クリニック開業前に絶対考えるべき立地条件!集患しやすい立地とは

<本連載について>
新宿で高い人気を誇る「信頼と実績」のクリニックを経営するカリスマ院長が、自らの実体験をもとにクリニック経営のノウハウをご紹介。クリニックを開業するにあたって重要な立地選び、ネット広告、接遇マナー、採用・教育など、今の時代に即した経営戦略をお伝えします。

クリニックを開業し集患するうえで、一番大きな要素は何だと思いますか?

医者としての実績や口コミ、内装や設備など、さまざまなご意見があるでしょう。
しかし、私は「立地」が何よりも大切だと考えています。

集患力は立地で決まると言っても過言ではありません。他の業種において、立地の重要性は周知の事実です。ところが、立地調査や物件選びに妥協してクリニックを開業する医師は非常にたくさんいます。

単純に「家賃が安くて広い」、「近隣の競合となるクリニックが繁盛している」からといって、必ずしも好立地というわけではありません。

では、何に注目して物件を選べば良いのでしょうか?

今回の連載記事では、クリニックの集患に直結する立地条件について詳しく掘り下げていきます。

電車社会と車社会における診療圏

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皆さまがクリニックを開業する場所はどのような地域でしょうか?

地域の分類方法はさまざまですが、診療圏を見極めるうえでは、電車社会(主に徒歩で患者さまが来院)か車社会(主に車で患者さまが来院)かという分類で見ると良いでしょう。

電車社会の住宅街であれば、クリニックを中心とした半径500mから1km前後以内、車社会の住宅街であれば、地域差はありますが半径2kmから4km前後以内が、多くの患者さまが来院する診療圏といわれています。徒歩1分=約80m 、自転車1分=約200m、車1分=約400mが目安です。通常、患者さまの多くは自宅から5分から10分以内の場所でクリニックを探しています。

まずは地図上に、クリニックの開業候補地を中心とした同心円を描いてみましょう。その円の範囲内が暫定的な診療圏です。もっとも、圏内のすべてから同じように集患できるわけではありません。たとえば川や線路などの阻害要因によって、円の一部分が診療圏から外れてしまう可能性があります。また、ショッピングセンターや大型スーパーなどの集客力が高い場所が近くにあれば、買い物ついでに来院されやすくなるため、円の外からもある程度の集患が見込めるでしょう。

このように、まずは電車社会と車社会のそれぞれの場合に応じて診療圏を見極めることが大切です。

診療圏内の見込み患者数・年齢調査

診療圏が絞り込めたら、次は圏内の見込み患者数を調べます。この時、行政が公表している居住者人口(夜間人口)の数や性別を参考にすると良いでしょう。ただし、都心のオフィス街では就業者人口(昼間人口)が影響します。

また、どれくらいの確率でクリニックにかかるかは年齢によっておおよそ決まっているため、診療圏内の年齢別人口を調べるのは非常に重要なことです。たとえば、高齢者ばかりで小学生以下の人口が少ないエリアに小児科を開いても、満足な集患はできないでしょう。ご自身が開業予定の診療科目に合った見込み患者さまがどれくらいいるかは必ず調べておきましょう。

避けては通れない競合分析

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圏内の調査にあたって、もう一つ外せないことがあります。それは、競合クリニックを調べることです。どれだけ見込み患者さまが多くても、同じ診療圏を共有する競合クリニックも多数あるとしたら、その分見込み患者さまが分散してしまいます。その場合、見込み患者さまがそこまで多くなくても、競合クリニックが少ない地域で開業した方が良いかもしれません。

ただし、競合クリニックがあったとしても、たとえば立地が悪かったり、ネット集患に全く力を入れていなかったり、後継者のいないご高齢の院長ばかりだったりというケースもあります。同じ診療科目のクリニック数だけを見るのではなく、それぞれの競合がどれくらいの来院患者数なのか、どのように集患しているのかといったことにまで目を向けて分析しましょう。

