましたが、日本の睡眠医療のノウハウはアジア諸国において大きなアドバンテージを持っていると思います。医療に限らず事業としても大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。

クリニックの基本情報

この記事の著者/編集者

白濱龍太郎 医療法人RESM 理事長 

筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。同大学睡眠制御学快眠センター等での臨床経験を生かし、総合病院等で睡眠センターの設立、運営を行ってきた。それらの経験を生かし、睡眠、呼吸の悩みを総合的に診断、治療可能な医療機関をめざし、2013年に、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニックを設立。2014年には、経済産業省海外支援プログラムに参加し、インドネシア等の医師たちへ睡眠時無呼吸症候群の教育を行った。慶應義塾大学特任准教授、国立大学法人福井大学客員准教授、武蔵野学院大学客員教授、日本オリンピック委員会強化スタッフ、東京オリンピック(TOKYO2020)選手用医師、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員などを兼歴任。「ぐっすり眠る習慣」(アスコム)「誰でも簡単にぐっすり眠る方法」(アスコム)など著書多数。「世界一受けたい授業(日本テレビ)」「モーニングショー」(テレビ朝日)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日)などメデイアにも数多く出演。社会医学系指導医、睡眠学会専門医、認定産業医を有し、教育、啓発活動にも継続的に取り組んでいる。

現任
医療法人RESM 理事長
福井大学医学部  客員准教授
順天堂大学医学部 非常勤講師
北里大学医学部  非常勤講師
武蔵野学院大学  客員教授
日本睡眠学会評議員
日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ
日本サーフィン連盟(NSA)アンチドーピング医科学委員副委員長
国際交通安全学会(IATSS)特別研究員
横浜市港北区医師会常任理事
横浜市港北医療センター 副センター長
日本産業衛生学会職域における睡眠呼吸障害世話人
SRNG(Sleep Research Next Generation)  世話人
北東北睡眠医療研究会 世話人

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。