#04 患者さんと同じくらい全ての職員も大切にしたい
連載:生まれ故郷をこよなく愛し、大好きな慢性期医療に取り組む
2021.12.30
患者さんのために何ができるかが、病院マネジメントだと思っています。
当時の医療現場には、看護やケアなど個々に良いリソースは沢山あったのですが、機能的な連携ができていませんでした。ですから、やるべきこと、やれることが沢山あって、しかもやればやるほど良くなっていきました。
まず何から始めたかというと、看護師さんたちと一緒に院内業務の改善を考えました。看護業務効率を上げるために、看護師の院内導線とか、病室の配置などを変えました。
仕事の効率化や組織活性化のために役務ごとの委員会もたくさん作りました。そうしてたくさん成功体験を積んできました。全員で取り組むことが私には面白くて仕方なかった。
最初はどうやったら働き易くなるのか、と考え行ってきたことが、結果的に経営に結び付くとは思ってもいませんでした。
ところが自分たちがやってきたことに対して、後から「褥瘡患者管理加算」や「感染防止対策加算」などの報酬が付いてきました。
なるほど、患者さんが望むことをきちんと行うと加算が付いてくるのだ。正しいと信じてやっていけば必ず時代が付いてくる事に気づきました。
例えば、エアマットの導入も最初は病院の完全な持ち出しでした。でも導入すれば患者さんも看護師も楽になる。褥瘡も減ります。褥瘡治療の経費も減らせます。
費用対効果の面から褥瘡の処置にかかる看護師の時間や手間を考えれば、予防に目を向けたほうが良いわけです。褥瘡に関する加算が始まる2年位前のことです。ですから褥瘡患者管理加算が最初から取れて導入時の経費はすぐに回収できました。
訪問診療加算もそうでした。今回の認知症加算も当院では認知症ケア加算1が取れます。
目先の収益ではなく、常に費用対効果を考えて色々なことに取り組んできたことが、結果的に病院経営にプラスに働きました。最初は多額な持ち出しも、後から全て回収できています。
このような経験を積み重ねてくると、これをやることが間違いないと確信したら、経費が掛かってもやろうという信念にもなってきます。
職員は人財。
私は、患者さんと同じくらい全ての職員も大切にしたいと思っています。大切以上に職員が大好きなのです。強烈な片思いに近いかもしれませんが(笑)。
職員満足費というスタッフのための予算を部門長に渡して、使い方もスタッフに任せています。私の考えで進めました。特に外部のコンサルタントは使っていません。
スタッフの育成とは子育てに似ているかもしれません。
採用も全て私が直接行います。採用条件は、基本条件に加えて、覚悟を持って一緒に働けると思えるかどうか、という一点を必要条件としています。
どんなに必要に迫られたとしても、絶対にこの条件だけは譲れません。それでないと、結果的に周りの職員の負担になったり、利用者さんに迷惑をかけてしまったりするからです。また育てる時間とエネルギーや費用も無駄になります。
職員は、家族よりも長い時間をここで一緒に過ごす仲間です。ですから、仕事だけでなく礼儀作法や社会常識、身なりや言葉遣い、それこそお茶の入れ方に至るまで本気で関わって、どこに行っても信用され通用する人財に育てたいのです。
私たちの仕事では、優れた人間性が求められます。そうでないと良質なケアなどできません。
社会人として良識があって愛情豊かな人を育てたい。スタッフには選ばれてここで働いているのだというプライドを常に持ってほしいと思っています。これが私たちの理念の一つにある「共に育む」にも繋がっています。
蓮池林太郎 医療法人社団SEC新宿駅前クリニック院長