#01 【朱永真氏】西洋医学で足りない部分を補うアプローチが大事であると考えるようになった

現代の医療は、薬を多用し外科的治療を施すことを主体とする西洋医学を通常医療としてきた。しかし心身の不調を改善するためには西洋医学だけでは十分でないことは、多くの医師や医療従事者たちも自覚している。 そのため西洋医学を補うものとして、補完・代替医療が実施されてきた。東洋医学や自然療法もそのなかに含まれる。そして、西洋医学と補完代替医療を融合させた統合医療が提案されるようになっている。 朱院長は、1999年に東京都葛飾区亀有で朱クリニックを開業し、統合医療を実践して多くの人たちの心身の不調の改善に取り組んでいる。 (『ドクタージャーナル Vol.1』より 取材・構成:絹川康夫, 写真:安田知樹, デザイン:坂本諒)
朱永真
朱永真 朱クリニック院長
1982年日本大学医学部卒業後、同大学医学部第一外科入局、 1992年から5年間、日本大学板橋病院救命救急センター勤務、 1999年西洋医学と補完代替医療を統合した医療をめざす朱クリニックを開院する。 2005年4月オリエンタルアロマセラピィカレッジ開校 講師、理事長兼任。日本大学医学部救急医学講座非常勤講師/日本外科学会認定医/日本消化器外科学会認定医/日本救急医学会認定医/日本アロマセラピー学会理事・認定医

自然治癒力で身体のバランスを整える

「外科を10年間、救命救急に5年間勤務して、西洋医学の集中治療の凄さを見てきました。モニタリングにより数値ですべてを管理する世界です。しかし、患者さんを診ていく上で目に見えないものもたくさんあり、それをイメージして感じ取ることも大切です。そういう意味では、東洋医学の考え方にはすばらしいものが有り、それを認知し始めているドクターも増えてきています。勿論それぞれに必要な役割があり、必要に応じて使い分け、棲み分けをしていくことが必要だと考えます。」

朱永真院長は、統合医療クリニックとして開業する前に、統合医療の実践現場を十分に調べ、病院では治せない治癒例がたくさんあることを知り、西洋医学で足りない部分を補うようなアプローチが大事であると考えるようになった。

統合医療は、人間が本来もっている自然治癒力を最大限に引き出し、身体全体のバランスを整えていく。病巣や数値を改善するだけでなく、本当に健康な心身をつくることをめざす。

病気や症状だけに目を向けるのではなく、人間の身体そのものと向き合うようにする。患者の身体が何を叫んでいるのか。そのどんな小さな声にも耳を澄まして、聞き逃さないことが大切となる。

絶対成功する理念と自信があった

朱クリニックは、JR常磐線の亀有駅から商店街を抜けて徒歩5分ほどの所に立地し、街中はいかにも下町らしい情緒が醸し出され、住民は古くから住んでいる人たちが多い。

朱院長は勤務医時代にこの地の病院に週何回か通っているうちに、住民たちと親しくなった。他に有利な立地条件の場所もあったが、その縁で亀有を選んで開業したという。

「当初から、私自身は経営面での数字はあまり見ないようにしました。顧問会計士にもそのように注文しました。患者さんの為に自分の思ったことをきちんと行えば、数字は後からついてくる。絶対に成功するという自信があったからです。誰が考えても理想とすることを追求していくことをクリニックの理念としました。」

その結果として現在では地元住民に限らず、口コミや噂を聞いて遠方より通院している患者も多い。

クリニックの内装は、木を多用した和のイメージが強調され、落ち着いた癒しの空間が演出されている。来院患者に苦痛や不安を感じさせないで、気持ち良く診療を受けられるような心配りが行き届き、スタッフの対応にもそうした努力がうかがえる。

朱永真

西洋医学、漢方、自然療法で治療に取り組む

朱クリニックでは、西洋医学の診療科目のほかに、漢方、自然療法に取り組んでいる。

行っている自然療法は、鍼灸、薬草温熱療法(イトオテルミー療法)、足裏反射区療法(リフレクソロジー)、アロマセラピーである。これらは、診断をしてその人に必要かどうかを判断して取り入れられる。

鍼灸は、鍼やモグサによるツボへの刺激が経絡を介して内臓に働きかけ、自然治癒力を高めるようにする。薬草温熱療法は、モグサと芳香性生薬を含む植物性物質を使用し、温熱刺激作用によって血液とリンパ液の流れを促進させる。足裏反射区療法は、足裏に適度な刺激を与え、体内の各器官へ間接的に働きかけ、体調を整えていく。

アロマセラピーは、香りの成分とマッサージによる刺激の相乗効果で心身に働きかける療法である。植物から抽出された精油に含まれる芳香成分が、心身の病気に補助的な効果をもたらすとされている。ストレス予防や日常の健康管理に役立つ。

ここで実践しているのが、誰でも受けられる無料の10分間鍼灸やアロマの治療である。朱院長は当初、スタッフたちにトライする価値と意義を説得して始めたが、いまで多くの患者さんに定着している。

「どの治療法も目標としていることは、気、血、水のめぐりをよくすることです。流れをよくすることがすべての基本です。透明なところには病気はなく、淀んでいるところに何かが起こる。流れをよくするにはどうするか。まず運動をする。つぎにセラピーがくる。それで何かあったら病院にいく。この順番に間違いなく、病院が最後です。この順序を違えると堂々めぐりすることになるのです」

この記事の著者/編集者

朱永真 朱クリニック 院長 

朱クリニック院長 1982年日本大学医学部卒業後、同大学医学部第一外科入局、 1992年から5年間、日本大学板橋病院救命救急センター勤務、 1999年西洋医学と補完代替医療を統合した医療をめざす朱クリニックを開院する。 2005年4月オリエンタルアロマセラピィカレッジ開校 講師、理事長兼任
日本大学医学部救急医学講座非常勤講師/日本外科学会認定医/日本消化器外科学会認定医/日本救急医学会認定医/日本アロマセラピー学会理事・認定医

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。