クリニック経営に失敗する医師が開業当初から持つ3つの特徴

勤務医と開業医の仕事は大きく異なります。勤務医時代は腕を振るっていたにも関わらず、開業医になってからは上手く行かない方も少なくありません。クリニック経営は勤務医時代の経験だけでは乗り切れないのです。経営に関する知識を身に付け、経験を積んでいく必要があります。

経営に関する知識は、成功例だけでなく失敗例からも学ぶことが多々あります。この記事で紹介する失敗例を通して、より堅実なクリニック経営に繋げてください。

年々難化するクリニック経営

引用:経済産業省「将来の地域医療における 保険者と企業のあり方に関する研究会 報告書」

クリニック経営は今後さらに難しくなることが予想されるでしょう。経済産業省の発表した「将来の地域医療における 保険者と企業のあり方に関する研究会 報告書」によると、人口減少と高齢化が主な原因となり外来患者数は2025年を境に減少することは想像に難くありません。

一方でクリニック数は増え続けており、今後も増加することが予想されます。そのため、1クリニック当たりの患者数は減少してしまうでしょう。

失敗例に学ぶ賢いクリニック経営

クリニック経営に失敗する原因の中でも特に注意すべき3つを紹介します。

  1. クリニックの規模に見合わない高額な医療機器
  2. 不十分なスタッフの質
  3. 満足に練られていない集患戦略

なかには、開業前に起こりがちな失敗例もあります。開業後の経営方法だけでなく、開業前の準備段階から見ていきましょう。

1.クリニックの規模に見合わない高額な医療機器

  • ほとんど使用しない高額な医療機器を購入
  • 医療機器で院内が圧迫される
  • 医療機器の維持費用が莫大になる

クリニックの運営に必須な医療機器ですが、使用頻度の高いものから低いものまで多々存在します。なかには、使用する機会がほとんどないものも存在するでしょう。

「高性能な医療機器を揃えておけばより多くの患者さんの期待に応えることが出来る。患者さんのためを思ったらたとえ高額でも揃えておくのも悪くない」

このような考えに基づき、高額な医療機器を購入される医師も少なくありません。

しかし、そのようにして購入した医療機器は使用頻度も低く、むしろクリニックの経営を圧迫する可能性が高いです。例えば、整形外科におけるMRI。整形外科では使用頻度の高そうなMRIですが、実際の使用頻度はあまり高くありません。そのため、購入費用に見合った成果が得られず、足を引っ張る可能性があります。CTに関しては更に使用頻度が低いです。めったに使用する機会も無く置物状態になってしまうことが予想されます。

医療機器を購入する際は「患者さんに満足してもらえる医療機器」ではなく、患者さんに必要な医療機器」を選ぶようにしましょう。高額な医療機器を揃えたために、赤字になりクリニックが廃業してしまっては元も子もありません。患者さんにとって本当に困ることは、高性能な医療機器が無いことではなく、通い慣れたクリニックが無くなることなのです。

クリニックに置いていない医療機器での診察が必要な患者さんには近隣の大病院を紹介することも可能です。患者さんに合わせた臨機応変な対応も忘れないようにしましょう。

2.不十分なスタッフの質

  • スタッフの採用基準が不明確
  • スタッフの教育方法が確立されていない
  • スタッフとのコミュニケーション不足

経営に失敗してしまうクリニックでは、上記のいずれかに問題があるためにスタッフの質が不十分になっていることが多々あります。

スタッフの質が低いと患者さんからの評判も下がり、再診患者を増やすことは出来ません。スタッフの質の向上・維持にも力を注ぐべきでしょう。なかでも、事務スタッフの質はクリニックの評判に大きく関係します。患者さんが来院された際、初めて接するのも事務スタッフ、お帰りになる際、最後に接するのも事務スタッフです。患者さんにとって最も印象に残りやすいスタッフは事務スタッフだと言えるでしょう。とはいえ、実際に診察を行う医師が最も大きな影響を与えることは言うまでもありません。

口コミの評判があまりに悪く、批判や誹謗中傷も数多く寄せられるいわゆる炎上をしてしまったクリニックも存在します。医師・スタッフ全体の質を高めることでクリニックの価値を高めていきましょう。

