開業医必見!クリニック経営者が開業前後にしている集患施策10選

クリニックに限らず、開業後の宣伝・呼び込みに頭を悩ませる経営者は多いです。集患施策は大きく分けると開業前、開業後の2つに分類されます。片方だけに力を入れても集患は満足のいくものにはならないでしょう。どちらにおいても論理的な戦略を立て、患者さんが足を運びやすいクリニックにすることが大切です。今回は、経営上手な開業医がしている集患施策を10種類ご紹介します。要点を押さえ、集患のプロフェッショナルを目指しましょう。

開業前にやるべき集患施策

一般的な組織と異なり、医療系の組織では宣伝に関する法規制が厳しいことで有名です。しかし、開業前は比較的法規制が緩いと言えます。宣伝を行いやすい開業前に、地域の方々へ認知を促すのがおすすめです。

内覧会

内覧会は開業前に地域の方々に認知してもらい、地域に馴染むために行います。開業後は医療機器の宣伝に対する制限が多いため、開業前の内覧会を利用して宣伝するのが得策です。

多くの方に参加してもらうため、余裕があれば土日だけでなく平日に行うのも良いでしょう。

また、内覧会を行っても待っているだけでは人は集まりません。事前に近隣の方々へ周知するのはもちろん、当日はクリニック前で声がけをするなどして、積極的に呼び込みましょう。その際はスーツなどの堅苦しい格好ではなく、親しみやすいオフィスカジュアルに白衣、または自院のものであると分かるユニフォームだと好印象です。

ポスティング

自身のクリニックの認知度を上げるため、ポスティングを行いたいと考える方もいるのではないでしょうか。ですが、広告等で宣伝するにしても、医師免許を持つ人の名前、クリニックの住所、電話番号、診療日時、往診、予約、駐車場などに関する情報だけしか掲載できません。そのほかの情報に関しては法により制限されています。

掲載可能な情報から分かるように、ポスティングによる宣伝には限界があります。この厳しい制限の中でも認知を拡大する一つの手段が求人広告です。求人広告であれば制限も軽く、より多くの有益な情報を地域の方々に伝えることが出来ます。

その際、自院にとってプラスになる情報を掲載したいと考えてしまいがちですが、中には掲載不可能な情報があります。たとえば、他クリニックとの比較などです。ポスティングを行う際はそのような情報を掲載していないか注意する必要があります。

開業後にやるべき集患施策

開業後は開業前に比べて規制が強くなるため、集患がしにくくなります。しかし、集患施策が全く打てなくなるわけではありません。開業後でも行える集患施策も紹介しますので、参考にしてください。

ホームページの運用

情報化の進んだ現代において、ホームページはクリニックの顔と言っても過言ではない重要なツールです。患者さんの多くは、ネット上でクリニックのことを調べてから来院します。患者さんが初めてクリニックに触れるのは受付ではなく、ホームページなのです。クリニックの印象を左右する非常に大切な要素になります。ホームページの作成はクリニック経営において欠かせません。

コスト削減のため、中には自分でホームページを作る開業医もいますが、きちんと集患したいのであれば医療機関のホームページ作成実績のある専門業者に任せることをおすすめします。

集患に役立つホームページの条件は主に以下の2つです。

  1. 見た目が綺麗
  2. 情報の更新頻度が高い

専門業者に頼むことで、以上の2つ以外にもSEO対策などを行うことが出来ます。目に留まりやすいホームページを作るために、専門業者への依頼をおすすめします。

また、ホームページの情報は十分に揃えておきましょう。よく問い合わせられると予想できる内容は「よくある質問(FAQ)」のページを作りまとめておくと良いでしょう。問い合わせ件数が減り、スタッフの業務効率化に繋がります。

