#01 【内田貞輔氏】在宅医療とはその人の人生をずっと支えていく医療
2020.09.14
幼い頃の原風景の中にあった訪問診療
私は栃木県の人口1万人ほどの町で生まれ育ちました。
そこでは誰かのお祝い事があれば、地域の人たちが集まり皆でお祝いするような隣近所の付き合いが普通にありましたし、3世代家族や4世代家族が一緒に暮らしている家も多く、地域には自助、共助が当たり前のようにありました。
地域のお医者さんも、かかりつけ医として往診にも気軽に応じてくれる、地域の人たちのとってはとても身近な存在でした。
自宅を訪問するという医療が日常の中に自然にありました。
そこには、今の在宅医療の原型のようなものがあったように思います。私はそんな環境で育ちました。
後に私は医師として在宅医療に進むこととなりますが、そこには何の抵抗もありませんでした。
その人の人生をずっと支えていくリウマチ・膠原病治療
研修医時代には、スーパーローテーションで内科・外科以外にプライマリ・ケアに必要とされるさまざまな科の研修を受けました。
地域医療の研修も受け、そこで始めて在宅医療も経験させてもらいました。
研修医の時に、リウマチ・膠原病の指導医の先生から「私はこの患者さんを20年以上診ていて、長いお付き合いになっています」という話を伺いました。
そこには長い年月を共に歩んできた“医師と患者という関係を超えた強い信頼関係”があり、私は強い感動を覚えました。
リウマチや膠原病は完治することが難しい病気なので、治療によって良い状態を保ち続けることが治療法の基本となります。ですから、患者さんとの付き合いは自ずと長くなることが多いのです。
リウマチ・膠原病治療では、患者さんと共に同じ目標に向かって治療に取り組んでいくことが大切で、その人の人生をずっと支えていく、そんな医療に私はとても魅力を感じました。
それが、リウマチ・膠原病の分野に進んだ理由です。
患者さんに寄り添う医療を目指して在宅療養支援診療所を開設
それまでの大学病院では、入院患者さんに人工呼吸器を使ってでも最期の看取りまで行うのが主流でしたが、次第に最期は家で迎えたいという患者さんの要望や、制度上からも最後まで病院で診ることができない患者さんが増えていきました。
また、リウマチの患者さんの中には、病状が進行して通院が困難となってくる方も多くいます。
私がいた聖マリアンナ医科大学病院の医局では、特にリウマチ・膠原病のような特殊な病気の患者さんに対しては、地域の開業医を紹介して、そこに私たちが出向して、訪問医療でその患者さんをずっと診療し続けるということもしていました。
ですから、研修医時代からリウマチ・膠原病治療の研鑽を積みながらも並行して在宅医療にも取り組んできました。
長い期間を患者さんに寄り添い支えていく医療という点では、リウマチ・膠原病治療と在宅医療は似ています。患者さんに寄り添う医療の提供を目指して、2015年にリウマチ・膠原病診療と在宅医療を専門とした静岡ホームクリニックを開業したことは、私にとっては当然の帰結でした。