クリスティーナブライデン 氏
連載認知症とともに生きる私 ―「絶望」を「希望」に変えた20年

#02 私たちのことを、私たち抜きに決めないで

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当事者として発言することで認知症への偏見を打ち破り、医療やケアの改革に大きく貢献した著者の過去20年にわたる講演録。 認知症の当事者として発言することで、「認知症の人は何もわからない」という偏見を打ち破り、医療やケアの改革に大きく貢献した著者が、20年にわたり世界各地で行った講演を抄録。当事者・家族、医療・福祉関係者必読の一冊。 1955年、46歳で認知症の診断を受けた著者は、それ以来20年間にわたって、当事者として発言することで認知症への偏見を打ち破り、世界の医療やケアの改革に大きく貢献した。みずから選んだ14篇の講演を収録する。 (大月書店、2017年)

やるべきことはもっとたくさんあります

私にとっては変革と進展と多くの良い結果を見られたすばらしい旅路ですが、やるべきことはもっとたくさんあります。

私は診断後の20年を生きながらえました。そしてまだここにいて声を上げています。

私は全力を尽くし、認知症になるのはどんなことか、みんなはどう助けることができるのかを伝え続けています。

でも私の思考力、話す力、行動の一貫性は年を重ねるごとに着実に衰えてきていて、日常生活はますます影響を受けるようになっています。

愛する夫のポールの支援を得てできる限りの工夫をして、少しでも長くその努力をしつづけていこうと思います。

夫のポールは、私が長年講演してきた話の数々をまとめた選集をつくりたいと思っていました。そう、私が死ぬ前に!

私の考えの大部分を記録することは重要なことであり、講演を何度も聴きに来てくれた人や、私のホームページ上やビデオで講演の録画を見てくれた人よりも、さらに広く多くの人に届けることが大切だと感じていました。

そうすればもっとたくさんの認知症の人、その家族、支援者を励ますことができると考えたのです。そんなアイデアがもとになって、この講演集はできあがりました。

本をつくるときに発生した脚注や大量の編集作業には、ポールの助けが必要でした。私が間違って引用したものについては、修正を施したり断りを入れたりしました。(中略)

私の講演を見れば変革の年月が見てとれますが、すべきことはまだまだあります。

新しい世代のリーダー、ケアワーカー、マネージャーが勇気づけられて自信をもち、認知症の人を励まして、ケアと支援の向上に全力を尽くすことを、私は願います。

いまでは認知症が注目されるようになり、G7(主要七カ国)による世界認知症審議会(WDC)の設立によってそのリーダーシップが示されたことをよろこんでいます。

このようなグローバルな努力の成果を見るためにも、私はここにいられるようにベストを尽くします!」(本文抜粋、一部修正)

私たち抜きに決めないで

この本を貫いている思いは、原著のタイトルである「Nothing About Us, Without Us!(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」(Jessica Kingsley, 2016)という言葉に集約されるといっても過言ではないだろう。

この考え方は、古くはハンガリーのニヒル・ノビ法(1505年)に由来し、もともとは、国王といえども議会上下両院の同意なくして法律を布告することはできないと定めた文言であったという。

それはやがて民主主義の規範のひとつとして後世に受け継がれ、時代がずっと下って1990年代になると、障害者運動を担うスローガンとして世界に波及した。

1995年、クリスティーンが認知症の診断を受けたのは、ちょうどそのような時期であった。

(続く)

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この記事の著者/編集者

クリスティーナブライデン
クリスティーナブライデン   

1949年、イギリス生まれ。科学者、官僚としてオーストラリア首相の科学政策顧問を勤めるなど活躍するが、1995年に46歳の若さでアルツハイマー病の診断を受けて退職。 1998年に前頭側頭型認知症と再診断。将来への不安と周囲の偏見に苦しみながらも、講演や手記の執筆を通じて当事者としての体験や心情を発信。 13年前の国際アルツハイマー病協会国際会議(ADI)・京都では、認知症当事者として自らの思いや希望を発言し、変革の先駆けとなった。 2003年以来たびたび来日し、日本の認知症当事者や医療・福祉関係者と交流を重ねている。 2017年4月、再び京都で行われたADI会議に参加し拍手喝采を受け、その存在感を示した。

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