本当に良い物件を選ぶ方法

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ここまでの立地調査で開業候補地を選定したら、いよいよ物件選びです。

一般的に、前テナントの解約予告は3~6か月前に出ます。その後解約までの間にテナントのオーナーや管理会社の知り合いなどの間で内々に次の借主が決まることも少なくありません。つまり、良い物件を押さえたいのであれば、目星をつけているテナントのオーナーや管理会社と交渉して、早々に契約を済ませる必要があります。

開業候補地の不動産会社に依頼して外部に出回っていない内々の物件を紹介してもらうことや、開業希望エリア内の調剤薬局とコネクションを作り、近くで空き物件が出たら教えてもらうというのもおすすめです。

さまざまな物件情報を集めたポータルサイトに載っている物件は、条件面であまり魅力的でないこともあります。コンビニやドラッグストアなどの他業種が手を挙げなかった、いわゆる売れ残り物件である可能性もあるのです。ちなみに、前テナントが退去して空室になってしまっている場合は、3~6か月以上も次の契約が決まらなかったということになります。

しかし、駅から遠くなくても視認性が悪かったり、家賃が安くても立地が良くなかったりと、医療はもとより小売業やサービス業でも営業しづらい物件で開業しているクリニックもあります。深く考えずに物件を契約してしまう開業医の方が一定数いるからです。開業後のことまでしっかり考え、根回しや下調べを入念に行いましょう。

ここで、良い立地かどうかを見極めるちょっとした裏技をご紹介します。それは大手ファーストフード店が傍にあるかどうかということです。大企業であればその土地のことをさまざまな観点から調べています。その結果採算が取れる見込みがあるからこそ、その場所に出店しているのです。ぜひ一つの判断材料として参考にしてみてください。

競合が多い地域での物件選び

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物件選びをするうえで特に気になるのは賃料ではないでしょうか。

開業人気エリアなど競合クリニックが多い地域で開業するなら、あまり広くない方が良いかもしれません。一般内科などであれば、20~30坪程度でも診療していくことができます。

仮に、1日150人の来院患者さまが見込める地域があったとします。既に2つのクリニックがあったとすると、新規開院した場合には合計3クリニックとなり、1クリニックあたり50人ほどの来院患者さまが見込めます。

ではさらに4つ、5つとクリニックが増えた場合はどうでしょうか。この場合、単純計算で1クリニックあたり30人ほどの来院患者さまが見込めます。

上記の例のように、競合が多い地域であれば、競合がそこまで多くない地域よりも見込みの来院患者数が少なくなるため、クリニックは小型化する傾向にあります。つまり、より良い立地に、1坪あたりの家賃がより高くあまり広くないスペースで開業する必要が出てくるのです。

良くないパターンとしては、競合が多い地域にもかかわらず、医療設備を充実させて開業したいという例が挙げられます。駅から遠く1坪あたりの家賃が安くて広い物件で開業したものの、立地が悪いために肝心の患者さまの来院が予想よりも少ないという事態に陥ることがよくあります。

おそらく、家賃に対してある程度の予算感があり、その枠組みで考えてしまっているからなのでしょうが、立地で妥協してはいくら立派な医療設備であっても宝の持ち腐れになりかねません。

クリニック激戦区においては、まずは小さく開業した方が堅実です。そのうえで患者さまが増えてスペースが足りなくなったというのであれば、もう少し広い物件に移転することをおすすめします。

逆に、医療設備を充実させて広いクリニックを開業したいのであれば、競合の少ない地域で開業した方が安全かもしれません。

認知されやすくするために

クリニックの集患で重要なのは、できるだけ多くの方に認知していただくことです。そのためには、通りすがりの方々の目に留まりやすくする工夫が必要になります。

クリニックの階数

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開業候補地がある程度決まっているのであれば、物件選びの際には階数にもこだわりましょう。

