医者が病院を開業するには?絶対知るべきクリニック経営のノウハウ

<本連載について>
新宿で高い人気を誇る「信頼と実績」のクリニックを経営するカリスマ院長が、自らの実体験をもとにクリニック経営のノウハウをご紹介。クリニックを開業するにあたって重要な立地選び、ネット広告、接遇マナー、採用・教育など、今の時代に即した経営戦略をお伝えします。

「開業したいけれど、何をすべきかよく分からない」、「開業してみたものの、なかなか集患できない」というお悩みを抱えていませんか?

それは、クリニック経営に必要なノウハウをまだ見つけられていないからです。

実際私はクリニック激戦区の新宿にて医師1人、事務員1人と小さく開業したものの、今では1日に400人ほどが来院するクリニックに成長させることができました。

参考:新宿駅前クリニックホームページ
参考:医療法人社団SECホームページ

そのノウハウと、クリニックの開業支援やコンサルティングを通して学んだことをこれから始める連載でお伝えしていきます。

患者さまがかかりつけになる5つのステップ

クリニック経営において最も大切なことは、どれだけ多くの患者さまのかかりつけ医になれるかです。

ここに開業医が陥りがちな落とし穴があります。かかりつけ医になるためには「人格を磨くこと」、「医者としての腕を上げること」だけが重要だと勘違いしている方が非常に多いのです。

確かにそれも大切なことではありますが、まずは来院していただかないことには始まりません。人格や医者としての腕は、そもそも来院されている前提での話です。それに、まともな開業医であれば大きな差がつく部分ではありません。患者さまに丁寧に接するのは当たり前のことですし、開業できるほどの医者であれば患者さまの「治したい」というニーズを誰でも満たせてしまいます。

つまり、かかりつけ医になるにあたって一番重視すべきなのは、クリニックの存在を知っていただくこと、ひいては受診しようと選んでいただくことなのです。

実際に患者さまが来院し、かかりつけになるまでのステップを見てみましょう。

引用:1.患者さまがかかりつけになるまで/【 蓮池林太郎 】公式ホームページ

上の図は、集患するうえで必ず押さえておくべき、患者さまの行動ステップを表したものです。

認知→病院探し→比較検討→初診→かかりつけ

患者さまはこの5ステップに沿ってかかりつけになりますので、各段階ごとに沿った施策をする必要があります。

この記事を含めた全12回の連載では、上記の5つのステップに対応した集患・クリニック経営方法を順序だててご紹介していきます。ここではまず、5つそれぞれを簡単に見ていきましょう。

①認知

まだ来院されたことのない方々にクリニックの存在を知ってもらい、体調不良になったときに思い出してもらえるまで覚えていただいて初めて「認知」されたと言えます。後々のために、病院を探していない方々にも知っていただくことが重要です。では、今すぐ病院に行きたいという方々以外にも認知されるにはどうしたら良いのでしょうか。

恐らく、一番に挙がる答えは看板によって通りすがりの方々に覚えていただくことだと思います。

看板には、クリニックのある場所に設置されている据え付き看板と、クリニックと離れた場所に設置されている駅看板や野立て看板などがあります。ですが、クリニックと離れた場所の看板では場所とクリニック名が一致しないため、なかなか覚えてもらえません。費用対効果が良くない傾向にあるので、据え付き看板が重要になります。

とはいえ、どれだけ据え付き看板にこだわったとしても、見てくださる方が少なければ満足な集患は見込めません。そのため、将来的に患者さまになり得る人が多く見てくださる場所で開業すること、つまりは「立地」が何よりも重要な鍵になります。開業後に移転するのは難しく、やり直しがほとんどできません。クリニック開業の最初に行う立地選び(物件選び)は慎重に行いましょう。これについては第2回の連載記事にて詳しく説明していきます。

第2回:クリニック開業前に絶対考えるべき立地条件!集患しやすい立地とは

②病院探し

woman-searching-clinics

「病院探し」の段階ですべきことは、すぐに病院へ行きたいという方々にクリニックの存在を知っていただくための施策です。「認知」と混同しやすいですが、アプローチをかける対象が今すぐ病院を必要としているかどうかという点で区別しています。

スマートフォンが普及した今の時代、病院探しの方法はネット検索が主流です。仮に、据え付き看板等で既に認知されている場合であっても、診療時間や休診日を調べようとネットで検索する人もいます。そのため、病院探しの段階で患者さまに見つけてもらいやすく、分かりやすいホームページを作ることや、ネット検索時の画面でクリニックの情報を上位に表示させることなどが重要なのです。詳しくは第3回~第5回の連載記事でご説明します。

