【保存版】開業医になるには?開業12か月前から始める準備大全

医師としての経験を積み、「そろそろ次のステップに進みたい」と開業を考えている方も少なくありません。しかし、ビジネスや経営に関するノウハウはなかなか培えないもの。開業することに不安を抱える方もいるでしょう。

本記事では、開業1年前からの流れをまとめました。医療分野に集中し経験を積み上げてきた方だからこそ、つまずいてしまうことも多くあります。クリニックを開業する際に何に気を付けるべきか、開業後の経営のことも含めて考えていきましょう。

クリニックを開業するまでの流れ

開業の流れを大まかに示したのが上の図です。

本記事では、それぞれの段階において特に気を付けるべき点をまとめています。開業する際に、それらのことを知っているのと知らないのとでは大きな違いが発生します。

たとえば開業資金。知識が無いために、本来必要のない費用を払ってしまうかもしれません。場合によっては、数百万円単位で損をする可能性もあります。

開業する際はコンサルタントや業者の言葉を鵜呑みにせず、経営者としての知識も身に付けた上で、開業準備に臨みましょう。ぜひ、皆さんが実際に開業するときを想定しながら読み進めてください。

開業1年前にやること

1年前に行う開業準備が最も大切だと言っても過言ではありません。事業計画書作成や開業地選定などはクリニックの核となる部分です。一つひとつの段階を大切にしてください。

事業計画書作成

事業計画書というと難しく感じるかもしれませんが、どのようなクリニックにしたいのかという理念や目標などをまとめた書類のことです。そのため、事業計画書の作成は自分の思い描いている将来像を言語化し、他者にも分かるようにする作業とも言えるでしょう。

事業計画書は銀行から資金調達する際にも必要になります。ただビジョンを語るのではなく「収益モデルとして成立しているのか」、「この事業に投資したいと思えるか」という視点も持って事業計画書を作成してください。

開業地選定

開業地選定は非常に大切な要素と言えます。どんなに腕の良い医師であっても、開業地が悪ければ十分な集客は見込めず、経営不振に陥る可能性があるからです。事業計画書にまとめた理念や目標に合わせつつ、集客という視点も含めて選びましょう。

開業地を選定する際は、まず想定している患者層を基にエリアを決めます。その際に理念や目標を活かすことが出来ます。開業エリアが決まった後に、エリア内から最も良い物件を探すのが良いでしょう。

またクリニックを開業する際は、物件を借りるにせよ購入するにせよ、費用が莫大にかかります。開業資金を抑えたい場合は、居抜き物件を選ぶのもおすすめです。

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資金調達

開業する前に準備すべき資金は2種類あります。初期投資費用と運転資金です。よくある失敗パターンとして運転資金を甘く見積もりすぎることが挙げられます。開業当初は支出が多く赤字が続くため、十分に運転資金を用意しなければなりません。最悪の場合、開業後すぐに倒産に追い込まれてしまいます。

初期費用として5,700万円程が必要だと謳っているコンサル会社もありますが、一般的なクリニックであればそこまでの大金は必要ありません。初期費用は少なめにしておき、順調に進みだしてから規模を拡大していくのが良いでしょう。

運転資金は最低でも10~12か月分は確保しておいた方が無難です。開業科目や家賃にもよりますが、3,500万円程度を見込んでおきましょう。高いと感じる方もいるかもしれませんが、ランニングコストを失い倒産することに比べたら安いものです。

開業6か月前にやること

開業6か月前になると、抱いているイメージを具現化していく段階に入ります。どのようなクリニックにするのか、言葉や図を用いて形にしていきましょう。

医療管理の諸規定策定

総則、管理体制、管理者及び利用者の責務などについて規定を決めます。他にも個人情報保護規定や就業規則など、決めなければならない規定が数多く存在するのです。

クリニックは医療機関であり、一般的な企業とは異なった諸規定が必要になります。諸規定の策定は専門的な知識も必要となるため、クリニック支援の経験がある社会保険労務士事務所などに依頼するのが良いでしょう。

設計・施工

クリニックの設計は時間も手間もかかります。実際の設計は専門家に依頼することがほとんどでしょう。だからといって任せきりにしてはいけません。最初の打ち合わせ時に、しっかり希望を伝えきることが重要です。

クリニックのイメージを十分に伝えることが出来なければ、仕上がった設計書が満足のいかないものであることは想像に難くありません。このような場合、再度設計書を作り直すことになります。自分の時間も設計者の時間も奪ってしまうことになり、双方にとってメリットがありません。無駄な時間を割かずに済むよう、経営計画書も活用しながら必要な情報は事前にすべて伝えるようにしましょう。

なお、クリニックの内装は対象とする患者さんに合わせると良いでしょう。たとえばお子様連れが多い場合は、授乳室やおむつ交換スペースを設けると喜ばれます。医師やスタッフが働きやすい設計になっていることを前提としつつ、患者さんに馴染んでもらえる環境を作りましょう。

開業3か月前までにやること

開業3か月前までには、医療機器の選定を行います。専門的な機械を揃えるのですから、費用は安くありません。慎重に選びましょう。

医療機器の選定

医療機器は非常に高価で費用がかかります。医療機器に投資しすぎると初期費用が膨れ上がってしまうため、本当に必要な機器のみを選ぶことが重要です。今まで働いてきた病院と同様の設備を導入しようと考えてはいませんか?

