#02 私たちが目指す在宅医療は「動く総合病院」

在宅医療支援診療所 静岡ホームクリニックの院長で、医療法人社団貞栄会の理事長でもある内田貞輔氏は、在宅専門医でありリウマチ・膠原病の専門医でもある。 大学病院でリウマチ・膠原病の研鑽と在宅医療に取り組んできた後に、32歳という若さで在宅医療専門クリニックを立ち上げた。 内田貞輔氏は、自分たちが取り組む在宅医療を「動く総合病院」と位置づける。 強い実行力とリーダーシップで、さまざまな領域の専門医と連携しながら、地域の在宅医療を支え、多くの実績と信頼を積み重ねてきた。 2015年に静岡ホームクリニックを開設。2019年10月には医療法人社団貞栄会グループのクリニックとして、東京都港区に「三田在宅診療クリニック」を、同年11月には千葉県千葉市に「千葉在宅診療クリニック」を開設する。 さらには2020年秋に、愛知県名古屋市に精神科特化型在宅診療を専門とする「名古屋・精神科特化型在宅診療クリニック」も開設予定だという。 (『ドクタージャーナル Vol.33 』より 構成:絹川康夫、Webデザイン:坂本諒)

病院医療とは違う在宅医療の魅力

病院の医療が目指すものが「患者さんの病気を治す医療」だとすれば、在宅医療が目指すものとは「患者さんの人生を支える医療」といえます。

病院医療では、患者さんの病気を見つける、病気を治す、数値を良くするというような、病気の治療そのものに主眼が置かれていますが、在宅医療では患者さんの病気の治療だけでなく生活面や精神面、さらには患者さんの家族も含めた多面的なケアが必要とされます。

在宅医療で生活を送っている患者さんの多くは、病気の辛さだけでなく、いろいろな不安や悩みも抱えています。それは同居する患者さんのご家族も同じです。

実際に訪問診療の現場では、病気のことだけでなく、日々の生活に関する悩みや相談なども受けることが多くあります。

患者さんだけでなく、そのご家族ともしっかりとコミュニケーションを取り、患者さんご本人にとって納得のいく治療やケアを考え提供する必要があります。

時には病気を治すことより、患者さんが病気と上手く付き合ってQOLを維持した生活が少しでも長く続けられるようにすることの方が、重要だったりすることもあります。

患者さんが誇りと尊厳に満たされた人生を全うできるように、残された人生を最期の看取りまでサポートするターミナルケアも在宅医療の役割です。

患者さんの人生をより良いものとするために「医師として何ができるのか」

それを患者さんと一緒に悩み考えて行動していくことは、患者さんの人生を共に歩むということでもあります。

一人ひとりの患者さんに最期までしっかりと寄り添い、患者さんだけでなくそのご家族にも喜んでもらえる医療に従事できることは、医療者にとってやりがいであり喜びでもあります。それは、病院の勤務医時代には感じることのできないものでした。

それこそが、在宅医療の真髄だと思っています。

私たちが目指す在宅医療は「動く総合病院」

2025年問題に象徴されるように、これからの日本は経験したことのない超高齢化社会を迎えます。

  2025年には後期高齢者人口が約2,200万人に膨れ上がり、国民の4人に1人が75歳以上となり、それに伴う医療や介護などの社会保障費の急増という課題もあります。そんな時代背景から今、在宅医療が注目されているのだと思います。

私たちは、「動く総合病院」をコンセプトとして在宅医療に取り組んでいます。

高齢者の患者さんはさまざまな疾患を抱えています。ですから、在宅医療においてもさまざまな病気の患者さんに対応しなければならなくなっています。

そのため、診療科目も、内科、アレルギー科、皮膚科、リウマチ膠原病科、精神科、耳鼻科、外科、整形外科、泌尿器科、眼科(応相談)を標榜し、各診療科ではそれぞれの専門医が診療にあたっています。

また、専門医を入れた在宅医療のチーム医療化にも取り組んでいます。専門医がチームに関わることで、患者さんに対してより専門性の高い在宅医療を提供できるからです。同時に、チーム医療による情報や意見の共有化を通し、クリニック全体の医療のレベルアップにも繋げています。

その上、患者さんの急な要請にも365日、24時間いつでもご自宅に伺いますから、その点では救急病院と同じともいえるでしょう。

さらには、当クリニックではポータブルレントゲン、心電図、超音波検査、一般採血、呼吸機能検査、嚥下機能評価などの検査を、患者さんのご自宅で行うことができます。

この記事の著者/編集者

内田貞輔 在宅医療支援診療所 静岡ホームクリニック  院長 

在宅医療支援診療所静岡ホームクリニック院長。医療法人社団貞栄会理事長、医学博士。栃木県出身、2007年聖マリアンナ医科大学卒業、2013年聖マリアンナ医科大学内科学助教、2015年より静岡ホームクリニック院長、2016年11月に同クリニックを法人化し、医療法人社団貞栄会を設立。

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。