第3回:【最新】病院やクリニックのホームページにおける集患のためのSEO対策
第4回:集患に重要なGoogleマイビジネスとは?初心者でも分かる登録・運用方法

③比較検討

基本的に、ネット検索をして一番最初に見たクリニックの情報だけを見て来院する患者さまはほとんどいません。多くの場合、複数のクリニックを調べて比較し、そのうえで最も自分に合ったところを決めています。競合が多い中でも選ばれるためには、「選ばれる要素」を分かりやすく発信する必要があります。たとえばホームページに医師紹介や診療内容のページを掲載したり、患者さまに口コミをしてもらったりなどです。具体的な方法については、第6回の連載記事でご紹介します。

④初診

receptionist

かかりつけになっていただくためには初診での印象付けが重要です。患者さまにとっての初診とは医師による診察だけではありません。来院前の予約から診察後の精算が済むまで(薬を処方する場合は調剤薬局での精算まで)が初診であり、一つひとつの工程がクリニックの評価に繋がります。ここで初診の流れをおさらいしておきましょう。

予約→受付→問診票記入→受付→待合室→医師による診察→看護師による処置→待合室→会計→調剤薬局での薬受取

ここから、医師と接する回数よりも事務スタッフと接する回数の方が多いことが分かります。つまり、医師や看護師だけでなく、受付の事務スタッフにも一定以上の水準が求められるのです。どんなに医師の人柄が良くても、どれだけ医師としての実績があっても、受付時の対応が悪ければ「何かあればまた来よう」と思ってもらいにくくなってしまいます。

初診でお客様の心を掴む方法は第7回の連載記事をお待ちください。また、スタッフの採用や教育、労務関係については第9回~第12回の連載記事にて詳しく掘り下げていきます。

⑤かかりつけ

ここまで見てきた「認知」から「初診」までのステップでは立地やネット、スタッフといった医師本人以外の要素が大きな力を発揮します。しかし、最終的にかかりつけ医に選ばれるかどうかは、やはり医師の診察によって大きく左右されるのです。

どれだけ目立つ場所にあっても、ネットで上位表示されていても、スタッフ全員の対応が良くても、患者さまが「あの医者は全然私の話を聞いてくれない」、「本当にその診断が合っているのか不安」と思われたなら、二度と来院することはないでしょう。患者さまに信頼される診察ができるかどうかは非常に大切なのです。そのためには、患者さまの話を聞いて気持ちに共感する力、病気についてわかりやすく説明する力などが必要になります。患者さまとの信頼関係の築き方については、第8回の連載記事で具体例と共にご説明します。

クリニック経営に必要な3つの力

clinic-manegement

開業医になるには、勤務医とは異なる能力が必要です。勤務医であれば、何よりも医師としての腕が重視されますが、開業医には患者さまを診察する「診察力」はもとより、経営者としての力が欠かせません。スタッフの採用や教育をする「管理力」、立地の選定、ネット集患の知識、売上や経費をコントロールするなどの「経営力」が必要になります。ですが、多くの開業医は「管理力」や「経営力」を身につけないままクリニックを開いてしまい、本来なら避けられたはずの問題にぶつかってしまうことが少なくありません。

この連載では、上手にクリニック経営をしていくために押さえておくべきノウハウを分かりやすくご紹介していきます。これから開業しようとしている方はもちろん、既に開業したもののなかなか思ったように上手くいかなくてお悩みの方は、ぜひご参考にしていただければ幸いです。一人の開業医として、クリニック経営の厳しい現実に立ち向かう皆さんを心より応援しています。

新宿駅前クリニックの基本情報

医療法人社団SEC新宿駅前クリニックは、新宿西口1分、南口2分のオフィス街にあるクリニックです。皮膚科、内科、泌尿器科などの病気や症状などを保険診療しています。新宿駅周辺や西新宿で働いている方を中心に、新規患者さまは主にネット経由で1日100人から150人前後、1日計400人から500人前後の患者さまが来院されます。お忙しい方でも予約不要でおかかりになれるよう、常勤医師も5名から6名在籍し、できるだけお待たせしない診療体制で運営しています。

この記事の著者/編集者

蓮池林太郎 医療法人社団SEC 新宿駅前クリニック院長 

1981年、東京都生まれ。5児の父。医師。作家。帝京大学医学部卒業。2009年、新宿駅前クリニック開業。2011年、医療法人社団SEC設立。クリニックの開業支援や経営コンサルティング、記事執筆、講演などをおこなう。著書に「競合と差がつくクリニックの経営戦略―Googleを活用した集患メソッド」(日本医療企画)、「患者に選ばれるクリニックークリニック経営ガイドライン」(合同フォレスト)など。