勤務医や看護師が何人もいる病院と地域のクリニックでは対象層が異なるため、使用してきた機器が自身のクリニックでは必要でないことも多々あります。業者に勧められるままに機器を買うのではなく、必要なものだけを選んで買うようにしましょう。

最初は少なめに揃えておき、クリニックが拡大してから高度な医療機器を揃えるのでも問題はありません。初めから完璧な状態を目指すのではなく、少しずつクリニックを成長させていく方が堅実です。

また、医療機器は多くの場合、定価より大幅に安く仕入れることが出来ます。物によっては定価の半額で仕入れることも可能です。上手く交渉することで初期費用を抑えられます。そのために忘れてはいけないのは相見積もりを取ることです。他社と比較することで交渉材料を増やしましょう。

開業1か月前までにやること

遅くとも開業1か月前には、採用するスタッフを選考する必要があります。より良い環境を作るために手を抜けない部分です。

スタッフの採用

スタッフを選ぶ際は、長期間継続して働ける人材を採用すると良いでしょう。スタッフの採用には広告費だけでなく、面接や教育などの時間がかかります。医師はただでさえ忙しいでしょうから、何度も採用に時間を割くべきではありません。

スタッフの入れ替わりの少ない職場を作るためには採用基準を整備する必要があります。経営理念に基づき、独自の採用基準を作りましょう。雇用主もスタッフも人間のため、相性があります。どちらにとっても働きやすい職場にするため、理念に共感できる人を採用しましょう。

また、採用する人数は最小限に抑えるべきです。大きなクリニックでは看護師や事務職員が多数在籍しています。しかし、開業したばかりのクリニックには多数の人材を抱える余裕はありません。来院患者も増え、経営が軌道に乗ってから徐々にスタッフを増やしていきましょう。

開業直前にやること

最後の段階は開業直前期です。準備期間の最終段階であり、クリニック経営の始まりになります。

行政手続き

クリニックの開業時には保健所、社会保険事務所、福祉事務所など多岐にわたる行政機関に対し、さまざまな書類を提出しなければいけません。何よりもまず「診療所開設届」が必要です。スタッフを雇うのであれば、労働保険に加入しなければならないなどの規則もあります。実際に役所へ足を運び、期日までに手続きを済ませましょう。

宣伝

クリニックを開業するのであれば、エリア内にいる見込み患者に向けてアピールしなければなりません。開業したところで誰にも気づかれなければ、来院数が増えず利益を上げることが出来ないからです。

コストも大してかからず、大きな効果を期待できる宣伝方法としてGoogleマップに自社の情報を掲載する方法があります。他にも、コストはかかりますがネット広告も効果が期待できるでしょう。高齢者の方々を顧客層とする場合、チラシ配布も有効な手段となります。デジタルだけでなくアナログな手段も視野に入れておきましょう。

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クリニック経営の成功は開業前の準備で決まる

開業するためにはやらなければいけないことも多く、コストもかかります。リスクヘッジをするためには、開業前の入念な準備が重要です。初めから大きなことを成そうとはせず、地道にコツコツと小さいことを積み重ねていくことをおすすめします。まずは小規模から始め、患者さんの増加に合わせて拡大していきましょう。

開業地や設計などこだわるべき要素はいくつも存在します。ですが、それらのこだわりは患者さんのためのこだわりであることを忘れてはいけません。自己満足のこだわりになってしまっては患者さんの心を掴むことは難しいです。

また、本記事では開業前にすべきことをまとめましたが、それぞれの段階において初めに設定する理念や目標を忘れないでください。悩んだ際の判断基準にもなりますし、初志貫徹して事を成していくことは自信にも信用にも繋がります。

ここまで記事を読んでくださった方の中には、詳しく聞いてみたいことがあるという方もいるでしょう。そのような方はぜひこちらからお問い合わせください。

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この記事の著者/編集者

ドクタージャーナル編集部   

各種メディアでのコラム掲載実績がある編集部員が在籍。
各編集部員の専門は、社会における機能システム、食と健康、美容、マーケティングなどさまざまです。趣味・特技もボードゲームに速読にと幅広く、個性豊かな開業支援チーム。
それぞれの強みを活かしながら、医師にとって働きやすい医療システムの提案や、医療に関わる最新トレンドの紹介などを通して、クリニック経営に役立つ情報をお届けします。

この連載について

開業応援コラム~クリニック経営の入り口~

連載の詳細

本連載は、開業医の方々の支援を目的としたコラムです。これから独立を考えている、あるいはクリニックを開業したばかりの医師の方々に向けて、クリニック経営に関するお役立ち情報を発信していきます。開業準備や医療設備、人事関係、集患など、コラムによってテーマはさまざまなので、ぜひ参考にしてください。

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。