ポータルサイトの登録

アクセスが集まりやすいポータルサイトに情報を掲載するのもおすすめです。病院検索サイトやエキテンなど、ターゲット層に合わせてさまざまな媒体を検討してみてください。

ポータルサイトの例として以下のようなものがあります。

有料、無料、医療分野限定、多分野等々、さまざまな種類のポータルサイトが存在します。どのポータルサイトが情報掲載に適しているのか見極めなければいけません。目星を付けているサイトに問い合わせ、ユーザー層に関する情報を得ることが大切です。また、数ヶ月間お試しで登録し、自院の情報ページへのアクセス数やコンバージョン率(情報ページに訪れた患者さんがどの程度来院されたか)を計測したうえで、登録サイトを絞り込むのも良いでしょう。

予約システムの導入

コロナ禍を機に予約システムを導入したクリニックは少なくありません。集患だけでなく感染拡大を防ぐためにも予約システムの導入は重要です。以下に予約システムのメリットをまとめました。

  1. 患者さんの受診時間が明確になる
  2. 院内の待ち患者数が減少する
  3. スタッフのリソースを確保できる

一方でデメリットもあるので、こちらも合わせて把握しておきましょう。

  1. 患者さんが時間通りに来ないと無駄な空き時間が出来る
  2. 高齢者に馴染みがない

このように、予約システムにはデメリットもあります。しかし、院内の待ち患者が減ることやスタッフの仕事が減少するメリットは非常に大きいです。

アンケートの実施

クリニックをより良いものにするために患者さんの意見は必須です。アンケートを実施し、クリニックの改善に役立てましょう。

アンケートを集めようとしても簡単には十分な情報は集まりません。アンケートの内容、実施方法を工夫することで、患者さんに協力していただきやすいアンケートを作りましょう。

たとえば自由記述欄は少ない方が好ましいです。選択式の方が回答しやすく集計もしやすいことは言うまでもありません。しかし、自由記述欄に書いていただける情報が大切なのも事実。アンケートの最後に「その他の意見」を聞く場として自由記述欄を設けると良いでしょう。

質問の量については、2分以内に解答が終わるかを目安にしましょう。時間がかかりすぎてもいけません。

次に、実施方法についてですが紙媒体で行うのが良いでしょう。診察後に医師自らアンケート用紙を手渡し、会計までの待ち時間に回答をお願いすると、回答率が良くなります。メールやGoogleフォームなどを用いた電子媒体の方が優れている場合もありますが、クリニックにおいては紙媒体の方が効率よく回答を集められるでしょう。

接遇の振り返りとフロー改善

集患に欠かせない重要な要素が接遇です。接遇の品質向上と均質化のためには、定期的な振り返りが大切になります。アンケートで頂いた意見を基にフローを改善しましょう。

フローはすべてのスタッフが実行できるように、全員が納得できるものでなければいけません。もちろん周知は必須です。どんな状況でもスタッフがフローに基づいて行動できるようにします。イレギュラーなことが起こればそのたびにフローを改善します。随時修正することで、対応可能な領域を増やしていきましょう。

なお、フローの作成時にはスタッフの意見を聞くことを忘れてはいけません。働く全ての人が納得できる内容を作りましょう。

寄稿

寄稿をすることでクリニック名を宣伝することが出来ます。地域での認知度を上げるためにも積極的に行いましょう。寄稿の種類により自分で記事を書く必要のあるもの、ネタを提供するだけで良いものがあります。

他者にとって読む価値のあるものか分からない、他者に自分の文章を見せるのに気後れする方もいるでしょう。しかし、雑誌やサイトとして出せる内容になるまで相手方に協力していただくことも可能です。

また、寄稿は認知度を上げるだけでなく、人脈を広げることにも繋がります。恐れることなく寄稿にも挑戦してみてください。

地域との連携

地域内には同業者もいることでしょう。しかし、同じクリニック同士だからとライバル視するだけではせっかくのチャンスを逃してしまう可能性があります。同じ地域内には有益な情報が流れている可能性があります。そのような情報を見逃すことがないよう、良好な関係を築いておきましょう。

もちろん、同じ科目を専門とするクリニック同士であれば仲良くするのは難しいでしょう。しかし、科目の異なるクリニックであれば手を取り合うことも出来るはずです。クリニックが溢れ、競合の多い今だからこそ支え合う姿勢が大切になります。

