知らないと損する!?患者が知りたい医療業界の裏事情

人々の健康のために日々働く医師。私たちの生活に欠かせない存在になっています。その一方で医療業界は一大産業でもあります。厚生労働省によると2020年に支払われた医療費は43.9兆円。今後もさらなる成長が予測されています。

しかし、不正や横領などの問題が報道されることもしばしば。一般人にとって身近でありながらよく分からない世界。それが医療業界です。そのため、不意なことから疑念は生まれてしまいます。

この記事では多くの人が興味を持つ医療業界に対する疑念をまとめ、医師は何に気を付ければそれらの疑念を解消できるのか考えていきます。

こんなに飲んで大丈夫?処方される大量の薬

大した病気でもないのになぜこんなにたくさん薬が処方されるのだろう?そう感じたことがある人も多いはず。

事実、日本において一人当たりが医薬品に使う金額は世界的に見ても高いです。以下に示す図のようにアメリカ、ドイツ、カナダに続き世界第4位に位置しています。日本の医薬品は他国に比べ高価格であり、消費金額が高くなりやすいのも事実です。しかし、ヨーロッパでは自然療法が流行り出すなど、薬離れが始まっています。それに対し、日本はまだ薬に頼る部分が多いようです。医薬品の単価を考慮しても、日本は医薬品の消費量が依然として高いと言えるでしょう。

引用:OECD「Health at a Glance 2021」

医療知識のない患者さんの立場では、処方される薬が本当に必要なのか、実は必要ないのか判断することが出来ません。

複数の症状を持つ場合、同時期に複数の病院に通うこともあります。その際、同じ効能の薬が処方され、必要もないのに服用してしまうかもしれません。例えば胃薬など。どこの科目でも念のためにと処方されやすいため、重複しやすい傾向にあります。

薬の過剰摂取により、むしろ症状が悪化しないか不安を覚える患者さんは多くいます。

不安を和らげるためにも、患者さんのお薬手帳は医師も直接確認してください。お薬手帳を確認し、患者さんの現状を理解したうえで必要な薬を処方していることを伝えましょう。それだけでも患者さんの持つ安心感は大きく変わってきます。また、お薬手帳を持っていない患者さんには作成することを勧めると良いですね。

医師と製薬会社は裏で繋がっている?

医師の収入源は主に診療、教育、研究といわれています。しかし、その他にも医師が収入を得る方法は存在します。その一つが、製薬会社主催の講演会です。

患者さんの健康のため、独自に行う講演会もありますが、中には製薬会社に依頼されて行う講演会も存在します。製薬会社から依頼され、薬の宣伝を行っているわけです。実際この活動は高頻度で行われており、公的医療機関では年間500万円を超える副業をしてはならないという規定を設けているほど。もちろん適切な範囲で行っていれば違法ではないのですが、患者さんからの印象はどうでしょうか?

製薬会社とグルになって儲けるために薬を処方しているのだと思われかねません。一度でも疑念が生まれてしまうと本当に必要な処方薬への信用度も下がり、もう二度と来院されなくなってしまう可能性もあります。患者さんからの信頼を失わないためにも、過度な講演は避けた方が良いでしょう。

医療データの価値は計り知れない!

医療データの価値が非常に高いのはご存じでしょうか。一説にはクレジットカード情報の20倍も価値があるのだとか。

医療データには、個人の識別情報だけでなく、経済状況、健康状況なども記載されています。重要な情報をまとめて入手できるため、価値が高くなるのです。それにも関わらず、医療データのセキュリティは脆弱だといわれています。医療業界においてITリテラシーを高めることは必須にも関わらず、その重要性は広く認知されていません。

それ故に、セキュリティは脆弱になり、医療データは狙われやすくなってしますのです。セキュリティ企業のGemaltoは、「全世界で流出した情報の約3分の2は、政府当局と医療関連機関が流出元となっている」と「Findings of First Half 2015 Breach Level Index」にて報告しています。それほどまでに医療データは狙われやすいのです。

また、ネットセキュリティの脆弱性を突かれた紛失もありますが、医療関係者のミスによる情報漏洩も多々あります。過去には、USBメモリの紛失やカルテの置き忘れにより患者さんの個人情報が漏洩した事例も発生しています。

患者さんを守るには医療データの価値と危険性についてしっかり理解することが重要です。情報漏洩が起きないよう、細心の注意を払うようにしましょう。

患者さんを不安にさせないために

医師と患者さんとの信頼関係はとても大切。どんなに腕が良い医師でも患者さんに信頼されなければ、かかりつけ患者は少なくなってしまいます。今回は患者さんが気になりやすい医療業界の問題点をご紹介しました。自分のクリニックではそれぞれどのように対応し、この問題に向き合っているのか、再度振り返ってみてください。

また、患者さんとの信頼関係を築くにはコミュニケーション能力も不可欠。過去の記事ですが、『【実例付き】かかりつけが増える患者さんとのコミュニケーション』では患者さんとのコミュニケーションの仕方について取り扱っています。合わせて読んでいただければ幸いです。

この記事の著者/編集者

ドクタージャーナル編集部   

各種メディアでのコラム掲載実績がある編集部員が在籍。
各編集部員の専門は、社会における機能システム、食と健康、美容、マーケティングなどさまざまです。趣味・特技もボードゲームに速読にと幅広く、個性豊かな開業支援チーム。
それぞれの強みを活かしながら、医師にとって働きやすい医療システムの提案や、医療に関わる最新トレンドの紹介などを通して、クリニック経営に役立つ情報をお届けします。

この連載について

開業応援コラム~クリニック経営の入り口~

連載の詳細

本連載は、開業医の方々の支援を目的としたコラムです。これから独立を考えている、あるいはクリニックを開業したばかりの医師の方々に向けて、クリニック経営に関するお役立ち情報を発信していきます。開業準備や医療設備、人事関係、集患など、コラムによってテーマはさまざまなので、ぜひ参考にしてください。

最新記事・ニュース

more

遺伝子専門医でもある熊川先生は、難聴のリスク遺伝子を特定する研究にも携わられてきました。信州大学との共同研究を経て、現在では高い精度で予後を推定できるようになっています。 将来を見据えたライフスタイルの設計のために。本連載最終記事となる今回は熊川先生の経緯や過去の症例を伺いながら、難聴の遺伝子検査について取り上げます。