目線の先にあるクリニックの方が認知されやすいということは言うまでもありません。1階の認知度が10だとすると、2階は3、3階以上は1と認知度が激しく低下します。そのため、電車社会でクリニックを開くなら、将来的に患者さまになり得る人が多く通る1階が望ましいです。

ただし、ネット集患が主な精神科や美容外科などは例外です。そのうえ、このような診療科目の場合はクリニックに通うところを見られたくないという方もいらっしゃいます。患者さまの心情にも配慮するならば、2階以上を選んだ方が良いでしょう。

宣伝用の看板

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引用:新宿駅前クリニックGoogle マイビジネス

認知されやすくするためには、看板を出すことも効果的です。看板には主に、据え付き看板と駅看板、野立て看板があります。開業医の方は駅看板や野立て看板に頼る傾向にありますが、私はあまりおすすめしません。

看板を出す目的はクリニックの存在を認知していただくことです。駅にいる人がどんな人なのか考えてみてください。時間帯にもよると思いますが、移動中はせわしなく脇目も振らずに歩き、ホームでは多くの方がスマートフォンを眺めています。このような状況でクリニックの存在を認知していただけるほど駅看板が記憶に残るかといえば、決してそうではないでしょう。

道路や路地に設置する野立て看板についてはどうでしょうか?

野立て看板の場合は設置する場所が重要になってきます。たとえば、クリニックから500m離れたところに野立て看板を設置したとしましょう。しかし、これではクリニックと看板の場所が離れすぎて結びつかず、結局は認知に至りません。野立て看板を出す場合はクリニックからほど近い場所に設ける方が認知されやすくなります。

この考え方だと、クリニックの目の前に出す据え付き看板は野立て看板よりも効果的と言えますが、やはり見づらいものだった場合は効果が半減してしまいます。見通しの良い場所に設置することはもちろん、デザインも重要です。診療科目名を含まないクリニック名を大きく表示している看板をよく見かけますが、私はクリニック名よりも診療科目の方を目立たせるべきだと考えています。なぜなら、どんなクリニックなのかが分からなければ、具合が悪くなった時に来院する候補に入れてもらいにくいからです。クリニック名以上に診療科目を強調し、必要な時に思い出していただける看板を作ることが大切です。

立地の妥協はNG!

今回は立地について詳しくご説明してきましたが、クリニック経営において立地がどれだけ重要か伝わったでしょうか?

医療機器、内装、スタッフ(看護師・医療事務)の人数にはこだわって予算をつぎ込むのに、肝心の立地は妥協してしまう開業医の方は非常に多いです。それでもある程度は経営していけるかもしれませんが、立地にこだわった場合と比べると多額の利益を失っていると言えるでしょう。

立地調査や物件選びには相当な時間や労力が必要です。しかし、開業前のこの手間を惜しまないことで安定した集患が見込めます。やって損はないというより、やらない理由がありません。

これから開業をする方や移転を考えている方は、ぜひ今回ご紹介したことを参考に納得のいく場所を見つけていただけたらと思います。

この記事の著者/編集者

蓮池林太郎 医療法人社団SEC 新宿駅前クリニック院長 

1981年、東京都生まれ。5児の父。医師。作家。帝京大学医学部卒業。2009年、新宿駅前クリニック開業。2011年、医療法人社団SEC設立。クリニックの開業支援や経営コンサルティング、記事執筆、講演などをおこなう。著書に「競合と差がつくクリニックの経営戦略―Googleを活用した集患メソッド」(日本医療企画)、「患者に選ばれるクリニックークリニック経営ガイドライン」(合同フォレスト)など。

  医療法人社団SEC理事長
  新宿駅前クリニック 皮膚科 内科 泌尿器科 院長
  蓮池林太郎(はすいけりんたろう) 
  蓮池林太郎ホームページ:https://www.hasuikerintaro.com
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  〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-11山銀ビル5F
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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。