#05 キツネ・ハト模倣テストをはじめとした『認知症らしさ』を見つけるための7つの認知テスト
2020.08.31
診断の前段階で認知症の疑いを診断すること
一般的に認知症の診断基準としては、改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) とMMSE(ミニメンタルステート検査)があります。
これらのテストは、認知症の本人を検査するものです。しかし喜んで認知症の検査を受ける人はいません。多くの場合本人は嫌がります。初期の場合などは尚更で、検査を受けてもらうまでに大変な苦労があります。
私は、認知症の診断の前段階での、まず認知症の疑いを診断することができれば良いと思いました。
しかし、そのようなテストやスクリーニングはありませんでした。専門医の多くは診断基準に注力して、誰もこのことに取り組んではいませんでした。
そこで、「認知症らしさ」を見つけるために、本人だけでなく、医師や介護者の誰にも行えるテストの開発を行いました。
認知症の患者さんには、振り向き兆候とか、取り繕いとかの特徴があります。それらは全て認知症の診察の必要性の目安として用いることができます。多くの認知症臨床医のデータも参考にして、それらを実践的なテクニックとしてまとめました。
数多くの認知症テストを公開しています
標準高次動作性検査のハト模倣テストは、今は亡き愛媛大学の田邉敬貴教授が提唱され認知症への臨床応用もされていましたが、残念なことにプロトコルが残されませんでした。
標準的な検査方法や診断意義が論文として明確になっていなかったために、現場ではまちまちな方法でキツネ・ハトの模倣テストが行われていました。
例えば、「ハトの形を作ってください」と口頭で指示を出してしまうと、もう全く別なテストになってしまうのです。
指示では「良く見て同じ形を作って下さい」とだけ言うのです。このように、テストの診断意義を理解した上で、標準的な検査手順に沿った検査が行われなければ、テストの意味がありません。
そこで私はプロトコルを作り、その診断意義について論文として発表し、多くの医師に使ってもらえるように公開しました。その結果、キツネ・ハト模倣テストが臨床の現場で安心して使ってもらえるようになりました。
現在、私のホームページ上では、キツネ・ハト模倣テストをはじめ7つの認知テストや評価表を一般に公開し、誰もがダウンロードして使ってもらえるようにしています。今までの研究成果は社会に還元するのが私の責務だと思っているからです。
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