#01 【銅冶英雄氏】〝医師に依存する治療〟から〝患者自身が参加する治療〟へ

「患者に貢献し、その結果、社会にも貢献する。(※例えば、体の痛みにより就業が難しい状態の患者を根本治療する事により、職場復帰を助ける事=患者に貢献する。その結果、会社も助かる=社会に貢献する)」 そんな信念の下、院長として『医療法人社団色空会 お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック』を運営する銅冶英雄医師。 整形外科専門医・リハビリテーション専門医として、つねに「患者様にとって本当の意味で役に立つ医療とは何なのか?」を自問自答しているという同医師に、機能リハビリテーションクリニックの経営について聞いてみた。 (『ドクタージャーナル Vol.4』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)
銅冶 英雄
銅冶英雄
お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長。医師、医学博士、米国公認足装具士、日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本リウマチ学会専門医。1994年日本医科大学卒業、千葉大学附属病院・成田赤十字病院・千葉リハビリテーションセンターなどで臨床研修、2001年米国ウイスコンシン医科大学留学、2005年国際腰椎学会学会賞受賞、2006年医学博士、2007年王立パース病院ベッドブルック脊椎ユニット留学、 2008年医療具で特許取得、2010年お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニックを開院。同クリニック院長。

疾患の根本治療に役立つ医療を実践したい

銅冶院長の『お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック』は、御茶ノ水駅から徒歩3分、ニコライ堂に隣接したビルで開院している。

この場所はアクセスには便利だが、その分都心部で家賃も高く、特に御茶ノ水駅の周辺には大学病院やクリニックが乱立しているという、見方によっては経営環境が最も厳しいともいえる立地だ。

銅冶院長:「場所には、あまりこだわりはありませんでした。ただ、遠方からいらしてくれる患者様も想定しておりましたので、『アクセスがしやすく、わかりやすい場所』ということでこの場所に開院しました。」と銅冶院長は語る。

周囲に病院施設が多いことに関しても「正直、あまり考えたことはありません。病院や医師には、それぞれの考え方・やり方がありますから、自分は自分が考える最良の医療を患者様に提供するだけだと思っています。」

同クリニックが開業したのは2010年。開業以来、着実に患者数が増えてきているという。そこで、現在、銅冶院長が、どのような方針の下、同クリニックを運営しているのかを聞いてみた。

銅冶院長:「私は、これまでの医師としての経験の中で、『患者様にとって、本当の意味での役立つ医療とは何なのか?』ということを、いつも自分自身に問いただしてきました。

その結果、『患者様が治療を医師に委ねてしまう〝依存〟は、疾患の再発や慢性化、さらには悪化につながる』のではないかという結論に行き着きました。

そこで、『患者様に積極的に治療に〝参加〟していただくお手伝いをさせてもらう』ことにより、疾患の根本治療に役立つ医療の実践を目的として、当クリニックを設立しました。」

ロゴマークに込めた思い

銅冶院長が、運動療法を通じて同医師に賛同した8名の理学療法士とともに開院した『お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック』。

現在使われている同クリニックのロゴマークは、開院の約一年前に、銅冶医師を中心に集まったその仲間とともに合宿を行い作成された。
このロゴマークには

  1. 腰椎伸展運動:運動療法の象徴でもあるこの運動を行っている姿に、ピンクのハートは愛情を込めたオーバープレッシャーを意味する。
  2. 深型靴:米国足装具学の基本である『インソール』を入れることができる十分な深さをもった靴で、ハートは靴紐を表す。
  3. 日本列島:日本の中では小さな存在でも、何かしら社会の役に立つ仕事をしていこうという趣旨が込められ、ハートの先端は同クリニックの所在地である東京を指す。

という3つの意味が込められているという。

御茶ノ水整形外科昨日リハビリテーションクリニック

〝機能リハビリテーション〟という考え方

同クリニックの医院名には、『機能リハビリテーションクリニック』という名称が含まれている。この〝機能リハビリテーション〟というのは、どういうものなのであろうか。

銅冶院長:「当クリニックでは、一般整形外科として、骨や関節、あるいは神経や筋肉といった運動器の病気や怪我に対し、まずはレントゲンや骨塩定量機、迅速血液検査装置などを用いて、整形外科専門医が診療します(MRIが必要な場合は、近隣の提携医療機関で撮影可能)。

その上で、当クリニックの治療は、主に次の三つの柱から構成されています。

  1. 『運動療法』─運動療法を行うことによって、本来の関節や筋肉、靭帯などの動きを取り戻す。
  2. 『足と靴の外来』─「インソール」や「靴」を作製し、体の土台である〝足〟をしっかりと安定させる。
  3. 『栄養療法』─栄養療法により、関節や筋肉、靭帯などを作り出す元となる〝栄養〟や〝血流〟を改善し、〝組織〟を回復させる。

つまり当クリニックでは、たんに〝痛み〟を取るということだけではなく、本来あるべき機能を完全に〝回復〟することを最終目標とした治療を行います。

そして、この考え方(治療法)を総称して、当クリニックでは『機能リハビリテーション』と名付けました。もちろん、患者様の痛みを取るためには、対処療法としての投薬や手術といった治療も大切ですから、それらも行います。

ですが、それだけでは、投薬を止めたり、治療から時間が経ってしまうと痛みがぶり返したりするなど、根本的な解決にはならない場合が少なくありません。

そこで、私は整形外科専門医であると同時にリハビリテーション専門医として、機能を完全に回復させるための〝リハビリ〟に力を入れる整形外科医を実践することにしたのです。」

患者の〝自立〟のお手伝い

患者が治療を医師に委ねてしまう〝依存〟は、疾患の再発や慢性化、さらには悪化につながる。と考えている銅冶院長は、「カラダの痛みを治すのは、患者自身」だと言う。

銅冶院長:「『機能リハビリテーション』は、本来の運動機能を回復させ、患者様の〝自立〟をお手伝いするためのリハビリです。

その大きな特長は、運動療法や姿勢・動作指導を用いて『患者様が自分で治せる方法を一緒に探っていく』というもので、たとえば運動療法の場合、患者様の反応を見ながら、その方に最も適した運動方法を見つけていきます。

そして、(基本的に)患者様には、ご自宅や勤務先でその運動をしていただく、というやり方なので、当クリニックへの通院は月一回程度で済みます。

これは患者様にとって便利なことだとは思うのですが、その反面、患者様自信の努力が必要な方法でもあります。そのため、最初の問診時などに、患者様に『自分で治す』ということを、強く意識してもらえるように、説明します。

患者様が『医師に治してもらう』という考えを強く持っていますと、どんなにその方に適した運動療法や姿勢・動作指導を行っても、それを自宅で続けてもらえず、結果、効果が表れないということが多くあるのです。」

銅冶院長によると、同クリニックを訪れる患者の7~8割の患者が、症状が改善しているといい、これは患者が「自分で治したい」と考え、努力してくれた結果だという。

この記事の著者/編集者

銅冶英雄 お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック 院長 

医師、医学博士、米国公認足装具士、日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本リウマチ学会専門医。1994年日本医科大学卒業、千葉大学附属病院・成田赤十字病院・千葉リハビリテーションセンターなどで臨床研修、2001年米国ウイスコンシン医科大学留学、2005年国際腰椎学会学会賞受賞、2006年医学博士、2007年王立パース病院ベッドブルック脊椎ユニット留学、 2008年医療具で特許取得、2010年お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニックを開院。同クリニック院長。

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。