連載がん難民をなくすために、緩和ケアに専門特化した自院完結型の連携医療に取り組む

#01 医学教育では教わらなかった医療現場の実態にショックを受け緩和医療に進みました。

一般病床12床、緩和ケア病床34床の46床で7:1の看護体制を敷き、緩和ケアと在宅支援に取り組む医療法人社団 杏順会越川病院。越川貴史院長は、行き場を失った終末期の「がん難民」をなくしたいという思いから、経営コンサルタントなど外部のサポートを一切借りず自らの手で、自院完結型の連携医療の経営モデルを作り上げた。 「緩和医療は急性期医療です。」という。緊急の患者には越川院長自らスピーディーに入院調整を行い、95%の病床稼働率を維持している。独自の緩和ケアの取組みを越川院長に聞いた。 (『ドクタージャーナル Vol.11』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

衝撃的ながん医療の現場を目の当たりにする

― 末期がん患者の緩和医療に特化した専門病院は全国でもまだ少ないと思われます。越川先生のご経歴と、緩和ケアに取り組まれるようになった経緯をお聞かせください。―

越川病院は、私の父が1958年に東京都杉並区に産婦人科・越川医院として開設し、1975年に現在の地に越川病院として移転してきました。

その後2001年に私が引き継ぐ時に、現在の緩和ケアに特化した専門病院 医療法人社団杏順会 越川病院となりました。

当初は後継者として産科を継ぐという道もあったのですが、私としては医学生の頃から全身管理を行う診療科に進みたいという考えがありましたので、産科ではなく内科医を志しました。

さらには医師になった暁には、できれば人の生死に関わるような医療の仕事がしたい、やがては高齢化社会を迎える地域医療に貢献したい、という思いもありました。

大学病院での消化器内科の研修医時代に、衝撃的ながん医療の現場を目の当たりにしたことが、私の将来を決定づけました。

消化器内科には、がんを患っている患者さんが非常に多くいます。その患者さんが手術後、抗がん剤治療を受けていても、大学病院では最後まで看る仕組みになっていません。多くの末期がんの患者さんが転院を余儀なくされているわけです。

医学教育では教わらなかった医療現場の実態に大きなショックを受けました。私にはそのことが理解できませんでした。ではこのがんの患者さんはこの後どこに行ったらよいのか?

当時ではホスピスに行く患者さんはほとんどなく、系列の病院に行くことが多かったのですが、そこで緩和医療としての専門性を活かせた治療がなされているかというと、現実には必ずしもそうではありませんでした。

そうであるならば、いずれ戻ることになる家業の越川病院で、地域の末期がん患者さんのために専門性の高い取組みができないだろうか。

そのような動機から、私が帰ってきて院長となった2001年、それまで産科であった越川病院の診療科を変更して「がん難民をなくし、末期患者さんのための緩和ケアと在宅支援」に取り組む専門病院にしたいと考えました。

そのためにがん末期患者さんの緩和ケア治療体制づくりとして、人員や設備の拡充に着手し、看護力のレベルアップと7対1看護体制を目指して2002年にはほぼ完全に産科から緩和ケア専門に診療科の転換を果たしました。

自己完結型の医療連携にたどり着く

私が緩和ケアに取り組みはじめた10数年前と比較すると、今日では在院日数はますます減らされています。

在院日数は大きな課題です。在院日数を守り良い医療を行うためには、看護体制を上げることが一番で、今の7:1看護体制を維持し在院日数を無理なくクリアするためには、在宅支援が最も有効と考えました。

自分たちで訪問診療、そして訪問看護も行い 一人の患者さんを最後まで診れるようにしようと考えたわけです。患者さんは、必要に応じて一時入院し、帰れるようになったらまた在宅に戻れば良いのです。患者さんの一番の不安は、退院したら行き場がないということですから、それをこの病院で行おうと考えたわけです。

最近は医療連携がクローズアップされています。当病院でも10数年前から医療連携に関してはいろいろな取り組みやマネジメントを行ってきましが、最終的には訪問医療にしても訪問看護にしても、自分たちで全部できれば、それが究極の医療連携なのではないか。という結論に達しました。

2005年には訪問看護ステーションをつくり、翌2006年には訪問診療クリニック、さらには居宅介護支援事業所も立ち上げて、一つの医療法人内で医療連携の体制を実現させました。

この記事の著者/編集者

越川貴史 医療法人社団 杏順会 越川病院  理事長・院長 

医療法人社団杏順会越川病院理事長・院長。 一般内科・消化器科 1995年日本大学医学部卒業、日本大学第三内科入局。2001年医療法人社団 杏順会 越川病院開設し院長に就任。2003年から国立がんセンター中央病院緩和ケア科研修生(5年間)。 日本緩和医療学会指導医認定、日本緩和医療学会認定医、東京慈恵会医科大学緩和ケア診療部非常勤診療医長

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