美容外科は儲かる?内科は失敗しやすい?開業科目のウソ・ホント
2022.05.17
最近ではYouTubeを始める医師がいるなど、何かと華やかなイメージのある美容外科。「ダウンタウンなう」というテレビ番組では「給料は全ての医師の中でもトップクラス」と紹介されました。実際に収入は多いのでしょうか。
一方、多くの方に馴染みがある内科。老若男女問わずお世話になっている方も多いでしょう。内科はクリニック数も多く、失敗しやすいと思われがちです。実態はどのようになっているのでしょう。
クリニックは科目ごとにさまざまなイメージを持たれますが、実態は掴みにくいもの。この記事では、各科目の特徴をご紹介します。
美容外科は儲かるのか
美容外科の収入は本当に多いのでしょうか。
一説には美容外科の平均年収は4,000万円から5,000万円ともいわれています。なかには、年収1億円を超える開業医もいるとか。
美容外科医が実際にどの程度の収入を得ているのか正確なデータはありません。しかし、都内の美容外科クリニックの求人では年収2,000万円以上のものが多く見られます。厚生労働省が令和元年に発表した「第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 」によると、勤務医の平均年収は1,491万円ほど。平均を大幅に上回っていることが分かります。
さらに所定労働時間内で勤務する傾向があり、プライベートと仕事の切り替えが行いやすいと感じている医師もいます。美容外科では緊急で行う治療も少なく、医師の負担が軽いのです。
美容外科はメリットばかりの診療科目なのでしょうか。
実は、美容外科医になるには必ずしも特別な資格が必要というわけではありません。しかし、日本形成外科学会では「形成外科の専門医を取得してから、サブスペシャルティとして美容外科診療を行う」ことを推奨しています。また、「美容外科の多くの手技は形成外科で学ぶべき手技の基に成り立っている」とも述べています。
つまり、形成外科の専門医になった後でさらに経験を積む必要があります。収入が多いだけあって、美容外科になるのは簡単ではないようです。実際、2018年に厚生労働省が発表した「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると美容外科医は全体の0.2%しかいません。
また、美容外科の背負うリスクは決して小さいものではありません。医師だけでなく、患者さんにも分かりやすい形で治療の結果が表れます。そのため、失敗が許されないのはもちろんのこと、医師と患者間の結果に対する評価がずれる可能性もあります。
実際、患者さんが望んだ効果が得られなかったり、手術痕が残ったりしたことなどが原因で訴訟されるケースもあるのです。美容整形における裁判事例はさまざま。誰に対してでも、どんな手術・治療内容でもリスクが隣り合わせなのが美容外科です。高いリスクを伴うからこその専門的な知識と技術が必要になります。美容外科が高収入である理由も、このことが影響しているのかもしれません。
参考:厚生労働省「第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 」
内科は失敗しやすいのか
クリニック経営にはもちろん医療の腕が必要です。しかし、それと同じくらい経営スキルも大切になります。この経営スキルが特に必要になってくるのが内科です。
国内のクリニックの過半数は内科であり、内科の競合は非常に多く存在します。競合が少なければ、経営スキルに頼らずとも医療の腕次第で成功することはあるでしょう。しかし、内科の場合は競合が多く経営スキルを無視することはできません。
勤務医と違い、開業医は医療の腕だけで戦うことは難しく、経営スキルも必要になります。経営スキルは、診療に必要な能力とは別物のスキル。一朝一夕では簡単に身に付きません。競合が多い内科では経営スキルに左右されやすいので、医療の腕だけだと失敗する可能性が高まりやすいのです。
一方で、内科ならではの良さもあります。内科の特徴の一つが診療範囲の広さ。患者さんが抱えるさまざまなお悩みに対応できるのは大きな魅力です。また、ホームドクターのように比較的患者さんと近い距離で活動することもできます。患者さんの笑顔に最も近い診療科目と言えるかもしれません。
その他の科目
診療科目は数多く存在します。東京都福祉保健局では内科だけでも7つに分けており、全体では43の科目に分けて情報をまとめています。その中から、4つの代表的な科目をご紹介します。
皮膚科
