#02 医療の付加価値額を少しでも増やすように全員で努めなければならない。
連載:医師の視点で医師中心の医療経営戦略を推進し、地域医療に貢献する。
2020.05.18
付加価値額の向上を図ってCJ経営に取組む
足利赤十字病院は「患者のみなさんがかかってよかった、職員の一人ひとりが勤めてよかったといえる病院を創ります。」を理念として掲げる。病院理念に職員満足が盛り込まれている例は全国的にも珍しく、この理念は斬新である。
患者第一で、患者がかかってよかったと思えるようにするのは当然である。しかし、
「患者さんの要求は日ごとに高くなる。顧客満足のCS経営は当然であり、さらにこれからはCJ経営でなければならない。Joy(喜び)を提供していくにはどうするかを考えることが必要になっていいます。CJ経営とは患者さんの感激を意味します。病気をただ治すだけでなく、患者さんに心から喜んでもらえる医療でなければならない。」
例えば、同病院では土、日でも退院や検査を実施することで患者さんに喜ばれている。
「稼動額から、薬品、経費、減価償却の3つを差し引いた残りが付加価値額です。それを再配分したものが職員の給与となる。まず給与ありきではなく、いい医療を提供して患者さんが満足した結果として、給与が支払えるわけです。そういう意識を職員にもたせることが大事なのです。」
と、小松本院長は強調する。
職員のモチベーション向上と意識改革
足利市では、1000人規模の従業員を抱える企業が無い中、950人もの職員を抱える足利赤十字病院は優良企業でもある。だから職員にはこの病院で働く事の誇りと意欲を持って欲しいというのが小松本院長の願いだ。
新病院の竣工式では、一般とは別に職員とその家族のための竣工式を盛大に行い家族にも新病院を内覧してもらった。
また夏の花火大会には、職員家族のために桟敷席を100坪確保し、赤十字マークの花火等を打ち上げた。それら全てに経費が発生する。
しかしそれは職員が満足して意欲的に働いてもらえるための投資となる。職員の平和な家庭は、病院経営の基盤である。職員の生活満足度や仕事満足度の向上のためであれば必要と小松本院長は考える。
「DPC(診断群分類包括評価)になって、出来高制のコストというとらえ方から、価格という考え方に180度変わりました。価格のついた商品としての医療を提供するわけです。
当然、評価と成果が厳しく求められる。その実現のためには職員一人ひとりの意識改革と地道な努力が欠かせない。その前提となるのが職員のモチベーションであり、それは仕事や職場に対する満足感とロイヤリティによってもたらされるのです。
そのためには、職員1人ひとりが医療の付加価値額を増やせるようなモーメントを各職場でブレークダウンして考えることが必要です。付加価値額を少しでも増やすように全員で努めなければならない。」と小松本院長は語る。