3.満足に練られていない集患戦略

  • ホームページのSEO対策が不十分(検索された際、上位表示されにくい)
  • ホームページの内容が不十分
  • 広告の効果が薄い

現在では高齢者向けのスマートフォンも販売されるようになり、インターネット上で来院するクリニックを探す患者さんも増加しています。それに伴い、ホームページの重要性も高くなりました。

患者さんの目につきやすくするためSEO対策を施すことも大切です。さらに、患者さんが有益な情報を得られるよう内容を充実させることも重要になります。検索された際にヒットしやすい単語をタイトルに入れるなど、上位表示されやすいホームページを作成することは出来ます。しかし、内容が不十分であれば、患者さんの来院には繋がりにくいです。

連絡方法、診療時間、予約方法などの情報を分かりやすくすることで好感を持たれやすいホームページになります。分かりやすさがカギなのです。新規の患者さんが安心して足を運びやすいホームページを目指しましょう。

広告の打ち出し方も大切です。患者層を若者に絞っているクリニックではInstagramを利用した集患戦略も行われています。最近の高校生や大学生は遊びに行く場所、食事をする場所もInstagramで探す人が増えており、若者の目につきやすいのです。過去に行われてきた集患戦略に縛られる必要はありません。世の中の変化に気を配り、時代に合わせた集患戦略を打ち出しましょう。


関連:『開業医必見!クリニック経営者が開業前後にしている集患施策10選』

クリニック経営を成功させるために

経営に失敗するクリニックの特徴を3つに絞ってご紹介しました。クリニック経営は今後さらに厳しくなることが予想されます。今回紹介した内容は最低限気をつけるべきものです。他クリニックとの差別化を行うため、効果的な経営戦略を取ることをおすすめします。

例えば、患者さんとのコミュニケーション。以下の記事では、患者さんに好感を持っていただきやすいコミュニケーションについて扱っています。併せて読んでいただくことでクリニック経営をしやすくなるでしょう。

関連:『【実例付き】かかりつけが増える患者さんとのコミュニケーション』

また、クリニック経営における失敗といえば売上が立たない状態を指すことが多いです。しかし、クリニック経営の成功・失敗は収支のみで決まるわけではありません。笑顔の溢れる町にしたい、地域に貢献したいなど、クリニック経営の目標はさまざまです。目標により成功の形も異なるでしょう。

地域に貢献することを目標とする医師であれば、最低限の収入を得て地域の方々と仲良く過ごすことを成功と考えるかもしれません。そのため、成功の形もさまざまです。自身の成功に向け力を注いでください。

今後も経営戦略についてまとめた記事やその他開業医向けの記事を発信していきます。ご興味のある方はブックマークしていただき、お時間のある際にご覧いただければと思います。また、アカウント登録していただいた方向けに最新記事をお知らせするメールマガジンも好評配信中です。

この記事の著者/編集者

ドクタージャーナル編集部   

各種メディアでのコラム掲載実績がある編集部員が在籍。
各編集部員の専門は、社会における機能システム、食と健康、美容、マーケティングなどさまざまです。趣味・特技もボードゲームに速読にと幅広く、個性豊かな開業支援チーム。
それぞれの強みを活かしながら、医師にとって働きやすい医療システムの提案や、医療に関わる最新トレンドの紹介などを通して、クリニック経営に役立つ情報をお届けします。

この連載について

開業応援コラム~クリニック経営の入り口~

連載の詳細

本連載は、開業医の方々の支援を目的としたコラムです。これから独立を考えている、あるいはクリニックを開業したばかりの医師の方々に向けて、クリニック経営に関するお役立ち情報を発信していきます。開業準備や医療設備、人事関係、集患など、コラムによってテーマはさまざまなので、ぜひ参考にしてください。

最新記事・ニュース

more

遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。

人工内耳の発展によって効果や普及率が格段に高まってきた現代。今だからこそ知りたい最新の効果、補聴器との比較、患者さんにかかる負担について伺いました。重度の難聴を持つ患者さんが、より当たり前にみな人工内耳を取り付ける日は来るのでしょうか。

本連載の最後となるこの記事では、首都圏で最大規模の在宅医療チームである悠翔会を率いる佐々木淳氏に、これからの悠翔会にとって重要なテーマや社会的課題、その解決に向けてのビジョンについて伺いました。