大学病院とは違った立場で、リウマチ・膠原病の治療を広める中心でありたい

前回記事「理想の医療施設を自分で作るしかない。」世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業するに続き、本記事ではクリニックが、リウマチ・膠原病の治療を行う意義や、今後の目標などについて伺いました。

(記事内容は2012年取材日時点のものです)

心身ともに患者の健康を維持する

——同クリニックのモットーのひとつに「心身ともに患者様の健康を維持すること」があります。これは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

吉田氏:「リウマチや膠原病というのは、患者様の8~9割が女性です。たとえば、患者様の病状をご主人が理解してくれないということも多々あります。これは、患者様にとっては、大きな精神的不安となることでしょう。

そういう場合は、通院時にご主人に一緒に来ていただき、私たちから、ご主人にも理解してもらえるように丁寧に説明してさしあげます。

また、当センターはリウマチと膠原病の専門医を謳っているため、日本全国から患者様が来られます。しかし、遠方からの患者様が何度も東京の世田谷まで来ることは大きな負担となるでしょう。

そのため、そのような患者様には近所にかかりつけの『ホームドクター』を持つことをお勧めします。そして、ちょっとした治療などは患者様が地元で受けられるよう、その『ホームドクター』と情報を積極的に共有し、連携できるようにしています。

つまり、患者様の治療における精神的な不安やわずらわしさを可能な限り取り除くことによって、患者様の健康維持を少しでもお手伝い差し上げようという想いを表しています。」

3つのモチベーションリソース

——これまで院長として、患者はもちろん職員のことも考えつつ医療環境の整備に取り組んできた吉田氏。そのモチベーションはどこからきているのでしょうか。

吉田氏:「私のやり方は、はっきり言って収益につながりません(笑)。

お金持ちになりたいとか、大きな家、いい車が欲しいとか思っていたら、自分の開業は失敗例なのかもしれません(笑)。ただ、医師という仕事と、現在自分たちが提供している医療内容には誇りを持っています。

というのも、私たちの仕事は、常に進化している新しい医療を提供していかなければなりません。ですから、私は、医師という職業に必要なのは『誠実さ』と『勉強をやめない学習意欲』だと思います。

私は、決して優秀な医学生ではありませんでしたが、医師となってから現在は、常に知識を新しいものに更新する努力は怠りませんし、その知識を患者様にきちんと提供している自負があります。

また、医師という職業は、常に新しい知識を持ち、きちんと患者様を診療していれば、患者様がしっかりと評価してくれるものと信じています。そして、現在の私にとっては、その評価こそが、生きる糧となっているように感じます。

もちろん、日常の診療業務は激務ですが、私には『共感してくれるメンバー』『支えてくれる家族』『それを待ってくれている患者様』がいます。この3つこそ、しんどいにも関わらずリウマチ・膠原病の診療を町のクリニックでやっているエネルギー源なのです。」

世田谷リウマチ膠原病クリニック

リウマチ・膠原病治療の中心でありたい

——設立以来、リウマチ専門医であり指導医・登録医として、リウマチの最新治療である生物学的製剤と最新の抗リウマチ薬などの的確な投与で多くの患者を寛解に導いてきた吉田氏。

施設も、完全バリアフリーや、生物学的製剤の治療専用の点滴ルームを設けるなど、患者がリラックスして治療が受けられるよう配慮されています。この現状は、ある部分、吉田氏が開設前に思い描いていた理想の医療施設が実現できているようにも思えます。

今後の目標はどのようなものなのでしょうか?

吉田氏:「これからも、リウマチ・膠原病を通じて、少しでも多くの患者様の治療をしていきたいと思っています。同時に、その患者様が安全に生活できる医療の仕組みや社会の仕組みを作っていきたい……。つまり、さらなる『環境整備』を進めることが目標です。

そのためには、当クリニックはリウマチ・膠原病を治療するための存在ですから、大学病院とは違った立場で、リウマチ・膠原病の治療を広める中心でありたいですね。

そして、地域社会の行政などを巻き込み、健康な人には予防医学を普及させ、患者様には医療のハードルを限りなく低く、介護する人にはその負担を最小限にすることが患者様のためになるのであれば、それらを実現すべく進んでいきたいのです。

併せて、当クリニックのような最先端リウマチ膠原病診療と精度の高い補完代替医療がコラボレートした医療施設を全国に広め、作っていきたいですね。」

世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院の基本情報

この記事の著者/編集者

吉田智彦 世田谷リウマチ膠原病クリニック 統括院長 

聖マリアンナ医科大学大学院卒。聖マリアンナ医科大学病院リウマチ膠原病アレルギー内科に入局しリウマチ膠原病の診療と難病治療研究に従事する。日産厚生会玉川病院、児玉経堂病院リウマチ内科勤務を経て、平成18年6月に世田谷区に日本で初めてのリウマチ膠原病の専門施設として世田谷リウマチ膠原病クリニックを開業する。現在は、世田谷リウマチ膠原病クリニックと長野県坂城町の東信よしだ内科の2施設でリウマチ膠原病診療にあたりながら、全国で講演、学会発表、論文発表、市民公開講座などを行っている。

この連載について

大学病院とは違う立ち位置でリウマチ・膠原病治療の発信基地を目指すクリニック

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遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。