そのためには医師会に入ることも効果的です。人脈を広げ、情報の獲得チャンスを増やしていきましょう。

地域行事への参加

地域内での認知度を上げる一つの方法は講演会を行うことです。自分で企画することも可能ですが手間もかかるため、自治体などの企画する行事に参加するのがおすすめです。しかし、外部から声がかかるのを待っていては、いつ声がかかるのか分かりません。地域行事に参加することで、自治体関係者などの知り合いを増やしましょう。自分から声をかけていく姿勢が大切です。

また、企画は自分で行い運営は自治体側に任せるなども選択肢に入れておきましょう。積極的に関わることで人脈増加とブランディングに役立てられれば、それらの行動が思わぬ仕事に繋がる可能性もあります。

患者さんを呼べるクリニックづくり

本記事ではクリニック経営に有効な集患方法を開業前後に分けてまとめました。クリニックの集患は他業種に比べて宣伝に関する規制も多く、人を集めるのは容易でありません。だからこそさまざまな集患方法を考える必要があります。

今回の記事では10種類の集患方法をご紹介しました。ですが、すべてを行う必要はありません。自院にとって実施しやすく、効果の高い集患方法を見極め、継続して取り組むことが大切です。あなたのクリニックならではの集患に取り組むことで、競合クリニックと差を付けてください。

今後も本連載では開業医の方向けに役立つ記事を発信していきます。「こういう記事を書いてほしい」といったご意見・ご要望がありましたら、こちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。皆さんからのお問い合わせをお待ちしています。

この記事の著者/編集者

ドクタージャーナル編集部   

各種メディアでのコラム掲載実績がある編集部員が在籍。
各編集部員の専門は、社会における機能システム、食と健康、美容、マーケティングなどさまざまです。趣味・特技もボードゲームに速読にと幅広く、個性豊かな開業支援チーム。
それぞれの強みを活かしながら、医師にとって働きやすい医療システムの提案や、医療に関わる最新トレンドの紹介などを通して、クリニック経営に役立つ情報をお届けします。

この連載について

開業応援コラム~クリニック経営の入り口~

連載の詳細

本連載は、開業医の方々の支援を目的としたコラムです。これから独立を考えている、あるいはクリニックを開業したばかりの医師の方々に向けて、クリニック経営に関するお役立ち情報を発信していきます。開業準備や医療設備、人事関係、集患など、コラムによってテーマはさまざまなので、ぜひ参考にしてください。

最新記事・ニュース

more

遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。

人工内耳の発展によって効果や普及率が格段に高まってきた現代。今だからこそ知りたい最新の効果、補聴器との比較、患者さんにかかる負担について伺いました。重度の難聴を持つ患者さんが、より当たり前にみな人工内耳を取り付ける日は来るのでしょうか。

本連載の最後となるこの記事では、首都圏で最大規模の在宅医療チームである悠翔会を率いる佐々木淳氏に、これからの悠翔会にとって重要なテーマや社会的課題、その解決に向けてのビジョンについて伺いました。

こころみクリニックは正しい情報発信とぎりぎりまで抑えた料金体系、質の高い医療の追求を通して、数多くの患者を治療してきました。専門スタッフが統計解析して学会発表や論文投稿などの学術活動にも取り組み、ノウハウを蓄積しています。一方でTMS療法の複雑さを逆手に取り、効果が見込まれていない疾患に対する効果を宣伝したり、誇大広告を打つクリニックもあり、そうした業者も多くの患者を集めてしまっているのが現状です。 こうした背景を踏まえ、本記事ではこころみクリニックの経緯とクリニック選びのポイントについて伺いました。

前回記事に続いて、首都圏で最大規模の在宅医療チームである悠翔会を率いる佐々木淳氏に、「死」に対しての向き合い方と在宅医が果たすべき「残された人生のナビゲーター」という役割についてお話しを伺いました。

人工内耳の名医でいらっしゃる熊川先生に取材する本連載、1記事目となる本記事では、人工内耳の変遷を伺います。日本で最初の手術現場に立ったのち、現在も71歳にして臨床現場で毎日診察を続けられている熊川先生だからこそお話いただける、臨床実感に迫ります。