#03 アレルギー科は時代の先端を走っていると言えるかもしれません
連載:NPO法人を設立し、アレルギー・呼吸器疾患の予防および診断・治療の普及に取り組む
2021.11.18
東京アレルギー・呼吸器疾患研究所
1996年4月に牧野荘平所長が東京アレルギー疾患研究所を設立されましたが、この度地域住民や国民のために役に立つ事は出来ないかと言う事で、東京アレルギー・呼吸器疾患研究所と改名しNPO法人設立に踏み切った次第です。
このNPO法人では、一般臨床医にも利用し易い保険診療内で出来るようになアレルギー疾患(特に喘息)に対するガイドラインを作る。さらにはそれを普及させることで多くの患者さんを助けたいと考えています。
また、アレルギー疾患に対しての禁煙活動を積極的に推進しようと考えています。呼吸器疾患に関しては呼吸器学会を通じて禁煙が強く訴えられており、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)では禁煙が第一とガイドラインでも強調されています。
しかし、喘息やアトピー性皮膚炎のガイドラインにおいては、治療としての禁煙の位置づけは明らかでありません。
喘息やアトピー性皮膚炎患者さんにとって喫煙が増悪因子であることは実証されており、特に喘息においては発症にも関与していることが示唆されているわけですから、治療や予防として禁煙を提唱していこうと思います。
アレルギー疾患は現代が作った文明病の一種
アレルギー疾患は現代が作った文明病の一種だと思います。アレルギーは環境の変化、食生活の変化と関係があります。今まででは考えられなかったような多種多様なアレルギーが出てきています。
衛生管理が行き届いたことで、寄生虫などの疾患は少なくなりました。ところが面白いことに、寄生虫を持っている人はアレルギー疾患に掛かり難かったのです。
大気汚染は喘息の原因になりますし、食生活でも野菜の農薬は寄生虫を寄せ付けませんが、かわりに科学物質が体内に入ってくるようになり、ビニール栽培などの普及で季節に関係なく1年中果物などが食べられるようになった反面、今まで無かった野菜や果物のアレルギーが出て来るようになりました。
アレルギーの原因を診療現場で、見つけるのは大変です。検査試薬や技術がなかなか追いついていかない現状です。
通常の検査では一般的でオーソドックスなアレルギーは判りますが、化学物質に対してはお手上げの状況です。アレルギーの原因が有機溶剤とか揮発物質の場合、患者さんの働いている現場や環境を見ないと判らないようなこともあります。
問診は、一番重要な診断の手がかり
アレルギー疾患に関わる医師にとって一番大切なのは問診です。患者さんがどんなところで働いていて、どんな環境で生活しているのか、患者さんに何が起きているのかをしっかりと聞かないとわからないことが多いのです。
例えば小麦アレルギーの場合、全く本人も気付かなかった石鹸の成分に小麦粉が入っていて感作され、アレルギーを引き起こしていたというようなことが最近の話題になりました。ですから問診は、一番重要な診断の手がかりとなるものです。
また、アレルギーで大学病院や大病院に来院する患者さんはある程度病状が決まっている方や、重症化した患者さんです。
しかし、一般のアレルギー科専門の開業医に来る患者さんは、原因が解らないからまずは来院した、というような方が多いのです。その場合、医師はありとあらゆる原因を考えていかなければならない。
そのためには、患者さんからしっかりと話を聞き、原因を絞り込んでいかなければならない。当然新しい情報や知識も必要で、ありとあらゆる可能性を検討し原因を突き止めなければなりません。
その上で、自院で治療するか、更に精密な検査を要するために大学病院などに紹介するかを判断するわけです。
現実に環境アレルギーには検査できるものとできないものもあります。その意味ではアレルギー科は時代の先端を走っていると言えるでしょう。