皮膚科は女医が多い傾向にあります。そのため、女医にとっては職場内に相談相手も多く、結婚や出産などの理解を得やすい科目かもしれません。
いつの時代も多くの方が興味を持つ美容。今の時代も美容への関心が非常に高いです。皮膚科は化粧品との関係性も深く、美容と密接な関係にあると言えるでしょう。
一方でアトピーなどの保険診療を目的に来院される患者さんも多くいます。経営方針に合わせ、医療機器の導入や敷地面積を考える必要があります。目標と患者層をはっきりさせ、クリニックの特徴を生み出していきましょう。
また、皮膚科は患者単価が低い傾向にあります。そのため、回転率の向上も目指す必要があります。
整形外科
リハビリを行うか物理療法のみにするか、2つの方針に分かれます。リハビリを行う場合、スペースや人員配置など支出は増えてしまいます。しかし、リハビリから得られる診療報酬も高いです。そのため、リハビリを行うかどうかで経営方針が大きく変わります。経営理念に合わせ、経営方針を考える必要があるでしょう。
患者さんは高齢者が中心になりますが、スポーツをやっている若者なども来院します。そのため、高齢者に合わせたクリニックにすることは大切ですが、高齢者以外も来院することも忘れないようにしましょう。いずれにせよ、歩行が困難な患者さんが多く来院するため、駅の近くや近隣に駐車場がある立地がおすすめです。
患者さんの身体を抱えるなど腕力が必要な場面も多く、体力に自信がある人におすすめな科目でもあります。過去にスポーツを行っていた経験がある方、開業医になってからもスポーツを行っている方も多く、趣味が仕事に活かされる場面も多いようです。
眼科
眼科の特徴は全ての年代の方々が異なった診療目的で来院することにあります。年代別に主な診療目的を分けると以下のようになります。
- 幼児:結膜炎
- 学生:コンタクトの処方
- 大人:眼疾患
- 高齢者:白内障
近年はスマホ・パソコンの利用も増え、目の病気にかかる人が増えています。老若男女問わず多くの方が来院されるため、適した立地は人の集まりやすい場所と言えるでしょう。駅の近くや商業施設などがおすすめです。
他にも、他科からの影響を受けにくいという特徴もあります。内科と耳鼻咽喉科であれば診療範囲が被る部分もあり、患者さんもどちらに来院するか悩むこともあるでしょう。しかし、目に関することであれば眼科であると多くの方が認識しています。また、眼科は専門性も高く他科の医師も簡単には踏み込めません。
最近はコンタクト販売会社と連携した眼科をよく見かけるようになりました。近年はコンタクトの需要が増加しており、今後も増加することが予想されています。そのため、コンタクト販売会社との連携を積極的に行うことで増収が見込めるでしょう。
耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科の特徴として、年間を通して子どもの患者さんの来院が多いことが挙げられます。そのため、ベビーカーを置く場所を設置するなど、子どもに合わせた工夫があると良いでしょう。立地は保育園、幼稚園の近辺がおすすめです。
子どもに親しまれるような方、子ども好きの方におすすめな科目ですが、大人の患者さんも多く来院します。午前中は大人の患者さんが、夕方は子どもの患者さんが多く来院される傾向があります。このように時間帯により患者層が異なるのも特徴のひとつでしょう。また、春になれば花粉症の患者さんも増加します。時間帯、季節により診療内容が変化するのです。
他にも、数は多くないですが内科的治療だけでなく外科的治療も扱うクリニックが存在します。内科的・外科的治療の両方を行うことで、学んできたことを総合的に活用し、技術力をさらに高めていくことができるでしょう。このことに魅力を感じ、耳鼻咽喉科を選んだ医師もいるようです。
科目に合わせクリニックの特徴を作る
美容外科に関してはやはり収入が多い傾向にあるようです。一方、内科に関しては失敗しやすいと言い切ることはできませんでした。その他の科目でもご紹介したように、科目ごとにさまざまな特徴があります。患者さんの年齢層や身体的特徴に合わせたクリニックを設計する必要があるでしょう。
患者さんは信用できる医師と治療を求めてクリニックに来院します。患者さんの信頼を得られる医師はどのような医師でしょうか。もちろん、コミュニケーション能力などさまざまな要因が関係します。しかし、自分の仕事に誇りを持ち、やりがいを感じていることも大切な要因ではないでしょうか。自分に合った科目を見つけ、患者さんに合わせたクリニックを開業してください。読者の皆さんの成功を願っています。