  医療法人社団SEC理事長
  新宿駅前クリニック 皮膚科 内科 泌尿器科 院長
  蓮池林太郎(はすいけりんたろう) 
  蓮池林太郎ホームページ:https://www.hasuikerintaro.com
  ――――――――――――――― 
  〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-11山銀ビル5F
  TEL:03-6304-5253   
  FAX:03-6304-5257   
  Mail:catdog8461@gmail.com
  
新宿駅前クリニックホームページ:https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.info
  
医療法人社団SECホームページ :https://www.shinjyuku-ekimae-clinic.com
  
新宿駅前クリニックグーグルマイビジネス: https://goo.gl/maps/vuqvcQUASHikzUgA9

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 蓮池林太郎

    医療法人社団SEC新宿駅前クリニック院長 2021年03月28日

    掲載いただきまして、ありがとうございます。

  • 森口敦

    ドクタージャーナル東大生チーム・コーチ兼メンター 2021年03月28日

    一つ一つ自身で実践し、積み重ねてきた実績。
    蓮池先生の説得力ある経営ノウハウが学べる連載です。
    次回以降も楽しみです!!

この連載について

人気クリニック経営者・蓮池林太郎のネット集患テクニック

連載の詳細

新宿で高い人気を誇る「信頼と実績」のクリニックを経営するカリスマ院長が、自らの実体験をもとにクリニック経営のノウハウをご紹介。 クリニックを開業するにあたって重要な立地選び、ネット広告、接遇マナー、採用・教育など、今の時代に即した経営戦略をお伝えします。

最新記事・ニュース

more

遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。

人工内耳の発展によって効果や普及率が格段に高まってきた現代。今だからこそ知りたい最新の効果、補聴器との比較、患者さんにかかる負担について伺いました。重度の難聴を持つ患者さんが、より当たり前にみな人工内耳を取り付ける日は来るのでしょうか。

本連載の最後となるこの記事では、首都圏で最大規模の在宅医療チームである悠翔会を率いる佐々木淳氏に、これからの悠翔会にとって重要なテーマや社会的課題、その解決に向けてのビジョンについて伺いました。

こころみクリニックは正しい情報発信とぎりぎりまで抑えた料金体系、質の高い医療の追求を通して、数多くの患者を治療してきました。専門スタッフが統計解析して学会発表や論文投稿などの学術活動にも取り組み、ノウハウを蓄積しています。一方でTMS療法の複雑さを逆手に取り、効果が見込まれていない疾患に対する効果を宣伝したり、誇大広告を打つクリニックもあり、そうした業者も多くの患者を集めてしまっているのが現状です。 こうした背景を踏まえ、本記事ではこころみクリニックの経緯とクリニック選びのポイントについて伺いました。

前回記事に続いて、首都圏で最大規模の在宅医療チームである悠翔会を率いる佐々木淳氏に、「死」に対しての向き合い方と在宅医が果たすべき「残された人生のナビゲーター」という役割についてお話しを伺いました。

人工内耳の名医でいらっしゃる熊川先生に取材する本連載、1記事目となる本記事では、人工内耳の変遷を伺います。日本で最初の手術現場に立ったのち、現在も71歳にして臨床現場で毎日診察を続けられている熊川先生だからこそお話いただける、臨床実感に迫ります。

本記事では主に医師に向けて、TMS療法に関する進行中の研究や適用拡大の展望をお伝えします。患者数の拡大に伴い精神疾患の論文は年々増加しており、その中で提示されてきた臨床データがTMS療法の効果を着実に示しています。さらに鬼頭先生が主導する研究から、TMS療法の可能性が見えてきました。

お話を伺ったのは、医療法人社団こころみ理事長、株式会社こころみらい代表医師でいらっしゃる、大澤亮太先生です。 精神科医として長い臨床経験を持ち、2017年にこころみクリニック、2020年に東京横浜TMSクリニックを開設され、その後も複数のクリニックを展開されています。 科学的な情報発信と質を追求した診療を通して、日本でも随一の症例数を誇るこころみクリニック。自由診療としてぎりぎりまで料金を抑え、最新のプロトコルを提供しながら学術活動にも取り組まれています。そんなこころみクリニックに取材した連載の第1回となる本記事では、臨床運営の現場から見えてきたTMS療法の治療成績と、コロナ後遺症への効果を検証する臨床研究をお聞きしました。