NO赤字経営!クリニック開業直後から経営を黒字にする費用削減方法
2022.07.26
治療内容や治療効果に関して患者さんの体験談をウェブサイトに掲載することが禁止されているなど、クリニックに対する規制は厳しくなっています。利益を増やそうと思っても、広告も打ち出しにくく効果的な施策をとることが難しいのが実情でしょう。しかし、利益が出ていないと患者さんに良質な治療を施せないのも事実。クリニックの経営者が利益の増やし方を考えることは悪いことではありません。
その際、クリニックの運営にかかる費用に着目するのも一つの手です。クリニック経営にかかる費用を見直すことで、利益を増やせる可能性があります。
費用削減の重要性
利益は売上高を増やすか、費用を減らすことで増やすことができます。クリニックにおいては単価を上げることは難しく、売上高を上げるためには患者数を増やす必要があります。しかし、その地域の人口や競合の状況などは開業時点でほとんど決まっており、患者数を増加させるにも限界があるでしょう。効果的な集患を行うことはもちろん必要ですが、不要な費用を減らすことも利益を増加させる効果的な手段です。
そのため、費用の削減にも注目することをおすすめします。もしかしたら、皆さんのクリニックにも削減可能な費用があるかもしれません。費用を削減し、より良質なクリニック経営に繋げてください。
クリニック経営にかかる費用
クリニックを経営するうえで発生する費用の例を見てみましょう。
- 人件費
- 設備費
- 交際費
- 福利厚生費
- 医薬品・医療材料費
- 委託費
- 水道光熱費
- 減価償却費
- 広告費
- 通信費
- 車両費
この他にも多数存在しますが、代表的なものを挙げました。安定したクリニック経営に繋げるうえでは、どの費用が削減しやすいのか、削減可能な金額がどの程度なのかを把握することが大切です。
削減可能な費用
前述したリストの中でも特に削減しやすいのは人件費でしょう。その他に地代家賃、光熱費、薬剤費も削減しやすい費用です。取り組みやすく、削減幅の大きい傾向にあるこれら4つの費用をご紹介します。
人件費
人件費はクリニック経営にかかる費用の中で大きな割合を占めます。そのため、削減を行った際に最も効果の出やすい費用と言えるかもしれません。
主な人件費の削減方法は以下の2通りになります。
- シフトを減らす
- 雇用形態を工夫する
クリニックに必要なスタッフは何人ほどでしょうか?一般的には、来院患者20人に対して1人のスタッフが適正とされています。クリニック内で手の空いているスタッフをよく見かけるのであれば、シフトを減らすことも考えてみましょう。
一方で、スタッフを解雇することは最終手段となります。経営者の都合のみでスタッフ解雇することはできません。スタッフを解雇するには著しい経営不振に陥り、人員を減らさなければ経営再建ができない等の理由が必要になります。赤字になった等の理由だけではスタッフを解雇することはできません。
次に、雇用形態についてです。正社員を雇う場合、アルバイトを雇うのに比べてクリニックの負担が大きくなります。正社員は社会保険料などがかかるため、人件費が高くなりやすいのです。一方でアルバイトであれば人件費を抑えることが可能です。
特殊な技能が必要であり、代役を見つけるのが困難な仕事は正社員に任せる。特殊な技能も必要なく、代役を見つけやすい仕事はアルバイトに任せる。
このように、業務の棲み分けを行うことで人件費を抑えることができます。新しくスタッフを雇う際は、本当に正社員である必要があるのか考えてみると良いでしょう。
参考:患者満足度が上がる?クリニックでのスタッフの労働環境の重要性
地代家賃
地代家賃は物件だけでなく、駐車場の賃料も含まれています。駐車場の賃料も削減可能な費用の一つです。今利用している駐車場は最適な駐車場でしょうか?もしかしたら周辺により賃料の安い駐車場があるかもしれません。
月極駐車場のオンライン契約を扱う「アットパーキング」によると、2022年5月時点では東京都の月極駐車場の賃料相場は22,389円となっています。しかし、中には17,000円ほどで借りることのできる駐車場も存在します。同じ地域内でも月極駐車場の賃料は大きく変動するようです。仮に毎月5,000円賃料が安くなるとしたら、年間で60,000円、10年間で600,000円も費用を抑えることができます。決して無視することのできない金額でしょう。
もちろん、利便性や安全性との兼ね合いにはなりますが、よりコストを抑えられる駐車場が周辺にないか確認してみるのも良いかもしれません。
また、家賃が高い割にそれに見合った売上が立てられていないのであれば、クリニックの移転を検討することも大切です。
光熱費
光熱費に関しても見直すことが可能です。光熱費は日々の使用が積み重なり、月間では相当な額になります。医師が1人規模のクリニックでは、1か月に150,000円を超えることが多いようです。
電気会社を見直す、契約プランを変える、電球をLEDに統一するなどの対策を講じることができます。日々の節電が大きな効果を生むかもしれません。
また、ガスに関しても節約することは可能です。2017年4月より、都市ガスが自由化されました。プロパンガスに関してはそれ以前から自由化されています。そのため、ガス会社によって、あるいはプランによって料金が変わります。クリニックにとって最良のガス会社、プランを選べているか見直しをすることで、ガス代を削減することが可能かもしれません。
薬剤費
医薬品は決して安価ではありません。在庫処分する場合、クリニックにとっては大きな痛手となるでしょう。医薬品はサイズが小さいため在庫を持ちやすいのが特徴です。しかし、その性質ゆえに在庫に対する抵抗がなくなってはいないでしょうか。パソコンなどを在庫として抱える場合、サイズが大きく目立ちますが、医薬品は場所を取らないため気になりにくいのです。過剰な在庫を持たないよう心がけることで費用を減らすことができるかもしれません。
しかし、需要の予測は難しいもの。また、スタッフが入念に在庫管理を行うと更に人件費がかかってしまいます。そのため、SPD業者などに依頼することも選択肢に入れておくと良いでしょう。SPDとは、クリニック経営に必要な物品の購入や在庫管理などの業務を指します。これらの業務を業者に依頼するのです。IoT技術を駆使しており、過剰な在庫を抱えるリスクを軽減させる効果が期待できます。SPDは病院向けのイメージがあるかもしれませんが、クリニック向けのプランを用意する業者も存在します。クリニックの規模が大きくなり、在庫管理が難しくなった際におすすめです。
クリニックを賢く経営
クリニックの経営には費用がかかります。これらの費用は工夫と努力で削減することが可能です。もし、経営が上手く行っておらず取るべき施策に困っているのであれば、まずは費用に着目してみてください。費用の削減は取りかかりやすく、比較的効果も出やすいです。
また、黒字経営を続けることは地域の患者さんにとってもありがたいことです。患者さんの慣れ親しんだクリニックを維持し、健康に関する良き相談相手でいること。それが地域に根差したクリニックの使命であり、大切な役割と言えるでしょう。支出を抑え、黒字経営の継続に役立ててください。
森口敦 ドクタージャーナル東大生チーム・コーチ兼メンター