認知症介護研究・研修東京センター長  山口晴保 氏
連載山口晴保氏インタビュー:患者さんや家族のQOLを高めることが認知症の実践医療

#04 山口晴保氏「紙とペンでできる認知症診療術 - 笑顔の生活を支えよう」を著す

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病理学研究、神経内科医、リハビリテーション医と特異な経歴を有し、30年以上にわたる認知症医療で、多くの臨床経験を積んできた認知症専門医で群馬大学名誉教授の山口晴保氏は、特に認知症医療の薬物療法における医師のエビデンス信奉に警鐘を鳴らす。 新著の「紙とペンでできる認知症診療術 - 笑顔の生活を支えよう」では、目の前の患者・家族の困難に立ち向かう認知症の実践医療を解説し、あらゆる分野の医師に認知症の診断術を理解・習得して欲しいと訴える。 (『ドクタージャーナル Vol.20』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

紙とペンでできる認知症診療術

現時点では認知症の根本治療薬はありません。しかし、2016年現在で認知症を抱えて困っている患者さんは全国で約500万人、更に2025年には700万人を超えるとの推計が出ています。

これらの患者さんに適切な医療を提供するには、認知症の専門医に限らず、あらゆる分野の臨床医が認知症の診療術を理解・習得し、認知症の診断・治療・ケアを行えるようなることが必要です。

そのために、臨床現場で役立つ診療のコツとその背景となる補足知識を記し、認知症の実践医療を解説したいと思い執筆したのが、高度な診断機器がなくてもできる「紙とペンでできる認知症の診療術」です。

エビデンスは大切ですが、臨床で培った経験に基づく診療も大切だと考えています。特に認知症医療では対症療法による実践医療がより重要と考えています。

紙とペンでできる認知症診療術
紙とペンでできる認知症診療術 笑顔の生活を支えよう
山口晴保 著
協同医書出版社 2016年5月31日発行

本書 まえがきより

「エビデンスに基づく○○医療」という本が多い中で、本書のタイトルは『紙とペンで出来る認知症診療術』としました。

エビデンス一辺倒の医療への警鐘を込めてつけた・・・と述べると格好良すぎるのですが、エビデンスという「集団での根拠」に配慮しながらも、臨床経験を加味して「個々の症例に対応」していくことの大切さを本書では訴えたいのです。

何故なら、認知症の医療が基本的には対処療法ですし、また、認知症が脳の老化現象であり、完治を望めない病気だからです。

多くの医師が、「認知症の医療は面倒で嫌だ」「治らないからやりがいがない」と感じているようです。そこで、本書を読むことによって、「認知症の医療は面白い」「生活改善に役立ち感謝される」と変わることを願って執筆しました。

なお、日々の臨床経験により診療術が進化していくので、本書に書かれた内容は絶対ではありません。読者の皆さんの経験に基づいて、さらに進化させていただきたいと思っています。

私の目指す医療のアウトカムは、「患者本人とその家族が、笑顔で穏やかな在宅生活を続けられること」です。その願いを込めて、『笑顔の生活を支えよう』という副題をつけました。

病院や診療所という現場で、認知症の診療に関わるあらゆる分野の医師に役立つ本を届けたいという思いで原稿を書きました。--------------

本書は、一度全体をお目通しいただき、その際に使えそうな診療術に赤線を引いてください。その後は診療机の片隅に置いて、時々確認しながら、診療術のレパートリーを広げるようにご活用いただければ嬉しいです。-------------

内容

第1部 ● 認知症の初診

日頃の診療の中で医師やスタッフが認知症に気づき、生活状況を把握して認知症かどうかを判定し、さらに症状に基づいて臨床病型を明らかにした上で治療を工夫していく過程を詳しく説明しています。

第2部 ● 治療とフォローアップ

認知症という長い経過の疾患を抱える患者本人、そして家族・介護者をどのように支えたら、笑顔で穏やかな生活を継続することができるのかという、診断後の治療を解説しています。

第3部 ● BPSDと生活障害への対応

代表的な行動・心理症状(BPSD)や生活障害について、うまくいった方法を交えながら、対応のヒントを紹介しています。どのような内容であっても、まず原因を探り、患者本人の気持ちを踏まえた上でその原因に対処するという原則を理解できるようになっています。

第4部 ● ステージアプローチ

第 1 部から第 3 部までの知識を体系的に関連づけるため、ステージ(認知症の進行過程)という概念を意識しながら、認知症の医療・ケアを整理しています。また、穏やかな最期を迎えるための認知症の終末期医療についても解説しています。

第5部 ● 地域連携

「地域包括ケア」や「医療・介護連携」が提唱される中、認知症の人とその家族が地域の中で穏やかに暮らし続けていけるように支援することが求められています。これを踏まえ、地域のリソースを知って連携し、介護保険サービスを有効利用し、インフォーマルサービスも活用していく際のポイントを解説しています。

(続く)

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この記事の著者/編集者

山口晴保
山口晴保  認知症介護研究・研修東京センター長 

群馬大学名誉教授、認知症介護研究・研修東京センター長。認知症専門医、リハビリテーション専門医。 アルツハイマー病の病態解明を目指して、脳βアミロイド沈着機序をテーマに30年にわたって病理研究を続けてきた後、認知症の臨床研究に進む。認知症の実践医療、認知症の脳活性化リハビリテーション、認知症予防の地域事業などにも取り組む。群馬県地域リハビリテーション協議会委員長として地域リハビリテーション連携システムづくりに力を注ぐとともに、地域包括ケアを10年先取りするかたちで、2006年から「介護予防サポーター」の育成を進めてきた。2005年より、ぐんま認知症アカデミーの代表幹事として、群馬県内における認知症ケア研究の向上や連携に尽力している。

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